武蔵丘車両検修場(むさしがおかしゃりょうけんしゅうじょう)は、埼玉県日高市にある西武鉄道の鉄道車両の検査・修繕施設である。
概要
池袋線東飯能駅 - 高麗駅間に位置している武蔵丘信号場から分岐する武蔵丘車両基地に併設されている。西武鉄道最大の車両検修施設。
- 所在地 - 埼玉県日高市台
- 敷地面積 - 84,750m2[1]
- 建物面積 - 36,213m2[1]
- 車両整備施設 - 車両の更新や改造工事などを施工可能な設備を有している。
- 整備能力 - 480両/年[1]
- 実施検査 - 重要部検査[注 1]・全般検査
- 定期検査担当車両 - 西武鉄道全車両
以下は当検修場を上から見た場合の概要を示す。
一番大きな建屋が検修棟で、中央を東西方向にトラバーサーが横切っている。トラバーサーより北側は主に台車や車両を検修する設備が、南側には主に車体や座席を検修する設備が配されている。東端は全域に渡り検車線(ピット線/10両分)が設けられている。その他南側においては検車線の隣に出場線、入場線があり、2線では各1両分のリフティングジャッキが設けられている他、検車線と合わせた3線には普通鉄道車両の出入りが可能なシャッターが存在する。
検修棟の西側中央に位置する小さめの建屋が管理棟で、会議室や食堂等が入る[2]。
沿革
- 2000年(平成12年)6月16日 - 開設[3]。老朽化し6月15日をもって閉鎖された所沢車両工場より機能を移転。
- 2000年(平成12年)12月22日 - 環境マネジメントシステムに関する国際規格ISO 14000シリーズの「ISO 14001」の認証を取得[4]。
- 2001年(平成13年)3月16日 - 西武車両に業務移管[5]。
- 2002年(平成14年)6月1日 - 「西武・電車フェスタ 〜検修場まつり〜」を開催。以降毎年開催されている。
- 2004年(平成16年)9月 - 品質マネジメントシステムに関する国際規格ISO 9000シリーズの「ISO 9001(2000年版)」の認証を取得。
- 2010年(平成22年)4月 - 西武車両を西武鉄道に合併し、当検修場は鉄道直系の業務組織へ組み込まれる[5]。
- 2014年(平成26年)1月28日 - メガソーラーの発電開始[3]。
配線図
武蔵丘車両基地・武蔵丘車両検修場 構内配線略図
← 飯能 方面 |
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→ 吾野 方面 |
凡例
出典:[6][7] |
検査工程
入場する車両は入場線の所定位置に停止後、パンタを下げ[注 2]、アントの牽引により建屋内へ入る。その後編成を解かれ、仮台車への交換(台抜き)を行う。その後は各部品を取り外してそれぞれ専門の部門で別々に検査や修繕が行われ、検修終了時に再び元通りに組み上げられる。なお出場線と検車線は建屋内で繋がっていないため、出場線で台入れを行った車両は検車線に入る際、一度建屋の外に出ることとなる。最後に検車線で総合検査、構内試運転が行われ出場する[2]。車種、両数にもよるが検査期間は概ね半月 - 1か月弱となる。
備考
- 西武鉄道全車両の重要部検査・全般検査は全て当検修場で実施される。
- 通常、重要部検査・全般検査は編成ごとに行われるが、西武鉄道では検査工程の標準化のため、6両以上の編成では一度の入場時に編成を半分に分け、一方を重要部検査、もう一方を全般検査という形で実施している[2]。
- ただし20000系以降の車両はこの限りではない。理由は下記参照。
- 2012年度より検査体系が見直され、20000系以降の新系列車両においては重要部検査を、車両基地で行う新重要部検査へ変更した[8]。これによりそれらの車両が当検修場へ入場する際には両数に関わらず編成全体で全般検査が実施される[1]。
- 普通鉄道の車両が入場する際は、基本的に常駐先の車両基地[注 3]から回送され、出場後は同じ車両基地へ試運転を兼ねて回送される。なお武蔵丘車両基地に常駐する車両[注 4]に関しては、小手指車両基地まで試運転の後、武蔵丘車両基地へ回送される。
- 本線から分離されている多摩川線の車両は本線側に常駐しているタイミングで当検修場へ入場する[注 5]。
- AGTを採用する山口線の車両が当検修場へ入場する際は、山口車両基地からトラックで輸送される。
- 多客輸送のために本線を走る編成の数が多くなる際には車両の検査日程を前倒しするなどして対応している。
改造工事
車両製作の技術を生かし、ワンマン運転対応や新型機器の取付等の改造工事を実施している[1]。また、過去には他社へ譲渡する車両の改造も行っていた。当検修場で施工[注 6]した主な改造は以下の通り。
自社車両
- 4000系ワンマン運転対応化[1](2001年 - 2002年)
- 10000系リニューアル[1](2003年 - 2009年)
- 新101系ワンマン運転対応化[1](2005年 - 2012年)
- 9000系VVVF制御装置化[1](2003年 - 2004年)
- 263編成牽引車化[1](2008年)
- 2000系補助電源SIV化、車体小修繕[1](2008年 - )
- 6000系機器更新(2015年 - 2020年)
- 4009編成観光電車化[9](2015年度)
- 9000系ワンマン運転対応化[10](2020年 - 2021年)
譲渡車両
- 上信電鉄500形[1](2004年 - 2005年)
- 秩父鉄道6000系[1](2005年)
- 流鉄5000形[1](2009年 - 2013年)
- 三岐鉄道751系[1](2008年)
- 伊豆箱根鉄道1300系[1](2008年 - 2009年)
一般公開
2021年現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延の影響により中止となった2020年[11]を除き、2002年から毎年1回、一般公開イベントが開催されている。毎年夏に南入曽車両基地で開催される「南入曽車両基地 電車夏祭り」や毎年10月の鉄道の日前に横瀬車両基地で開催される「西武トレインフェスティバル」と並ぶ西武鉄道の一般公開イベントの1つである。
開催日は2005年までは毎年6月の第一日曜日とその前日の土曜日の二日間、2006年と2009年から2011年、2015年と2016年は6月の第一日曜日、2007年と2008年、2012年から2014年は6月の第二日曜日、2017年から2021年は6月の第一土曜日となっている。
2002年と2003年のイベントの名称は「西武・電車フェスタ 〜検修場まつり〜」であったが、翌2004年以降は「西武・電車フェスタ(西暦) in 武蔵丘車両検修場」となっている。
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開催日
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イベント名
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2002年
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6/1,6/2[12]
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「西武・電車フェスタ 〜検修場まつり〜」
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2003年
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5/31,6/1[13]
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2004年
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6/5,6/6[14]
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「西武・電車フェスタ(西暦) in 武蔵丘車両検修場」
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2005年
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6/4,6/5[15]
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2006年
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6/4[16]
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2007年
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6/10
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2008年
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6/8
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2009年
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6/7
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2010年
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6/6
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2011年
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6/5
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2012年
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6/10
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2013年
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6/9
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2014年
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6/8
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2015年
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6/7
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2016年
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6/5
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2017年
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6/3
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2018年
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6/2
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2019年
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6/1
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2020年
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中止[11]
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2021年
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6/5
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2022年
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6/4
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主なイベント内容は、車両の展示、台車抜き作業の実演、車両の乗務員室乗車体験、パンタグラフや主制御機器の操作体験、鉄道部品や関連グッズの販売など。開催年によって若干異なる。建屋内外に飲食売店も設けられる。
トラバーサーにはイベントステージが設けられ、ライブショーや吹奏楽の演奏、鉄道部品のオークションなどが行われる。毎年多くの鉄道愛好家や家族連れで賑わう。場内で使用される機材のほとんどが検修場の屋内にあるため、雨が降っても一部の屋外イベントを除きほぼ予定通り開催する事ができる。
2021年・2022年は感染症対策として入場を完全事前申込制としたほか、2021年の「『52 席の至福』体験乗車 特別カフェタイム」を除いて会場内での食事を禁止するなどの措置がとられた[17]。
アクセス
臨時列車
- イベント当日には検修場内直通の臨時列車の他、飯能駅 - 高麗駅間で臨時列車が運転される。なお運賃計算の関係上[注 7]、検修場直通の電車は東飯能駅は通過となる。
- 直通電車は検修場では10両分の長さのある検車線に入り、一部の扉より乗降する。改札口は検修場内に臨時で設けられる。
- なお、このイベントのために設けられる臨時改札口は、西武秩父線等で使用されているものと同じ簡易ICカード改札機となる。
2021年・2022年
- 会場直通のツアーが2運行(各1往復)と、飯能 - 高麗間を往復する臨時列車[注 8]のみ運転された[18][19]。
- 2021年は特急電車が高麗駅に臨時停車したほか、高麗駅では臨時改札口が設けられた。
2019年までの臨時列車
- 復路
- 検修場発の直通列車として飯能行きが3本運転される。なおそのうち2本は飯能から急行池袋行き定期列車となる[注 14]。
- 高麗駅から飯能行きの臨時列車が複数本運転される[注 13]。
過去の臨時列車
- 第一回となる2002年は、飯能駅発の検修場行きと、検修場発の飯能行きを運転[20]。101系の10両編成が充当された。(往路:飯能→検修場1本 復路:検修場→飯能1本)
- 2003年は、往路の飯能駅発が2本に増加(2本目は準急飯能行きの折り返し)、復路の飯能行きも3本となる[21][注 19]。(往路:飯能→検修場2本 復路:検修場→飯能3本)
- 2004年からは、往路のうち1本が西武新宿発の急行とされた[22][注 20]。(往路:飯能→検修場1本、新宿→検修場急行1本 復路:検修場→飯能3本)
- 2005年の日曜日に限り、往路の西武新宿発が池袋発とされた[23]。(往路:飯能→検修場1本、池袋→検修場急行1本 復路:検修場→飯能3本)
- 2011年に限り、復路の3本は往路とは別の車両が使用された[注 21]。
- 2012年に限り、往路に池袋発の快速急行が運転され、復路も3本のうち1本が池袋行き快速急行となった[注 22]。(往路:飯能→検修場1本、池袋→検修場快急1本 復路:検修場→飯能2本、検修場→池袋快急1本)
- 2013年からは、往路の西武新宿発が廃止、新たに元町・中華街発、所沢発の快速急行が設けられる。前述の通り元町・中華街発は小手指までの定期電車を延長したもの、また所沢発は立川真司によるパフォーマンスが行われる。なお本年に限り、復路に急行池袋行きが運転されている。(往路:飯能→検修場1本、元町・中華街発(小手指)→検修場快急1本、所沢→検修場快急1本 復路:検修場→飯能3本 検修場→池袋急行1本)
- 2014年からは、復路は飯能行き3本に戻った[注 23]。(往路:飯能→検修場1本、元町・中華街発(小手指)→検修場快急1本、所沢→検修場快急1本 復路:検修場→飯能3本)
- 2015年に限り、池袋→飯能で開業時の12駅にのみ停車する臨時列車が運転され、飯能駅で始発の検修場行きと接続がとられた。
- 2016年からは、往路の飯能発が廃止され池袋発の快速急行となった他、復路の飯能行き3本のうち最初の2本が飯能からそのまま池袋行き定期列車に充当されている[24]。(往路:池袋→検修場快急1本、元町・中華街発(小手指)→検修場快急1本、所沢→検修場快急1本 復路:検修場→飯能3本)
徒歩
- 高麗駅から徒歩での来場も案内されており、2014年からは徒歩で来場される方にのみ入場時にオリジナルグッズの配布も行われている[注 24]。
- なお2021年に関しては12:30から14:30の間に高麗駅から帰る際に、会場図[注 25]を提示すると改札口にて「レッドアロークラシックオリジナルマスクケース」がプレゼントされる形とされた。
バス
- 西武バスによる飯能駅(2013年までは宮沢湖駐車場)からの無料直通送迎バス[注 26]も運行される[注 27]。バスは行先表示機に「西武・電車フェスタ」とされる。
- なお2021年に関しては入場券を所有している方のみ乗車できることとされた他、「バスでの移動を必要とするお客さまに優先してご利用いただくため、なるべく高麗駅から徒歩でのご来場をお願いいたします。」とのアナウンスがされた。
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イベント時の様子
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臨時改札口
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検車線の直通臨時列車
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ISO活動
- 当検修場の周辺は住宅地や豊富な緑を有する山々に囲まれているため、騒音対策および臭気・粉塵対策を講じ、機器の動力の電力化や作業の効率化を図っている事で環境に優しい工場である事をPRしている。その取り組みの一環として2000年12月22日に環境マネジメントシステムに関する国際規格ISO 14000シリーズの「ISO 14001」の認証を取得している[4]。
脚注
注釈
- ^ 2012年度からは20000系以降の車両を除く
- ^ この際、長編成は一度編成を分割する。
- ^ 小手指車両基地・南入曽車両基地・玉川上水車両基地(多摩湖線車両)・武蔵丘車両基地(4000系)
- ^ 現在は4000系のみ
- ^ 本線側の車両と多摩川線の車両は甲種輸送による車両の交換が定期的に実施されており、全般・重要部検査を実施する時期には本線側常駐となるように予定が組まれている。
- ^ 一部は外注(作業は当検修場内)である。
- ^ 検修場までの運賃は東飯能駅までの運賃と同一とされるため。
- ^ 2021年は4000系、2022年は101系を使用。
- ^ 池袋発の快急は2016年から、所沢発の快急は2013年から運転。
- ^ 所沢発が設定された2013年より
- ^ 「Fライナー」の名称は2016年のダイヤ改正から使用される。
- ^ 2013年から運転。
- ^ a b 2015年から運転。4000系を使用する。
- ^ 2016年から
- ^ 2005年の土曜日は西武新宿駅から往復。
- ^ 2004年と、2005年の土曜日はスーパーベルズ。
- ^ 2011年、2012年のプレスリリースでは「電車フェスタ号は今回は運転いたしません」と明記されていたが、2013年以降は案内されていない。
- ^ 30000系にスマイルトレインHMを取り付けて運用された2008年の復路3本、銀河鉄道999ラッピング車両が充当された2012年の快急を除く。
- ^ 全列車が9000系10両で運転、往路2本目と復路の3本は同じ車両が充当。
- ^ 復路の3本は西武新宿発の車両が使用された。
- ^ 1編成目:往路1 2編成目:往路2 3編成目:復路1 - 3という形で運用された。
- ^ また車両運用も異なり、往路の1本目を復路の2本目に充当、往路の2本目を復路の1本目に充当とされた。
- ^ なお車両運用が変更され、復路の3本はそれぞれ別の車両が充当されるようになった。
- ^ 9時 - 12時の間に高麗駅で下車し、徒歩で来場者した方に先着でクリアファイルが配布される。
- ^ 入場時にクリアファイルと共に配布された。なお例年行われる会場図PDFの公開はなかった。
- ^ 2010年までは直通無料送迎バスと称されていた。
- ^ 2002年の第一回は国際興業バスが運転。また、2015年も一部は同社の車両を使用。
出典
関連項目
外部リンク