サンザシ属
Crataegus ambigua
分類
学名
Crataegus
英名
haws hawthorn quickthorn thornapple May-tree whitethorn hawberry
種
サンザシ属 (サンザシぞく)は、バラ科 の属の一つ。
日本では、中国 から持ち込まれた Crataegus cuneata がサンザシ として良く知られる。
ヨーロッパ 、アジア 、北アメリカ など、北半球の温帯 に分布する。アメリカ ・ミズーリ州 の州花。英国 では5月に花が咲くことから、メイフラワーとして知られる。英語で hawthorn(ホーソーン)とよばれるものは、垣根に使うトゲのある樹という意味があり、haw(ホー)は古い英語で haga (垣根)を、 thorn(ソーン)はトゲを意味する語からなる。
果実は、生薬、健康食品、ドライフルーツ、生食、菓子の材料などに用いられる。
分布・種
サンザシ属は大半が北半球の温帯地域に広く分布する。交雑しやすい特性から、過去に記録された種は1000種を超える。ヨーロッパの原産種が20種、中国の原産種は18種あるが、北米では膨大な野生種が見られ原種がはっきりしない。現在は約140種がサンザシ属として分類されている。
その多様性ゆえ、分類が疑わしい種類がある。またナシ亜科 ではなく、シモツケ亜科 に分類すべきという意見もある[ 4] 。
この属の多くの種はアポミクシス である。
日本の自生種としては、クロミサンザシ 、オオバサンザシ の二種を数えるだけで、前者は北海道と長野県、後者は北海道の根室地方に見られる。
特徴
Crataegus punctataの花
落葉性 の灌木であり、多くの棘 がある。樹高は、多くは2 - 3メートル の灌木であるが、セイヨウサンザシは数メートルに達する。春に白い花をたくさん咲かせ、ピンク色を帯びたものもある。その後小さな果実を実らせる。果実は1 - 5個の種子 を含む。葉と共に野生動物 や昆虫 の食料となる。
実生か接木 で容易に増やすことが出来る。特にザイフリボク属 やナナカマド属 との接木の相性が良い。
利用
サンザシ属は園芸 と果実の利用のために古くから家庭で栽培されてきた。ヨーロッパでは生命力 の強さの象徴とされるとともに、不快な花の香りによって、玄関先のリース 飾りやメイポール などの魔除け に使用されている。
生薬
Crataegus scabrifoliaの乾果
サンザシ、オオミサンザシの果実の干したものは、生薬名で山査子(さんざし)といい、消化吸収を助ける作用がある。加味平胃散(かみへいいさん)、啓脾湯(けいひとう)などの漢方方剤に使われる。
セイヨウサンザシ の果実や葉は、心悸亢進、心筋衰弱などの心臓病に使われる[ 6] 。また、現代のハーブ療法では、動脈硬化症 の原因となる血管壁の蓄積物を軽減する作用があるとしている。
ロシア語でサンザシはバヤーリシュニク (Боярышник )と呼ばれる。アルコール (エタノール )に浸潤して薬用成分を抽出したチンキ が製造され[ 7] 、薬局で販売されている[ 8] 。入浴剤[ 9] [ 10] やスキンローション[ 11] といった薬用品として流通されているが、これらの薬用品は安価な代用酒として飲用もされている[ 11] [ 12] 。エタノールの代わりに有毒なメタノール を用いた不正規品による被害も生じており、2016年12月にはイルクーツク を中心に多数の中毒死者が出、当局が非常事態を宣言した[ 9] [ 10] [ 11] 。
サンザシ酒
味は甘酸っぱく、一部の中華料理店などでは、中国酒として供されている。またオランダ に本社を置くボルス 、デ・カイパー などのリキュール メーカーからは、スロー・ジン (Sloe Gin )リキュールとして販売されている。
ドライフルーツ
果実を潰して、砂糖や寒天などと混ぜ、棒状に成形して乾燥させたものが多い。中国 では、「山査子餅」(シャンジャーズビン)(Haw flakes )という円柱状に成形した後、薄くスライスして10円玉のような形状にしたものも多く、酢豚 の様な料理に入れる場合もある。
菓子
中国では「山査子餅」の他、「山査子糕 」(シャンジャーズガオ)という平たい羊羹 状の菓子も作られている。中国ではこの菓子を酢豚 の酸味付けに使うこともある。
また竹串 などに刺して、飴 をかけた「冰糖葫芦」(ビンタンフール)という、りんご飴 の様な駄菓子も街角で売られている。
テホコテス
Crataegus pubescens の果実はメキシコ ではテホコテス と呼ばれ、生あるいは調理してよく食される。また、ジャム やキャンディ の材料としても一般的。同属で最も活用されている種と言える。
主な種
代表的な改良品種
脚注
^ Phipps, J.B.; Robertson, K.R.; Smith, P.G.; Rohrer, J.R. (1990). A checklist of the subfamily Maloideae (Rosaceae). Canadian Journal of Botany . 68(10): 2209–2269.
^ Pittler MH, Guo R, Ernst E (2008). “Hawthorn extract for treating chronic heart failure”. Cochrane Database Syst Rev Jan 23 (1): CD005312. PMID 18254076 .
^ 一例として、“ИНСТРУКЦИЯ: для медицинского применения препарата Боярышника настойка (Tinctura Crataegi) ” (ロシア語). Частное Предприятие «ЯН». 2016年12月28日 閲覧。
^ “За «Боярышник» и валокордин будут сажать ” (ロシア語). Газета.Ru. 2016年12月28日 閲覧。
^ a b “酒の代わりに入浴剤飲み49人死亡 ロシア・イルクーツクで非常事態宣言 ”. ハフィントン・ポスト (2016年12月20日). 2016年12月28日 閲覧。
^ a b “ロシア:入浴剤飲み48人死亡 酒代わり、粗悪品出回る ”. 毎日新聞 (2016年12月20日). 2016年12月28日 閲覧。
^ a b c “酒代わりに偽の化粧品飲み48人死亡 ロシア ”. 朝日新聞 (2016年12月20日). 2016年12月28日 閲覧。
^ “ロシア人はなぜローションを飲んだのか パンに靴墨も? ”. 朝日新聞 (2016年12月27日). 2016年12月28日 閲覧。
参考文献
関連項目
外部リンク
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