オガタマノキ (招霊木、小賀玉木、学名 : Magnolia compressa )は、モクレン科 モクレン属 に属する常緑 高木 の1種である。和名は、招霊(おきたま)が転じて「オガタマ」になったともされる。オガタマノキ属 に分類されることが多かったが(Michelia compressa )[ 8] [ 12] 、2022年現在ではふつうモクレン属に分類される。日本に自生するモクレン科植物の中では、唯一の常緑樹 である。早春に直径3センチメートルほどの紫紅色を帯びた黄白色の花を葉腋 につける。本州関東地方 から台湾 に分布する。神社に植栽され、ときに神事に使われる。
大賀玉の木 (おがたまのき)と呼ばれる正月の飾りは、別の種類の木を用いる(#大賀玉の木 参照)。
特徴
常緑 高木 であり、高さ10–15メートル (m)、幹の胸高直径は30–80センチメートル (cm) ほどだが[ 8] [ 13] [ 14] 、大きなものは高さ 20 m、胸高直径 1.5 m に達する[ 15] 。香りがよい[ 13] 。樹皮 は暗灰褐色で平滑[ 8] [ 12] (下図1a)。枝 は暗緑色、無毛または褐色の伏毛があり、托葉 痕が枝を一周している[ 8] 。
葉 は互生 し、葉身 は狭倒卵形から長楕円状倒卵形、長さ 5–14 cm、幅 2–5 cm、全縁 、先端はふつう鋭頭、基部はくさび形、革質、表面は光沢があり深緑色で無毛、裏面は白色を帯び、主脈上などに短毛がある[ 8] [ 13] [ 14] (上図1b)。葉柄 は長さ 2–3 cm、有毛[ 8] [ 13] [ 14] 。
花期は2月から4月、直径 3 cm ほどの両性花 が葉腋 に1個ずつつく[ 8] [ 13] 。花柄は長さ約 1 cm[ 13] 。花被片 はふつう12枚、萼片 と花弁 の分化はなく全て花弁状、狭倒卵形、長さ15–25ミリメートル (mm)、内側のものがやや小さく、鋭頭、黄白色で基部が紫紅色を帯びる[ 8] [ 13] 。雄しべ は30–40個、長さ 4–5 mm、葯 は長さ約 3 mm[ 13] 。雌しべ は離生心皮 、多数、初めは有毛[ 8] [ 13] [ 12] 。雄しべ群と雌しべ群の間の花托 に隙間がある[ 13] 。花の匂いは強く[ 8] 、その主成分は安息香酸メチル である[ 16] 。
果期は9–10月[ 8] [ 13] 。個々の雌しべ は卵形から球形、長さ 1.5–2 cm の袋果 となり、ブドウの房状に集まって長さ 5–10 cm の集合果 になるが、同じモクレン属 のコブシ などと異なり果実は融合しない[ 8] [ 13] [ 15] 。各袋果には2–3個の種子 が含まれ、種子は赤い外層で覆われる[ 8] [ 13] 。染色体 数は 2n = 38[ 13] 。
分布・生態
本州 の関東 中南部以西(千葉県 以西)の太平洋岸と四国 、九州 、南西諸島 から台湾 に分布する[ 13] 。
丘陵帯から山地帯下部の林地に生育する[ 14] 。
ミカドアゲハ の食樹としても知られている[ 18] 。
分類
オガタマノキはオガタマノキ属 (Michelia )に分類されることが多かったが(Michelia compressa )[ 8] [ 14] [ 12] 、2022年現在ではふつうモクレン属 に分類される(Magnolia compressa )[ 1] [ 4] [ 13] 。モクレン属の中では、オガタマノキ節(section Michelia )に分類される[ 2] 。
オガタマノキのうち、八重山列島 から台湾 に分布するものは葉身が狭倒卵形から狭楕円形、やや小型で長さ 5–11 cm、幅 2–4 cm、花被片 が全体に黄白色であり、沖縄諸島 以北に分布するもの(上記参照 )とやや異なる[ 13] 。そのため、前者を変種タイワンオガタマ (M. compressa var. formosana (Kaneh. ) C.F.Chen (2014 ) )、後者を基本変種の M. compressa var. compressa として区別することがある[ 13] 。
近縁種の中で、中国 原産のカラタネオガタマ (別名: トウオガタマ、学名: Magnolia figo )は、日本でも庭木 や生け垣 としてよく植栽されている[ 15] [ 19] 。オガタマノキのように大きくはならず、花 にはバナナ に似た強い香りがある。
人間との関わり
和名の「オガタマノキ」は、神道 思想の「招霊 」(おぎたま)から転化したものといわれる[ 15] 。日本神話 においては、天照大神 が天岩戸 に隠れてしまった際に、天鈿女命 がオガタマノキの枝を手にして天岩戸の前で舞ったとされる[ 20] 。神社 によく植栽され、神木 とされたり(下図2a, b)、神前に供えられたりする[ 8] [ 13] [ 15] 。スポーツの神様として有名な白峯神宮 (京都市 上京区 )には樹齢800年と伝えられるオガタマノキがあり、京都市天然記念物 に指定されている[ 21] (下図2c)。また神楽 で使われる神楽鈴 は、オガタマノキの果実が裂開して種子が見える状態のものを模しているともいわれる[ 22] (下図2d)。
材は、良質な家具材として利用されることがある。
2a .
男女神社 (佐賀県)の御神木であるオガタマノキ
2b . 宮地嶽神社(福岡県)の御神木であるオガタマノキ(中央)
オガタマノキは、常陸宮正仁親王 のお印 である[ 22] 。
オガタマノキは、宮崎県 高千穂町 [ 23] や香川県 琴平町 [ 24] の町の木に指定されている。
オガタマノキ(黄心樹、小賀玉の花、黄心樹の花、黄心樹木蓮)は晩春の季語 である[ 25] 。ただしオガタマノキに「黄心樹」を充てるのは、誤用であるともされる[要出典 ] 。オガタマノキの花言葉は「畏敬の念」である[ 22] 。
1円硬貨 にデザインされた枝葉は特定の植物をモデルとしていないが、オガタマノキがモデルであるとする風説がある[ 22] 。
大賀玉の木
大賀玉の木 (おがたまのき)は新年の飾りであり、邪気を払うために1月14日 の夜に門前や門松 にクルミ やネムノキ の枝を飾ったものである[ 26] 。新年の季語 。
脚注
出典
^ a b c GBIF Secretariat (2022年). “Magnolia compressa Maxim. ”. GBIF Backbone Taxonomy . 2022年2月15日 閲覧。
^ a b Wang, Y. B., Liu, B. B., Nie, Z. L., Chen, H. F., Chen, F. J., Figlar, R. B. & Wen, J. (2020). “Major clades and a revised classification of Magnolia and Magnoliaceae based on whole plastid genome sequences via genome skimming”. Journal of Systematics and Evolution 58 (5): 673-695. doi :10.1111/jse.12588 .
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^ a b c d e f g h i j k l m n o p “Magnolia compressa ”. Plants of the World Online . Kew Botanical Garden. 2022年2月15日 閲覧。
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^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Michelia compressa (Maxim.) Sarg. var. macrantha Hatus., nom. nud. オガタマノキ(シノニム) ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2023年3月24日 閲覧。
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^ “琴平町の町花・町木の制定について ”. 琴平町. 2022年2月26日 閲覧。
^ “黄心樹(おがたま/をがたま) ”. きごさい歳時記 . 2022年2月26日 閲覧。
^ “大賀玉の木 ”. 季語・季題辞典 . 日外アソシエーツ. 2022年2月26日 閲覧。
参考文献
関連項目
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
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