ジョルジュ・レイグ級駆逐艦 (フランス語: La frégate anti-sous-marine Georges Leygues) はフランス海軍の駆逐艦の艦級。対潜戦を重視しており、計画艦型番号は、当初はコルベット(Corvette)と称されていたことからC-70ASWとされていたが、1988年6月6日にフリゲート(Frégate)に変更されたことからF-70ASWとなった。なお北大西洋条約機構(NATO)によるペナント・ナンバーでは、一貫して駆逐艦を意味する「D」の艦種記号を付されており、ジェーン海軍年鑑やアメリカ海軍協会(USNI)でも駆逐艦として扱われている。
来歴
フランス海軍が1940年代末から1950年代にかけて建造した第二次世界大戦後第1世代の駆逐艦は、艦隊護衛艦(Escorteurs d'escadre)と称される対空・対水上兵装主体の艦であった。その後、第二次大戦後の潜水艦脅威の深刻化を受けて、まず1956年度計画で、艦隊護衛艦をもとに対潜戦を重視して装備を変更した「ラ・ガリソニエール」(T-56型)が建造された。
その後、T-56型の実績も踏まえて対潜戦重視の大型護衛艦(コルベット)の建造が計画され、まず1965年度計画で「アコニト」(C-65型)が建造されたのち、1967年度計画より、これを発展させたトゥールヴィル級(C-67型)が建造された。
これに続く1972年のブルー計画(15ヶ年計画)で、艦隊護衛艦(T-47型およびT-53型)の更新用として、共通の船体設計に基づく対潜型コルベット18隻と対空型コルベット6隻の整備が計画された。しかし財政上の制約から、対潜型が1971年度から1983年度にかけて計7隻、防空型が1978年度・1979年度に1隻ずつの計2隻が建造されるのみに留まった。このうち、対潜型として建造されたのが本級である。なおターター・システムを搭載した防空型として建造されたのがカサール級であった。
設計
大量建造を想定して、C-67型よりも小型化が図られた。船型は船首楼型とされており、抗堪性向上のため、NBC防護にも配慮したシタデル構造が導入されている。居住区は女性の乗艦にも配慮されており、また「ド・グラース」と同様に居住性向上に意が払われた結果、初期設計と比して艦全長にして5メートル、排水量にして150トンの大型化となった。後期建造艦(5〜7番艦)では航海艦橋が1甲板分高くなっており、外見上の識別点となっている。堪航性向上のため、デニー・ブラウン社製で翼面積21.5 m2のフィンスタビライザーが装備されている。なお艦齢半ばにもかかわらず船体に亀裂が見つかったことから、2002年から2003年にかけて船体の強化工事が行われた。これにより、120トンに及ぶ鋼板が取り付けられ、これによる重心上昇を補うために210トンの固定バラストが搭載された。
本級では、イギリス海軍やオランダ海軍の影響を受けてガスタービン主機関が導入されている。当初は両国と同じロールス・ロイス タインとオリンパスによるCOGOG機関の導入が検討されたが、タインでは十分な巡航速度が確保できないと判断されたことから、SEMT ピルスティク16PA6 V280ディーゼルエンジンを巡航機とするCODOG方式に変更された。ガスタービンエンジンを用いた場合、停止状態から3分で最大戦速を発揮できる。またディーゼルエンジンを用いて、かつDUBV-43可変深度ソナーを吊下していた場合の速力は最大で19ノットとなる。
機関区画は4室に区分されているが、両舷の機関を並べて配置するパラレル配置とされており、艦首側から、補機室、タービン室、ディーゼル室、減速機室と並んでいる。また機関制御は集中制御方式とされており、省力化に益している。機関科は士官3名、下士官23名、水兵24名とされている。
装備
C4ISR
戦闘システムの中核となる戦術情報処理装置としては、SENIT-4が搭載された。また衛星通信装置としてシラキューズIIおよび商用のインマルサットが搭載されているほか、2〜4番艦では、OPSMER/SEAO指揮支援システムが後日装備されている。
センサー面では、当初はおおむねC-67型が踏襲されていたが、後期建造艦では下表の通りに更新された。またデコイ発射機も、当初はサイレクスが搭載されていたが、4番艦以降ではDAGAIEに変更され、後に1〜3番艦にもバックフィットされた。
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前期建造艦 (1〜4番艦) |
後期建造艦 (5〜7番艦)
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レーダー
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対空捜索用
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DRBV-26
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目標捕捉用
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DRBV-51C
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DRBV-15
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ソナー
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艦首装備式
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DUBV-23B
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DUBV-24C
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可変深度式
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DUBV-43B
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DUBV-43C (DSBV-61曳航アレイ 追加可能)
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電子戦
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電子戦支援
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ARBR-16 (DR-2000S)
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ARBR-17 (DR-4000)
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電子攻撃
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ARBB-36A
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ARBB-32B
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更に、前期建造艦を対象として、1990年代後半より対艦ミサイル防御(ASMD)能力向上を目的としたOP3A(Opération d'Amélionration de l'Autodéfense Anti-missiles)改修が行われた。これにより、SENIT-4とインターフェースを取ったうえでSENIT-8.01情報処理装置が搭載されるとともに、目標捕捉および射撃指揮のため、DIBC-2A光学方位盤(SAGEM VIGY-105のフランス海軍仕様)も設置された。
武器システム
主砲としては55口径100mm単装速射砲(Mle.68 CADAM)を艦首甲板に搭載し、艦橋構造物上にDRBC-32E砲射撃指揮装置を設置した。個艦防空ミサイル・システムとしてはクロタルを採用し、火器管制レーダーと一体化した8連装発射機を後部上部構造物上に設置した。ミサイルは、発射機に装填された8発のほか予備弾18発を搭載した。後期建造艦では改良型のクロタルEDIRに更新している。また前期建造艦では、上記のOP3A改修の際に近接防空用としてミストラルのSIMBAD連装発射機とマウザーMK 30 30mm機関砲の無人砲塔(20mm機関砲 F2と換装)が搭載された。
対艦兵器としては、1・2番艦ではエグゾセMM38の連装発射筒を両舷に搭載していたが、3番艦以降ではエグゾセMM40の4連装発射筒に変更され、2番艦でも同様に後日換装している。
対潜兵器としてはL5(フランス語版)魚雷のためのKD-59E 533mm魚雷発射管を備えていたが、5〜7番艦では、MU90用のB515 3連装短魚雷発射管に後日換装している。
艦載機・艇
後部上部構造物の後端部は、長さ13.5メートル×幅11.4メートル×高さ4.3メートルのハンガーとされており、リンクス哨戒ヘリコプター2機を収容できる。その後方の艦尾甲板は長さ21メートル×幅12.20メートルのヘリコプター甲板とされており、SPHEX(Systéme Pousseur pour Hélicoptére Embarqué EXpérimental)コンパクトII型着艦支援装置を備えている。これはグリッド着艦拘束装置と機体移送軌条2条によって構成されている。
艦載艇として、左舷にアーカー670内火艇を、右舷に9メートル型のVD9内火艇を搭載しているほか、海上治安活動などに用いるため、ゾディアック社製の複合艇2隻も搭載している。
同型艦
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艦名 |
起工 |
進水 |
就役 |
退役 |
母港
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D640
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ジョルジュ・レイグ Georges Leygues
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1974年 9月
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1976年 12月
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1979年 12月
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2014年 3月
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ブレスト
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D641
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デュプレクス Dupleix
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1975年 10月
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1978年 12月
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1981年 6月
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2015年 7月
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トゥーロン
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D642
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モンカルム Montcalm
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1975年 12月
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1980年 5月
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1982年 5月
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2017年 7月
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D643
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ジャン・ド・ヴィエンヌ Jean de Vienne
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1979年 10月
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1981年 11月
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1984年 5月
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2019年 1月
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D644
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プリモゲ Primauguet
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1981年 11月 |
1984年 3月
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1986年 11月 |
2019年 4月
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ブレスト
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D645
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ラ・モット=ピケ La Motte-Picquet
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1982年 2月
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1985年 2月
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1988年 2月
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2020年 10月
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D646
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ラトゥーシュ=トレヴィル Latouche-Tréville
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1985年 5月
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1988年 3月
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1990年 7月
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2022年 7月
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脚注
出典
参考文献
外部リンク