キルニッツシュタール鉄道 (ドイツ語 : Kirnitzschtalbahn )は、ドイツ に存在する路面電車 。ドイツの国立公園であるザクセン・スイス国立公園 内に路線を有しており、バート・シャンダウ (ドイツ語版 ) とリヒテンハイン滝 (ドイツ語版 ) を結ぶ。2024年 現在は路線バス やフェリー と共にザクセン・スイス・東エルツ山地地域交通 (ドイツ語版 ) (Regionalverkehr Sächsische Schweiz-Osterzgebirge GmbH、RVSOE)によって運営されている[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 7] 。
歴史
ザクセン・スイス (ドイツ語版 ) (Sächsische Schweiz)は、エルベ川 上流部に存在する、奇岩や岩峰を始めとする雄大な自然が広がる観光地である。19世紀以降、鉄道 や蒸気船 といった公共交通機関の充実により観光客が増加した事を受け、温泉保養地であるシャンダウ (ドイツ語版 ) (現:バート・シャンダウ)からキルニッチュ川渓谷(Kirnitzschtal)沿いを進み、リヒテンハイン滝 (ドイツ語版 ) へ向かう電化鉄道(路面電車 )を建設する計画が1893年 に立ち上がった。建設は1897年 から始まり、営業運転を開始したのは翌1898年 5月29日 である。観光客輸送を目的としていたため、当初は夏季(5月 - 10月 )のみ運行していた[ 2] [ 3] [ 8] 。
それ以降は脱線の頻発をはじめとした問題こそ抱えていたものの、路面電車はザクセン・スイスの観光手段として多くの利用客を記録した他、1911年 以降は路面電車の発電所からの電気をシャンダウを始めとする近隣地域へ供給する事業も開始された。1926年 には新型車両の導入や既存の車両の近代化が行われたが、翌1927年 7月26日 の夜間に車庫を全焼する火災が発生し、在籍車両全てが使用不能となる事態に陥った。これを受け、他地域の路面電車から車両を借りて急場を凌ぎ、翌1928年 にMAN 製の電車を購入する事で本格的な運行が再開された。その後、1938年 からは冬季にも列車が設定され、通年運行に改められている[ 注釈 1] [ 2] [ 3] 。
第二次世界大戦 期の被害は軽微であり、1945年 の5月 から6月 にかけて一時運休する程度で済んだ。戦後は東ドイツ の路面電車として運行していたが、1960年代に入ると軌道や施設の老朽化が進み、更に並行する道路の交通量が増えたことで経営にも影響が及ぶようになり、1969年 にはバート・シャンダウ側の起点が移設された。そして同年7月21日 に20人の負傷者が生じる脱線事故が発生した事で、一部区間が閉鎖されるとともに路線の存廃が議論の対象となる事態となった。だが、議論の末にドレスデン地区評議会(Rat des Bezirkes Dresden)は路面電車の存続を決定し、線路の改修が行われた後に1973年 から全線での営業運転が再開した。その後も1985年 に線路の損傷などを理由に一部区間が閉鎖され再度廃止が検討されたが、沿線住民からの抗議もあって撤回された。それ以降は線路や施設の更新が行われ、1990年 までに全線が復旧している[ 3] [ 2] 。
車両については長年にわたりMAN製の電車が使用されたが、1970年代後半にロックヴィッツタール鉄道 (ドイツ語版 ) [ 注釈 2] で使用されていた2軸車 が導入され、MAN製の電車は1986年 までに定期運用から退いた。また、1980年代にはライプツィヒ市電 から譲渡された車体とハレ市電 から譲渡された台枠を組み合わせた付随車 (2軸車)が導入された[ 3] [ 2] 。
ドイツ再統一 以降も線路や施設の整備が続き、1993年 には車庫に太陽光パネル が設置され、太陽光発電 による発電も行われるようになった。車両についても1990年代前半にドイツ各地の路面電車から譲渡された2軸車により近代化が行われた。一方でキルニッツシュタール鉄道は水害 を始めとする自然災害による被害を相次いで受けており、特に2010年 に発生したキルニッチュ川の氾濫による洪水 では線路に加えてすべての車両が浸水するなど大きな被害が生じた。しかし同年のうちに限定的な運行の再開が行われ、以降2012年 まで順次復旧作業が実施されている[ 3] [ 4] 。
運用
2022年 現在、キルニッツシュタール鉄道は以下の電停を含む全長7.8 kmの路線で運行している。ダイヤは夏ダイヤ(4月 - 10月 )と冬ダイヤ(11月 - 4月 )が存在しており、冬ダイヤは夏ダイヤと比べ運行本数が半数以上減少する。基本運賃は片道6ユーロ 、往復9ユーロである[ 5] [ 6] [ 9] 。
電停名
距離
備考・参考
Kurpark
0.0km
Botanischer Garten
0.8km
Waldhäus'l
2.1km
Ostrauer Mühle/Zeltplatz
3.0km
Mittelndorfer Mühle
3.8km
Forsthaus
4.3km
Nasser Grund
6.0km
Beuthenfall
7.1km
Lichtenhainer Wasserfall
7.8km
車両
キルニッツシュタール鉄道の車庫(2011年 撮影)
現有車両
2024年 現在、キルニッツシュタール鉄道で営業運転に使用されている車両は以下の通り。全車とも他都市の路面電車から1980年代以降譲渡された2軸車 (ゴータカー )で、電動車 1両が付随車 2両を牽引する形の編成で営業運転が実施されている。これらに加えてキルニッツシュタール鉄道には2023年 にドレスデン市電 から譲渡された1959年 製の電動車・201 011 が在籍しており[ 注釈 3] 、2024年時点で復元待ちの状態にある[ 3] [ 4] [ 5] [ 7] [ 10] 。
動態保存車両
脚注
注釈
出典
外部リンク