アノマロカリス(Anomalocaris[4])は、約5億年前の古生代カンブリア紀の海に生息したラディオドンタ類(アノマロカリス類)の節足動物の一属。ラディオドンタ類の中で最も有名な属であり[7][8]、長い前部付属肢と扇形の尾部をもつ[9][7][10]、遊泳性の捕食者であったと考えられる[9][11][10][12][13][14]。
カンブリア紀の代表的動物としてカナダのバージェス頁岩(バージェス動物群、ウリューアン期)から発見された模式種(タイプ種)であるアノマロカリス・カナデンシス[15](Anomalocaris canadensis[4])が有名であるが、アメリカ[16]、中国[17][18][19][20][6]、オーストラリア[21]など、カンブリア紀の異なる時代と地域に生息した種類もいくつか発見されている[6]。
特異な形態によって、かつては現存する動物の分類群に収まらない「プロブレマティカ」(未詳化石)の代表例として語られてきた古生物である[22][23]。後に研究が進み、他のラディオドンタ類と共に基盤的な節足動物として広く認められるようになった[7][8]。
学名「Anomalocaris」は古代ギリシア語の「ἀνώμαλος」(anomalos、奇妙な・異常な) と「καρίς」(caris、カニもしくはエビの意、水生節足動物の学名に常用される接尾辞[24])の合成語で[4]、すなわち「奇妙なエビ」を意味する[25]。これは記載当初の本属が前部付属肢のみによって知られ、それが当時において甲殻類のコノハエビ類の胴部と誤解釈された(後述参照)[9]上で、付属肢(内突起)・体節(肢節)・尾節(末端数節)とされた部分がコノハエビ類として異様であることに由来する[4]。中国語でも同じ意味で「奇蝦(簡体字:奇虾、ピンイン:Qí xiā、チーシャ)」と呼ばれる[26]。
くびれた流線型の体、長い触手様の前部付属肢と扇子のように広げた尾部(尾扇)が特徴的なラディオドンタ類である[9][7]。2022年現在、本属に含め、全身が知られる種は模式種(タイプ種)であるアノマロカリス・カナデンシス(Anomalocaris canadensis)[22][9][7]のみであり、他の種はほぼ前部付属肢のみによって知られている[21][16][10]。
他の多くのラディオドンタ類と同様、アノマロカリスもカンブリア紀の動物として飛び抜けて大型の種を含むが、知られる全身化石標本はいずれもやや小型の個体(例えば A. canadensis は17.4 cm)で、大型個体は前部付属肢など単離した硬組織のみから知られ、その数値で全身化石の比率にあわせて最大体長(前部付属肢と尾部を除く)が推算される[10]。唯一の全身が知られる種である A. canadensis の体長は柄部を除いた前部付属肢長の2倍前後で、最大の前部付属肢(柄部を除いて18 cm)から換算すると、体長は最大38 cm前後に及ぶとされる[10]。これはアンプレクトベルア、ラミナカリスやティタノコリス(どれも50 cm以上とされる)の次にカンブリア紀最大級のラディオドンタ類の一つとなる[10][27]。
20世紀後期をはじめとして、本属は体長最大1 m以上があるとされ[28][29][25]、1990年代では最大2 mとの説も出て[29]、長らく「カンブリア紀最大の動物」[28][22][29][25]として語られてきたが、2010年代後期以降では否定的である[30][10]。1 mは本属の全身の比率が判明した以前で他の巨大化石節足動物の数値(例えばアースロプレウラや大型ウミサソリの体長と脚の比率)に基づいた誤算であり[28][10]、2 mはオムニデンス (Omnidens) という、知られる中でカンブリア紀最大(推定1.5 m[30])の動物の歯を本属由来と誤解釈した上での推定である[29][30]。
頭部は胴部に対して明らかに小さい[9][7][12]。他のラディオドンタ類と同様、正面には1対の前部付属肢、両背側には1対の複眼、腹面には放射状の口器、背面と左右には3枚の甲皮がある[12]。
口器の直前にある1対の前部付属肢(frontal appendage)は、甲殻類の腹部を思わせる造形をしており、分節した外骨格(肢節)に覆われた触手様の付属肢(関節肢)である。左右に扁平で[7]、原則として14節の肢節(柄部1節と残り13節)に構成される[7][16]。先に向かって細くなり、先端以外の肢節にそれぞれ1対の内突起(endite, 腹側/内側の棘 ventral spine)をもつ[9][7]。これらの内突起は柄部直後の対を始めとして、先端の肢節ほど短くなりながら長短を繰り返し、そのほとんどが前後それぞれ1本以上の分岐(auxiliary spine)をもつ[21][20][7][16]。先端数節は背側(外側)にかけて鉤爪状の棘(dorsal spine, outer spine)をもつ[7]。各肢節の境目はピボット状の関節(pivot joint)で、背面は1対の関節丘(condyle)、腹面は三角形の節間膜(柔軟な表皮)に分かれることにより、この付属肢は全体的に広い上下可動域をもつ[28][7][13]。
全身が知られるラディオドンタ類の中でも、本属の前部付属肢は体に対して最も長く、柄部を除いても体長の半分ほどである[10]。
ラディオドンタ類の基本として、アノマロカリスの頭部も「oral cone」という、放射状の大小の歯によって構成されたドーム状の口器を腹面にもつ。ただしアノマロカリスの oral cone は、開口部は不規則で比較的小さく、歯の総数は32枚を超えて、最大の歯は前方と両後方にある3枚で三放射の構造をなしている[11][21][7]。このような不規則な三放射構造は知られる限り本属以外ではインノヴァティオカリス[31]とエキドナカリス[5]のみに見られ、他のラディオドンタ類のもの(32枚以下の歯でできた規則的な十字放射構造)とは大きく異なる[11][32][7][33]。一方、歯は開口部の近くにうろこ状の隆起と外側に溝が密生しており[11]、これはむしろ一部のアンプレクトベルア科の種類の歯(例えばグアンシャンカリスとライララパクス)に似た特徴である[33][34][35]。
頭部の両背側にある1対の側眼は甲皮よりやや小さく、短い眼柄を介して左右に突出する[9][7]。他のラディオドンタ類と同じく複眼であり、Emu Bay Shale で見つかった本属の未命名種由来とされる眼によると、そのレンズ(個眼)数がおよそ16,000個で、現生節足動物のトンボの約28,000個に匹敵する[36][37]。
頭部の背面と左右を包んだ甲皮(head sclerite complex)はアンプレクトベルア科のものに似て、いずれも小さく楕円形の構造体である[7][38][12]。背側の甲皮(H-element)は前後より左右に長く[38]、外縁が分化していた[7][38]。左右の甲皮(P-element)は背側の甲皮と同じ程度大きさで、前方にある棒状の突出部(P-element neck)を介してお互いに連結する[12]。
十数節の胴節(体節)を含んだ胴部(trunk)は上下に平たく縦長い菱形で、前後ほど幅狭くなる[9][7]。十数節の胴節のうち最初の3節は短縮し、頭部の直後にくびれた「首」をなしている[7][12]。他のラディオドンタ類と同様、胴部の表皮は柔軟で、背側には鰓と思われる櫛状の構造体(setal blades)、両腹側には十数対の鰭(ひれ)が胴節ごとに並んでおり、脚およびそれらしき構造は存在しない[9][7][39]。鰭と胴部の連結部は一連の発達した筋肉を有し、消化管のうち、前腸と後腸は太くて節に分かれ、その間にある細い中腸は6対の消化腺(diverticula, digestive gland, 中腸腺 midgut gland)を左右にもつ[7]。
各胴節の両腹側からは1対の丸みを帯びた三角形の鰭(flap, lobe)が張り出している[9][7]。胴部の前端、いわゆる「首」に該当する短縮した前の3節にある3対の鰭は退化的である[7][12][40]。それ以降の13対の鰭は該当胴節の横幅と同じ程度発達で、ダイヤモンド形の輪郭を描くように、3-4対目の鰭から後方ほど幅狭くなる[7]。それぞれの鰭の前縁には、密集した不規則な皺のような構造体[7]と、アンプレクトベルア科やインノヴァティオカリスにも見られるような斜めの脈(strengthening rays)が並んでいる[31]。
体の尾部には尾扇(tail fan)という、特化した3対の尾鰭によって構成された扇形の部分がある[9][7]。尾扇の間には1本の細い鰭に似て、尾節(telson)に相同と思われる突起がある[7][41]。
流線型の体型と発達した筋肉に繋いだ大きな鰭をもつことにより、アノマロカリスは活動的な遊泳性動物(ネクトン)として広く認められる[22][9][42][7][43][44][13]。他のラディオドンタ類と同様、アノマロカリスもほぼ平行で左右に張り出した鰭を上下に波打たせて、エイやコウイカ類のような方法で泳いでいだとされるが[22][42][43]、アンプレクトベルア科の種類と同様、フルディア科の種類より高い機動性をもっていたと考えられる[44]。流線型な体・大きな鰭・左右に平たい前部付属肢などの性質は流体力学的解析で高速遊泳に適したと示され[44]、特に先頭の前部付属肢は真っ直ぐに伸びると水の抵抗が顕著に少なくなる[14]。また、アノマロカリスの発達した尾扇は、構造的に飛行機の尾翼のように横安定性を維持したか、鳥類の尾羽のように移動中の急速な方向変更に用いられたと考えられる[43]。
捕食対象についてはかつて議論があったが(後述参照)[11]、アノマロカリスは昔今を通じて捕食者として広く認められる[28][22][9][45][11][46][14]。これは獲物を掴めるような形をした棘をもつ能動的な前部付属肢[28][9][45][7][13]だけでなく、(獲物を探すのに適したような)前方にある発達した複眼[36][37]や(動物性の餌を効率よく消化し、栄養を蓄積できるように)特化した消化腺[7][47]などという、複数の捕食者的な特徴で明瞭に示される。
これらを前述の体型に示唆される機動性にあわせると、ラディオドンタ類の中で、アノマロカリスはアンプレクトベルア科の種類と同様、活動的で獰猛な捕食者(raptorial predator)であったと考えられる[10][44]。捕食の際は、先頭の前部付属肢で獲物を巻きつけるように捕獲し、それを直後にある放射状の歯に運んで呑み込んでいたとされ[9][45][11][13]、防御用の頭部の甲皮の小ささは、その前部付属肢の広い可動域を維持するのに適したと考えられる[38]。
中でもバージェス頁岩の A. canadensis は、同じ生息地の中で知られる最大の捕食性動物であることに加えて、その生息地の頂点捕食者であったと考えられる[13][14]。
アノマロカリスの前部付属肢と歯の構造は、極めて硬い生体鉱物化した外骨格をもつ動物(例えば三葉虫)を砕けるのに強度は不足で、むしろ柔らかい動物を捕獲(前部付属肢)・吸い込む(歯)のが得意であったと推測される[11][13][14]。また、口の大きさや前部付属肢が限界まで折り曲げても(内突起がぶつからないほど)一定の隙間を保つことから、アノマロカリスは一定のサイズ(直径2-5 cm程度)の小動物を捕まえるのに適したことも示される[13][14]。
この性質を前述した機動性に合わせて検討すると、アノマロカリスは中小型の柔らかい遊泳性動物(例えばイソキシスやワプティア、カナダスピスなど中小型の遊泳性節足動物、ネクトカリス、古虫動物など)を好み、それらを素早く追い込むように捕食した可能性が高い[11][46][13]。それに加えて、前部付属肢の内突起も常に鋭く破損がほぼ見られないため、アノマロカリスはおそらく(硬い底生生物や堆積物との接触で内突起を破損させやすい)海底ではなく、前述した柔らかい遊泳性小動物が生息する外洋を主な狩場にしたと考えられる[14]。
これはアノマロカリスと同じバージェス動物群のラディオドンタ類であるものの、丈夫な体型・熊手状の前部付属肢・頑丈な歯・大きな口をもつことで、海底を狩場とし、より硬質で広範囲(2-10 cm)の底生生物を主食にしたとされるペイトイアやフルディアとは対照的である。この違いは、同じ生息地におけるラディオドンタ類のニッチの多様性や棲み分けをも示している[46][13][14]。
1990年代から2000年代にかけて、アノマロカリスは長らく三葉虫の捕食者と考えられ、この解釈についても多くの賛否を挙げられた[11]。これは、アノマロカリスが分布する堆積累層(バージェス頁岩と Emu bay shale)で、三葉虫の断片を含んだ糞や消化管の内容物とされる化石や、当時の復元におけるアノマロカリスの歯の形に似た傷跡をもつ三葉虫の化石が発見されており、これらをアノマロカリスによるものと考えられたからである[48][49]。前述の負傷した三葉虫の中では癒合する最中のような傷跡をもつものがあり、これに基づいてアノマロカリスは脱皮直後の柔らかい三葉虫を狙ったという推測もあった[49][50]。一方、アノマロカリスの全身化石の消化管から三葉虫由来の断片が確認できないことと、歯の内側の棘が常に損傷が見当たらないことがこの仮説に疑問を掛けており[51]、その歯は三葉虫の頑丈な外骨格を破れるほどの硬度はなかったと示唆する分析もあった[52]。しかし2012年以前のこれらの見解は、長らくアノマロカリスのものと誤解された、別のラディオドンタ類であるペイトイアの歯に基づいた誤解釈である[11]。
アノマロカリスは歯ではなく、前部付属肢で三葉虫を捕食する(外骨格を関節から千切るか、裏返して腹面を襲う)との考えもあったが[49]、これも後に歯と同様、前部付属肢が三葉虫を捕食するのに適していないことが示される(前述参照)[14]。
バージェス頁岩をはじめとして、アノマロカリスの化石標本は、北アメリカ(カナダ[4][28][53]とアメリカ[16])、中国[17][18][20][6]、オーストラリア[21]におけるカンブリア紀のラーゲルシュテッテン(保存状態の良い化石を産する堆積累層)で発見されており、次の通りに列挙できる[6]。特にカナダの堆積累層に分布するラディオドンタ類の中で、本属の A. canadensis はフルディアの種[32]の次に普遍的で、数十点ほどの化石標本が発見される[28]。
これにより、アノマロカリスは熱帯から亜熱帯の海域にかけて、時代・地域・環境的に幅広く分布したことが示される[6]。
上記の他にも、"Anomalocaris" briggsi(Emu Bay Shale, オーストラリアカンガルー島)[57]、Anomalocaris sp. (ELRC 20001)[29]、"Anomalocaris" kunmingensis(Wulongqing Formation/Guanshan biota, 中国雲南省)[58]、"Anomalocaris" pennsylvanica(アメリカペンシルベニア州、Kinzers Formation)[59][28][60]、"Anomalocaris" magnabasis(Pyramid shale と Pioche Shale, アメリカネバダ州)[61][62][63]、"Anomalocaris" saron(Maotianshan Shale, 中国雲南省)[17][18][64][65]、および Briggs et al. (2008)[66] と Halgedahl et al. (2009)[67] に Anomalocaris sp.(Spence Shale と Wheeler Shale, アメリカユタ州)と同定される化石標本はあったが、いずれも後にアノマロカリスの種として認められにくく、再分類がなされつつある(後述参照)[6][65][31][68]。また、上述の Kaili Formation の GTBM-9-1-1022 も、本属以外のラディオドンタ類(おそらくアンプレクトベルア科のアンプレクトベルア)由来の可能性がある[35]。
アノマロカリス、特にその模式種(タイプ種)であるアノマロカリス・カナデンシス(Anomalocaris canadensis)はカンブリア紀の古生物の中でも複雑な発見史をもつ[9][25]。最初は19世紀後期から長い間に前部付属肢が甲殻類の胴部と思われ、20世紀後期を初めとしてペイトイア(=ラガニア)の特徴と混同して復元され、2010年代においてもいくつかの特徴を更新され続けていた[11][7][12][40]。
アノマロカリスがカナダのバージェス頁岩(バージェス動物群)で最初に発見された頃は、単離した前部付属肢の化石標本のみ知られている。これは当時において甲殻類のコノハエビ類の胴部と考えられ、1892年にカナダの古生物学者ジョセフ・フレデリック・ホワイティーブス(Joseph Frederick Whiteaves)の記載(Whiteaves 1892)で内突起を付属肢、肢節を体節、先端部分を尾節と解釈され、それらがコノハエビ類として異様であること因んで「アノマロカリス・カナデンシス」(Anomalocaris canadensis)という学名を与えられた[4]。
また、アノマロカリスや他のラディオドンタ類の完全な化石が発見される前に、放射状の円盤らしき化石と縦長い動物の体らしき化石が先に発見され、前者は刺胞動物のクラゲである「ペイトイア・ナトルスティ」(Peytoia nathorsti)、後者は棘皮動物のナマコである「ラガニア・カンブリア」(Laggania cambria)と、それぞれアメリカの古生物学者チャールズ・ウォルコット(Charles Walcott)の記載(Walcott 1911a)に別々の動物門の種として命名された[69]。
しかし、これらの化石については、次のような疑問があった。
特に前部付属肢の部分である「アノマロカリス」に関しては、別の解釈が提唱されており、例えば Henriksen (1928) にツゾイア(Tuzoia)という背甲によって知られる節足動物の単離した腹部と思われ[71]、Briggs (1979) に未発見の1 m以上の巨大節足動物の脚と考えられた[28][25]。
こうして数十年も不明確であった「アノマロカリス」、「ペイトイア」と「ラガニア」の本質だが、古生物学者ハリー・ウィッティントン(Harry B. Whittington)とデリック・ブリッグス(Derek Briggs)が1980年代に行われる研究によって解明され始めた[9][25]。1980年代初期、ウィッティントンが「ラガニア」に似た所属不明の化石標本 GSC 75535 を解析したところ、その先端から1対の「アノマロカリス」と1つの「ペイトイア」に似た構造が発見された。そして既存のいくつかの「ラガニア」の化石にも似たような結果を得られており、その先端から「ペイトイア」と、「アノマロカリス」とはやや異なった1対の櫛状の前部付属肢が発見された。こうして「アノマロカリス」、「ラガニア」と「ペイトイア」はそれぞれ別門ではなく、少なくとも門以下に同群の動物(同じくラディオドンタ類)に由来する体の一部(「アノマロカリス」=前部付属肢、「ペイトイア」=口、「ラガニア」=胴体)であることが判明した[22]。
ウィッティントンとブリッグスが共著した1985年の記載(Whittington & Briggs 1985)では、これらの全てが1つの属に由来と考えられ、その属名を学名の先取権に従ってアノマロカリス(Anomalocaris)とされた。更に、この属の中には前部付属肢の形態だけ明確に異なる2種、いわゆる「アノマロカリス」型の前部付属肢をもつ、その学名を元通りに受け継ぐアノマロカリス・カナデンシス(Anomalocaris canadensis)と、ペイトイアの種小名を受け継ぐ、櫛状の前部付属肢をもつアノマロカリス・ナトルスティ(Anomalocaris nathorsti)が認められた[22][72]。「体の各部位がかつてそれぞれ別生物とされた」という、一般に「アノマロカリスの復元史」として語られてきた経緯は、この見解によるものである[9]。
しかし、その後は再検証や更なる完全な化石標本の発見により、前述の見解は大きく異なる2種のラディオドンタ類の特徴を混同したものだと判明した[9]。古生物学者デスモンド・H・コリンズ(Desmond H. Collins)の1996年の記載(Collins 1996)では、アノマロカリス・カナデンシスとラガニア・カンブリア(=前述のアノマロカリス・ナトルスティおよび2010年代以降のペイトイア・ナトルスティ)という、それぞれ別属の2種のラディオドンタ類が復元された[9]。前者は前部付属肢だけでなく、扇形の尾部・流線型の体・小さな頭部の前方に備わる眼など多くの特徴で明確に後者(前部付属肢は櫛状・尾鰭を欠き・楕円形の体・巨大な頭部の後方に備わる眼)から区別できる[9][25]。
Collins (1996) は上述の他に、アノマロカリス・カナデンシスの歯の表面にうろこ状の隆起があることも示された[9]。同時に、アノマロカリスの前部付属肢と「ひし形のペイトイア」が共に保存された化石標本 ROM 51216 も記載され、同一個体に由来と解釈された。アノマロカリス・カナデンシスの口がこれらの発見に基づいて、「表面に隆起が生えたひし形のペイトイア」として復元された[9]。
2000年代に至っても、アノマロカリス・カナデンシスの口は十数年も80-90年代の見解に基づいて、規則的な32枚の歯のうち十字方向にある4枚が最も大きいという、典型的な「ペイトイア」型だと思われていた[11]。しかし、既存の化石標本の再検証や新たな化石標本から確実な証拠を得た Daley & Bergström (2012) により、アノマロカリス・カナデンシスの口は不規則な三放射構造という、今までの復元とは大きく異なる形態をもつだと判明した[11]。これにより、かつてアノマロカリス由来と思われた、化石標本 ROM 51216 に見られる「ペイトイア」型の歯は別のラディオドンタ類、すなわちラガニアに由来・混入したものとなる[11]。また、同じ文献で、ラガニア・カンブリアはペイトイア・ナトルスティへと改名された(詳細はペイトイア#研究史を参照)[11]。
Daley & Edgecombe (2014) ではアノマロカリス・カナデンシスの全面的な再記載が行われ、本種の復元が大幅に更新された。各鰭の前縁を走る一連の皺・背中の鰓とされる構造体(setal blade)・尾扇中央の突起部・頭部背側の甲皮(H-element)などの新しい形質が発見されるだけでなく、前部付属肢はより左右平たく、複眼はより大きく、鰭の数は(首と尾部の鰭を除いて)13対など、一部の既知の構造も更新された[7]。本種の背側の甲皮は Daley & Edgecombe (2014) では前後に幅広いとされたが、Zeng et al. (2017) 以降では向きが90度修正され、左右に幅広いとなった[38]。本種の最大体長は、正確の比率に基づいた Lerosey-Aubril & Pates (2018) の推算により、一般に知られる( Briggs 1979 [28]由来の)1 mから38 cmへと大幅に下方修正された(前述参照)[10]。Moysiuk & Caron (2019) に行われる再検証では、前述の Daley & Edgecombe (2014) に大きな複眼と解釈された部分は眼らしからぬ保存状態をもち(硬組織のように明瞭な輪郭をもつ・同じ堆積累層で化石化した眼において特徴的な光沢と色合いを欠く)、むしろ頭部の左右に備わる楕円形の甲皮(P-element)であることを明らかにした[12]。Zeng et al. (2020) では、本種の前部付属肢の柄部は(キリンシアの前端の付属肢にも見られる、腹側に広げた節間膜があることを示唆する)斜めの境界線があると示された[40]。Zeng et al. (2022) では、柄部直後1番目の内突起には2対の分岐(従来では1対のみとされた)、鰭の前縁には斜めの脈が並んでいることが判明した[31]。
有爪動物
緩歩動物
様々な葉足動物(側系統群)
シベリオン類
パンブデルリオン
ケリグマケラ
オパビニア、ユタウロラなど
アノマロカリスなど
アンプレクトベルアなど
タミシオカリスなど
フルディア、ペイトイアなど
ラディオドンタ類(広義のアノマロカリス類)の中で、アノマロカリスは最初(1892年[4])に命名がなされ、そして1980年代で最初にラディオドンタ類として復元された属でもある(復元史を参照)[9]。本属の全身が復元され始めた頃では、既に命名されたラディオドンタ類の属のうち、フルディア(1912年命名)とパーヴァンティア(1981年命名)のラディオドンタ類的本質は未解明、ペイトイア(=ラガニア、1911年命名)の種もアノマロカリスに含まれたため、当時、アノマロカリスは唯一に知られるラディオドンタ類であり、本属を含んだアノマロカリス科(Anomalocarididae)以外では、ラディオドンタ類の構成種をまとめる分類群も創設されていなかった[22]。
この頃、アノマロカリスは一見して現在のいかなる動物群にも類似しない姿により、既存の動物門への分類が不可能な未詳化石(プロブレマティカ)と考えられた[22][23]。これは、関節に分かれた前部付属肢や体に体節制がある点では節足動物を思わせるが、節足動物にしては放射状の口器や一連の鰭を有する柔軟な胴部が特異すぎるからである[22][9]。
1990年代では、アノマロカリス以外のラディオドンタ類の存在が知られつつある[29][17][9]。この頃では、ペイトイア(当時ではラガニア)は別属としてアノマロカリスから再区別され(発見史参照)[9]、アンプレクトベルアなどという似たような別属も発見された[29][17]。これにより、アノマロカリスは自らのみならず、これらのような古生物と共にある多様な分類群に所属している一員であることが分かる。この分類群の構成種は、一時期では既存のアノマロカリス科のみにまとめられ、「アノマロカリス類」(anomalocaridids)と総称されていたが、後にさらに多くの種類が見つかり範囲を広げられ、「ラディオドンタ類」(ラディオドンタ目、放射歯目、学名: Radiodonta[9])として知られるようになった[73]。
1990年代を始めとして、前述の未詳化石説を覆し、アノマロカリスと他のラディオドンタ類を節足動物とする見解が台頭し始めた[72][29][75][9][76][77]。ラディオドンタ類とそれに似たオパビニア類(オパビニア[76]、ユタウロラなど[78])、ケリグマケラ[75]とパンブデルリオン[77]からいくつかの節足動物的性質(体節制・消化腺[47]・下向きの口[3]・複眼[36][37]・外葉を思わせる鰓[39]・二叉型付属肢を思わせる背腹の付属肢構造[76][39])が認められ、特にラディオドンタ類は外骨格と関節肢という、節足動物として決定的な特徴まで頭部に現れる[72][3][79][8]。同時に、これらの古生物は前述の節足動物らしからぬ特徴(柔軟な胴部など)もあることにより、これらの古生物は、胴部の外骨格と関節を進化する以前の、節足動物の絶滅した基部系統(ステムグループ)に所属する基盤的な節足動物であることも示唆される[75][76][77][3][79][8]。いくつかの異説もあった[17][80]が、21世紀代以降ではこの系統仮説に関する研究が飛躍的に進んでおり、新たな化石証拠と系統解析から根強い支持を受けられ続けている[81][82][74][39][3][79][10][12][40][83][27][78][84][31]。
ラディオドンタ類の中で、アノマロカリスはアノマロカリス科(Anomalocarididae, 狭義のアノマロカリス類)の模式属(タイプ属)である。この科は90年代から2010年代前期にかけて全のラディオドンタ類の構成種を含んでいたが、Vinther et al. (2014) 以降では本属と他の科より本属に近いとされるラディオドンタ類のみを含むようになり[73]、例えば Wu et al. (2021a) ではアノマロカリスとレニシカリス (Lenisicaris) のみ認められる[6]。この科はほとんどの系統解析にアンプレクトベルア科(Amplectobeluidae)の近縁とされるが[73][74][39][10][34][83][78][31]、歯の構造の類似によりタミシオカリス科(Tamisiocarididae)の近縁ともされる[5]。
アノマロカリス(アノマロカリス属 Anomalocaris)に分類されるラディオドンタ類の種は、模式種(タイプ種)であるアノマロカリス・カナデンシス(Anomalocaris canadensis)の他にも幾つかある[6]。しかし20世紀から2010年代にかけて、本属は"アノマロカリス"・ブリッグシ("Anomalocaris" briggsi)や"アノマロカリス"・サロン("Anomalocaris" saron)などという別系統の可能性が高い種を少なからぬ含んでおり[6]、系統解析においてそのほとんどが往々にして別の属や科に近縁とされる[73][74][39][10][34][12]。これらの種は、次々と本属から除外され、別属の種として改名・再分類されつつある(後述参照)[6][65][35][31][5]。
Wu et al. (2021a) およびそれ以降の記載によると、アノマロカリスに含めるとされる種は次の通り。これにより、本属の中で正式に命名された種は A. canadensis と A. daleyae のみである[6][5]。
かつてもしくは一時期的にアノマロカリスと考えられ、後にそれ以外の種とされるようになったラディオドンタ類は次の通り。
かつてアノマロカリスとして命名されたものの、アノマロカリスどころか、ラディオドンタ類ですらない別生物は種は次の通り。
Laba-laba punggung merah Latrodectus hasselti Betina dewasaJantan dewasa (lebih kecil daripada betina)TaksonomiKerajaanAnimaliaFilumArthropodaKelasArachnidaOrdoAraneaeFamiliTheridiidaeGenusLatrodectusSpesiesLatrodectus hasselti Thorell, 1870 Tata namaSinonim takson Latrodectus scelio Thorell, 1870 Latrodectus scelio indicus Simon, 1897 Latrodectus indicus Pocock, 1900 Latrodectus hasselti indicus Pickard-Cambridge, 1902 Latrodectus ancorifer Dahl, 1902 Latrodectus hasselti aruensis Strand, 1911 …
Submarine base of the Brazilian Navy Madeira Island Submarine Base Base de Submarinos da Ilha da MadeiraItaguaí, Rio de Janeiro in BrazilBSIMLocation in BrazilCoordinates22°51′7″S 43°46′30″W / 22.85194°S 43.77500°W / -22.85194; -43.77500TypeNavy baseSite informationControlled byBrazilian NavyOpen tothe publicNoSite historyIn use2020-present (2020-present)[1]Garrison informationCurrentcommanderCap. Fernando De Luca Marques…
Macaco-prego-dourado Estado de conservação Em perigo crítico (IUCN 3.1) [1] Classificação científica Reino: Animalia Filo: Chordata Classe: Mammalia Ordem: Primates Família: Cebidae Subfamília: Cebinae Género: Sapajus Espécie: S. flavius Nome binomial Sapajus flavius(Schreber, 1774) Distribuição geográfica Mapa de distribuição Sinónimos[2] queirozi Mendes Pontes & Malta, 2006 O macaco-prego-dourado ou macaco-prego-galego (nome científico:Sapajus flavius) é uma espécie de m…
هذه القائمة غير مكتملة. فضلاً ساهم في تطويرها بإضافة مزيد من المعلومات ولا تنسَ الاستشهاد بمصادر موثوق بها. هيكل الديناصور المصري سبينوصور. هذه قائمة الحفريات والديناصورات في مصر قديمًا. علماء ساهموا باكتشافها يورغ أوغست شفاينفورت أرنست سترومر Richard Markgraf, early 1900s A. B. Orlebar. Fayoum 1…
Président de larépublique du Zimbabwe(en) President of theRepublic of Zimbabwe Armoiries du Zimbabwe. Drapeau du président du Zimbabwe. Titulaire actuelEmmerson Mnangagwadepuis le 24 novembre 2017(6 ans et 7 jours)Vice-président : Constantino Chiwenga Création 18 avril 1980 Mandant Suffrage universel direct Durée du mandat 5 ans, renouvelable une fois Premier titulaire Canaan Banana Résidence officielle Palais d'État (en) (Harare) Site internet theopc.gov.zw modifier&…
Координати: 18°47′07″ пд. ш. 16°15′50″ сх. д. / 18.78528° пд. ш. 16.26389° сх. д. / -18.78528; 16.26389 Етоша у сухий період. Етоша у вологий період. Етоша (англ. Etosha pan) — солончак, пересихаюче озеро в Намібії. Зміст 1 Загальний опис 2 Цікаво 3 Див. також 4 Джерела 5 Пос…
Lincoln Boyhood National Memorial Nachbau der Lincoln FarmNachbau der Lincoln Farm Lincoln Boyhood National Memorial (USA) 38.120277777778-86.996944444444Koordinaten: 38° 7′ 13″ N, 86° 59′ 49″ W Lage: Indiana, Vereinigte Staaten Gründung: 19. Februar 1962 Adresse: Lincoln City (Indiana), USA i4i6 Das Lincoln Boyhood National Memorial ist ein Presidential Memorial, das die Farm erhält, auf der Abraham Lincoln von 1816 bis 1830 gelebt hat. Während dieser …
WikiIndabaStatusAktifJenisKonferensiLokasiBeragamAcara pertama2014; 8 tahun lalu (2014)Terakhir diadakan2018PenyelenggaraTim sukarelawan lokalStatus pajakNirlabaSitus webwikindaba.net Wiki Indaba adalah sebuah konferensi resmi Yayasan Wikimedia dengan peminatan dalam konten Afrika.[1][2] Topik-topik presentasi dan dialog meliputi proyek-proyek Wikipedia seperti Wikipedia, wiki-wiki lain, perangkal lunak sumber terbuka, pengetahuan bebas, konten bebas dan cara proyek tersebut…
冰島-美國關係 冰島 美國 冰島-美國關係指的是冰島共和國和美利堅合眾國之間的雙邊關係。冰島和美國都是北大西洋公約組織的成員國。 根據2012年的「美國全球領導力報告」顯示,17%的冰島人贊成美國的領導地位,25%的不贊成,58%的不確定。[1] 參見 冰島裔美國人(英语:Icelandic Americans) 美国外交 冰島外交(英语:Foreign relations of Iceland) 參考文獻 本条
Boundary cells (also known as border cells or boundary vector cells) are neurons found in the hippocampal formation that respond to the presence of an environmental boundary at a particular distance and direction from an animal. The existence of cells with these firing characteristics were first predicted on the basis of properties of place cells. Boundary cells were subsequently discovered in several regions of the hippocampal formation: the subiculum, presubiculum and entorhinal cortex. Firing…
Hereditary Grand Duke of Mecklenburg-Schwerin Friedrich Franz (V)Hereditary Grand Duke of Mecklenburg-SchwerinHead of the House of Mecklenburg-SchwerinPeriod17 November 1945 – 31 July 2001PredecessorFrederick Francis IVSuccessorBorwin, Duke of MecklenburgBorn(1910-04-22)22 April 1910Schwerin, Mecklenburg-Schwerin, GermanyDied31 July 2001(2001-07-31) (aged 91)Hamburg, GermanySpouse Karin Elisabeth von Schaper (m. 1941; div. 1967) &(m.…
Büdinger Wald Höchster Gipfel Hammelsberg (416 m ü. NHN) Lage Wetterau- und Main-Kinzig-Kreis, Hessen Teil der Großregion (3. Ordnung) Odenwald, Spessart und Südrhön Einteilung nach Handbuch der naturräumlichen Gliederung Deutschlands Büdinger Wald (Hessen) Koordinaten 50° 16′ N, 9° 14′ O50.26049.2323416Koordinaten: 50° 16′ N, 9° 14′ O Gestein Basalt und Buntsandstein Fläche 201,68 km² f1p1 Wetterau und Büdinger W…
Sepatu roda artistikSuasana pertandinganInduk organisasiWorld SkateNama lainArtistic roller skatingRoller skatingKarakteristikAnggota timIndividual, duo, atau berkelompokGender campuranYaPeralatanRoller skatesTempat bertandingGelanggang olahragaKeberadaanOlimpiadeTidakPekan Olahraga Dunia1981 – kini Sepatu roda artistik adalah olahraga yang memiliki kemiripan dengan seluncur indah, namun dalam olahraga ini, peserta menggunakan sepatu roda alih-alih sepatu es. Dalam olahraga ini, …
Nữ anh hùng hư cấu của John Greenleaf Whittier Maud Muller nhìn chằm chằm vào mông lung, hối tiếc vì đã không hành động và suy nghĩ về những gì có thể đã xảy ra. Các cung bậc củaCảm xúc Ở động vật Trí tuệ xúc cảm Tâm trạng Các cảm xúc Bất an Buồn Chán Cô đơn Đam mê Đau khổ Đồng cảm Ganh tị Ghen tuông Ghê tởm Hạnh phúc Hối hận Hối tiếc Hy vọng Khinh thường Khó chịu Khoái lạc Lãnh đ…
Military Enigma machine, model Enigma I, used during the late 1930s and during the war; displayed at Museo scienza e tecnologia Milano, Italy German Army cryptographic systems of World War II were based on the use of three types of cryptographic machines that were used to encrypt communications between units at the division level. These were the Enigma machine,[1] the teleprinter cipher attachment (Lorenz cipher),[2] and the cipher teleprinter the Siemens and Halske T52,[3 …
Una ecuación de compatibilidad es una ecuación adicional a un problema mecánico de equilibrio necesaria para asegurar que la solución buscada es compatible con las condiciones de contorno o para poder asegurar la integrabilidad del campo de deformaciones. Ecuaciones de compatibilidad en deformaciones En el planteamiento del problema elástico, las ecuaciones de compatibilidad son ecuaciones que si se cumplen garantizan la existencia de un campo de desplazamientos compatible con las deformaci…
Desert in South America Atacama redirects here. For other uses, see Atacama (disambiguation). Atacama DesertAtacama by NASA World WindMap of the Atacama Desert: the area most commonly defined as Atacama is in yellow. In orange are the outlying arid areas of the southern Chala, Altiplano, Puna de Atacama, and Norte Chico.EcologyRealmNeotropicalBiomeDeserts and xeric shrublandsBordersCentral Andean dry punaChilean matorral,Sechura DesertGeographyArea104,741 km2 (40,441 sq mi)Country…
Study of sociology from a Marxist perspective Statues of Marx and Engels in Bishkek, Kyrgyzstan. Part of a series onSociology History Outline Index Key themes Society Globalization Human behavior Human environmental impact Identity Industrial revolutions 3 / 4 / 5 Social complexity Social construct Social environment Social equality Social equity Social power Social stratification Social structure Perspectives Conflict theory Critical theory Structural functionalism Positivism Social constructio…
VivimiSingle by Laura Pausinifrom the album Resta in ascolto ReleasedFebruary 2005Recorded2004GenrePopLength3:54LabelWarner Music ItaliaSongwriter(s)Biagio AntonacciProducer(s)Biagio AntonacciLaura Pausini singles chronology Resta in ascolto (2004) Vivimi (2005) Come se non fosse stato mai amore (2005) VivemeSingle by Laura Pausini featuring Alejandro Sanzfrom the album 20 - The Greatest Hits Released17 December 2013GenreLatin popLabelWarner MusicSongwriter(s)Biagio AntonacciLaura PausiniIgn…
Chemical compound AndroisoxazoleClinical dataTrade namesAndroxan, Neo-Ponden, Neo-PondusOther names17α-Methyl-5α-androstano[3,2-c]isoxazol-17β-olRoutes ofadministrationBy mouthDrug classAndrogen; Anabolic steroidIdentifiers IUPAC name 2,3,3a,3b,4,5,5a,6,10,10a,10b,11,12,12a-tetradecahydro-1,10a,12a-trimethyl-1H-cyclopenta[7,8]phenanthro[2,3-c]isoxazol-1-ol CAS Number360-66-7 Y[correct]PubChem CID9676ChemSpider9295 YUNII6WRG30P3CGCompTox Dashboard (EPA)DTXSID40957423 Chemical…
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