スペンサー伯爵 (スペンサーはくしゃく、英語 : Earl Spencer )は、イギリス の伯爵 位。グレートブリテン貴族 。
1765年 にスペンサー家 の分流でホイッグ党 所属庶民院 議員のジョン・スペンサー がオールトラップ子爵 (Viscount Althorp) [ 注釈 1] 位とともに授爵されたのにはじまる。
伯爵家の法定推定相続人 は、儀礼称号 として従属爵位の一つオールトラップ子爵を名乗る。
歴史
オルソープ・ハウス (英語版 )
1822年のオルソープ・ハウス邸内を描いた絵画
ロンドンにあるスペンサー伯爵家の邸宅スペンサー・ハウス (2009年撮影)。現在はRIT・キャピタル・パートナーズ (英語版 ) に賃貸中。
初代スペンサー伯に叙されるジョン・スペンサー (1734-1783) は、第3代サンダーランド伯 チャールズ・スペンサー (1675–1722) の三男ジョン・スペンサー (英語版 ) (1708–1746) の息子であり、ホイッグ党 所属の庶民院 議員を務めていたが、1761年 4月3日 にグレートブリテン貴族 爵位「オールトラップのスペンサー子爵 (Viscount Spencer of Althorp)」及び「オールトラップのスペンサー男爵 (Baron Spencer of Althorp)」に叙せられて、貴族院 議員に転じ、さらに1765年 11月1日 にグレートブリテン貴族「スペンサー伯爵 (Earl Spencer)」及び「オールトラップ子爵 (Viscount Althorp)」に叙せられた[ 2] 。これがスペンサー伯爵家の創始だった。
初代伯爵は政界において庶民院・貴族院議員以上の存在にはならなかったが、その長男である2代伯爵ジョージ (1758-1834) は王璽尚書 や海軍大臣 (英語版 ) 、内務大臣 などの閣僚職を歴任した。党派は父同様ホイッグ党であったが、トーリー党 政権の小ピット 内閣にも海相として入閣しており、ネルソン 提督を抜擢したのは彼であった[ 3] 。
その長男である3代伯爵ジョン (1782-1845) は、襲爵前に庶民院 ホイッグ党の幹部として活躍し、1830年 から1834年 のホイッグ党政権下で庶民院院内総務 や大蔵大臣 を務め、第一次選挙法改正の実現に貢献した[ 4] 。
3代伯爵の弟である4代伯爵フレデリック (1798-1857) は主に海軍軍人として活躍した[ 5] 。
4代伯爵の長男である5代伯爵ジョン (1835-1910) は自由党 の政治家としてアイルランド総督 や枢密院議長や海軍大臣などの閣僚職を歴任した。第3次グラッドストン内閣 においてアイルランド自治法案を支持した数少ないホイッグ貴族の一人であった[ 4] 。
政界の中枢として活躍した当主は5代伯爵が最後であり、20世紀 以降の当主は廷臣や軍人になったり、地主業に専念する例が増えていく[ 4] 。5代伯爵の弟である6代伯爵チャールズ (1857-1922) は副宮内長官 (英語版 ) や宮内長官 (英語版 ) を務めた[ 6] 。彼はスペンサー伯爵位を襲爵する前の1905年 12月19日 に連合王国貴族 爵位「ノーサンプトンシャーのグレート・ブリントンのオールトラップ子爵 (Viscount Althorp, of Great Brington in the County of Northampton)」に叙されており[ 7] 、以降この爵位もスペンサー伯爵位の従属爵位に加わった。
その長男である7代伯爵アルバート (1892-1975) は43年にわたって国防義勇軍 の軍人として活躍した[ 8] 。彼は自分の屋敷への思い入れが強く、邸宅に飾られている全ての絵画や家具の由来を説明できたので「館長伯爵」と呼ばれていたという[ 9] 。
その長男である8代伯爵エドワード (1924-1992) も若い頃、陸軍軍人だった[ 10] 。また王室に侍従として仕えた[ 11] 。彼の三女であるダイアナ (1961-1997) は現在のイギリス国王チャールズ3世 に嫁いだことで知られる。
2022年 現在の当主は8代伯爵の次男(長男は早世)でダイアナ妃の弟にあたる第9代スペンサー伯爵チャールズ・スペンサー (1964-) である[ 12] [ 13]
伯爵家の本宅は、ノーサンプトンシャーのオールソープ (英語版 ) (ノーサンプトン の北西8キロ)にあるオルソープ・ハウスである。同屋敷は1508年 に建築されたが、摂政皇太子ジョージ の時代に建築家ヘンリー・ホランド による改築で現在の姿となった。伯爵家はその屋敷を中心にノーサンプトンシャーに1万3000エーカーもの土地を所有する大地主である[ 14] 。ノーフォーク のノース・クリーク村も伯爵家が所有する。
8代伯爵の代からオルソープの屋敷の維持費の捻出に苦しむようになり、屋敷内に飾られていた様々な美術品の売却を行うようになった。こうした傾向は現在の9代伯爵の代も続いている[ 15] 。
伯爵家のロンドンの邸宅スペンサー・ハウス も維持困難になったため、1985年 から96年契約で第4代ロスチャイルド男爵 ジェイコブ・ロスチャイルド の経営するRIT・キャピタル・パートナーズ (英語版 ) に賃貸している。ロスチャイルド卿は2000万ポンドもの巨費を投じてその内装を18世紀 の状態に復元した[ 16] 。この修復作業はダイアナ妃からも高く評価された[ 17] 。
現当主の保有爵位
現当主である第9代スペンサー伯爵チャールズ・スペンサー は以下の爵位を保有している[ 12] [ 13] 。
第9代スペンサー伯爵 (9th Earl Spencer) (1765年 11月1日 の勅許状 によるグレートブリテン貴族 爵位)
ノーサンプトン州におけるオールトラップの第9代スペンサー子爵 (9th Viscount Spencer, of Althorp in the County of Northampton) (1761年 4月3日 の勅許状によるグレートブリテン貴族爵位)
ノーサンプトン州におけるオールトラップの第9代オールトラップ子爵 (9th Viscount Althorp, of Althorp in the County of Northampton) (1765年11月3日の勅許状によるグレートブリテン貴族爵位)
ノーサンプトン州におけるグレート・ブリントンの第4代オールトラップ子爵 (4th Viscount Althorp, of Great Brington in the County of Northampton) (1905年 12月19日 の勅許状による連合王国貴族 爵位)
ノーサンプトン州におけるオールトラップのオールトラップの第9代スペンサー男爵 (9th Baron Spencer of Althorp, of Althorp in the County of Northampton) (1761年4月3日の勅許状によるグレートブリテン貴族爵位)
一覧
スペンサー子爵(1761年)
スペンサー伯爵(1765年)
法定推定相続人は、第9代スペンサー伯の長男、オールトラップ子爵ルイス・フレデリック・ジョン・スペンサー (英語版 ) (1994年 - )である。
家系図
脚注
注釈
出典
^ Pointon, G.E. (1-September-1990). 『BBC Pronouncing Dictionary of British Names』 . Oxford Reference (Subsequent ed.). Oxford Univ Pr . p. 7. ISBN 0-19-282745-6
^ Lundy, Darryl. “John Spencer, 1st Earl Spencer ” (英語). thepeerage.com . 2014年12月3日 閲覧。
^ 海保(1999) p.21-22
^ a b c 海保(1999) p.22
^ Lundy, Darryl. “Vice-Admiral Frederick Spencer, 4th Earl Spencer ” (英語). thepeerage.com . 2014年12月3日 閲覧。
^ Lundy, Darryl. “Charles Robert Spencer, 6th Earl Spencer ” (英語). thepeerage.com . 2014年12月3日 閲覧。
^ "No. 27868" . The London Gazette (英語). 29 December 1905. p. 9319.
^ “Albert Edward John Seventh Earl Spencer ” (英語). Spencer of Althorp . 2014年12月3日 閲覧。
^ モートン(1992) p.41
^ 海保(1999) p.23
^ Lundy, Darryl. “Edward John Spencer, 8th Earl Spencer ” (英語). thepeerage.com . 2014年12月3日 閲覧。
^ a b Heraldic Media Limited. “Spencer, Earl (GB, 1765) ” (英語). Cracroft's Peerage The Complete Guide to the British Peerage & Baronetage . 2016年2月21日 閲覧。
^ a b Lundy, Darryl. “Charles Edward Maurice Spencer, 9th Earl Spencer ” (英語). thepeerage.com . 2013年12月1日 閲覧。
^ キャンベル(1998) p.14
^ キャンベル(1998) p.50
^ 横山(1995) p.23
^ モートン(1992) p.291
参考文献
関連項目