古典的な白黒の印刷物や硬貨の刻印をはじめとする彫刻では色を表すことができないため、ペトラ・サンクタの方法 (System of Petra Sancta) と呼ばれる手法では、アージェントで着色された領域は、空白のままにされるか、さもなくば ar.、arg. 又は a.[1] という省略形で示されることがある。
白で銀を置き換えることができることは先に述べたとおりであるが、アーサー・チャールズ・フォックスデーヴィス (Arthur Charles Fox-Davies) は自身の著書『紋章学の芸術 紋章百科事典 (The Art of Heraldry: An Encyclopaedia of Armory) 』で、極めて稀に白が原色としてアージェントとは別に紋章学的に独立したティンクチャーとして存在したと主張した。
ポルトガルの紋章学では、白は銀とは異なるティンクチャーと考えられているようである。そのことはポルトガルのサンティアゴ・ド・カセム (Santiago do Cacém) 地方の紋章で明らかである。その紋章では、倒れているムーア人の衣服と騎士が乗る白馬の白色の部分は遠くに見える城の銀色とは別の色として描かれている。紋章学の原則に則れば、どちらも白にするか、どちらも銀色を示す灰色にすべきである。