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自立支援医療(精神通院医療)(じりつしえんいりょう せいしんつういんいりょう)とは、公費負担医療のひとつ[1]。精神疾患(てんかんを含む)の治療のため通院による精神医療を継続的に要する病状にある者に対して医療費の自己負担を軽減するものである。
事業内容
制度の実施主体は、都道府県又は指定都市。対象者は精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症、精神作用物質による物質中毒、その他の精神疾患(てんかんを含む。)を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する病状にある者で、症状がほとんどなくても状態維持や再発防止目的の通院も対象となっている[2]。
対象となるのは全ての精神疾患で、次のようなものが含まれる[3]。
医療費の軽減が受けられる医療の範囲[3]
- 精神疾患・精神障害や、精神障害のために生じた病態に対して、病院又は診療所に入院しないで行われる医療(外来、外来での投薬、デイケア、訪問看護等が含まれまる)が対象となる(※精神障害のために生じた病態とは、精神障害の症状である躁状態、抑うつ状態、幻覚妄想、情動障害、行動障害、残遺状態等によって生じた病態のこと)。
医療費の自己負担[3]
- 公的医療保険で3割の医療費を負担しているところを、1割に軽減する(例:かかった医療費が7,000 円、医療保険による自己負担が2,100 円の場合、本制度により公費で2割(1,400円)穴埋めし、患者の自己負担を700 円に軽減する)。
- この1割の負担が過大なものとならないよう、1ヵ月当たりの負担には上限を設けている。上限額は、世帯(※1)の所得に応じて異なっている。
この制度は、都道府県又は政令指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院・診療所・薬局・訪問看護ステーション)のみで利用できる[3]。
なお、「指定自立支援医療機関」は、病院・診療所1箇所、調剤薬局1箇所、デイサービス1箇所のように指定されるが、例外として、うつ病とアルコール依存症で、別々の医師による診療を受けている場合などは、2箇所の病院・診療所、調剤薬局が指定されることがある。
本制度で医療を受ける際には、交付された、「受給者証(自立支援医療受給者証)」と、自己負担上限額管理票を、受診の度に、医療機関に提示する必要がある[3]。
公費負担受給者証の有効期限は1年である。1年ごとに更新が必要になる[3]。
更新時に診断書が不要でも、有効期間終了後1ヶ月を超えて申請する場合は、診断書(意見書)の提出が必要になる。
区分
世帯による市町村税納税額によって、自己負担額に上限を設けている[4]。
1ヶ月あたりの自己負担額の上限
所得区分 |
精神通院医療 |
重度かつ継続
|
一定所得以上
|
対象外 |
20,000円(経過的特例)
|
中間所得2
|
20,000円 |
10,000円
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中間所得1
|
10,000円 |
5,000円
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低所得2
|
5,000円 |
-
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低所得1
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2,500円 |
-
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生活保護
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0円 |
-
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経過的特例の期限
「重度かつ継続の一定所得以上の者で自己負担上限額を2万円とする措置」及び「育成医療の中間所得1(市町村民税課税以上3万3千円未満)の自己負担上限額を5千円とする措置」と「育成医療の中間所得2(市町村民税3万3千円以上23万5千円未満)の自己負担上限額を1万円とする措置」の区分については、令和3年3月31日までの経過的特例となっている[5][6]。
平成27年3月、令和3年(2021年)3月31日までの経過的特例の再延長が発表された[7]。
令和6年3月には令和9年3月31日まで再延長された。
歴史
従前の精神科への通院医療費に対する患者負担は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第32条の「通院医療費公費負担制度」で、本来の健康保険30%の自己負担が、この制度を利用すると、残り25%を公費負担し、患者は診療報酬全体の5%を自己負担で済んだ。地方公共団体によっては、残りの自己負担分も公金で負担し、無料であった[8]。
第163回国会にて成立した障害者自立支援法第5条により、2006年(平成18年)4月より、精神通院医療費の全体の原則10%負担、かつ患者の世帯収入に応じた『応益負担』に変更された。
脚注
出典
参考文献
関連項目
外部リンク