公益財団法人日本オリンピック委員会(にほんオリンピックいいんかい、英: Japanese Olympic Committee, JOC)は、国際オリンピック委員会(IOC)に承認された日本の国内オリンピック委員会(National Olympic Committee, NOC)。
概要
JOCはIOCの日本での窓口として、また、日本におけるオリンピック・ムーブメントを推進する組織としてオリンピック競技大会やアジア大会などの国際総合競技大会への選手派遣事業を行う。1911年の大日本体育協会の設立と共に、長く日本体育協会(現:日本スポーツ協会)の一委員会であったが、1989年8月7日、財団法人日本オリンピック委員会として、独立した法人となった。2011年4月1日には公益財団法人へと移行した[1]。
オリンピックのメダリストに報奨金を出すなど、選手強化に努めてきた。例えば、事業の一環として「がんばれ!ニッポン!」キャンペーンなどが挙げられる。また、オリンピック・デーランやオリンピックコンサートなども行っている。
JOCが2005年に2016年のオリンピック招致を主要都市に呼びかけた。その呼びかけに、福岡県と東京都が応じた。2006年8月30日、22票対33票で東京都がオリンピック招致日本代表都市に選ばれ、2007年7月に立候補都市の申請が終わった。
オリンピックの日本選手団への報奨金総額は、2004年のアテネ五輪の1億5600万円が最高であり、次いで2012年のロンドン五輪の1億4200万円であった(2012年現在)[2]。なお、JOCの報奨金については1993年までは所得税における課税対象となっていたが、1992年のバルセロナ五輪に出場した競泳選手の岩崎恭子が金メダルを獲得したことを契機として、1994年に租税特別措置法が改正され、財務大臣が指定するものについては非課税となった[3]。
また、加盟団体の若手指導者を指導技術研鑽のために国外に派遣するスポーツ指導者海外研修事業を行っている[4]。
JOCでは理事会などの場において、五輪運動に貢献した関係者(理事など)が亡くなった際、黙祷するという慣習があるという[5]。
沿革
役員
- 嘉納治五郎(1911年 - 1921年)
- 岸清一(1921年 - 1933年)
- 大島又彦(1936年 - 1937年)
- 下村宏(1937年 - 1942年)
- 平沼亮三(1945年 - 1946年)
- 東龍太郎(1947年 - 1958年)
- 津島寿一(1959年 - 1962年)
- 竹田恒徳(1962年 - 1969年)
- 青木半治(1969年 - 1973年)
- 田畑政治(1973年 - 1977年)
- 柴田勝治(1977年 - 1989年)
歴代会長
- 堤義明(1989年 - 1990年)
- 古橋廣之進(1990年 - 1999年)
- 八木祐四郎(1999年 - 2001年)
- 竹田恆和(2001年 - 2019年)
- 山下泰裕 [12](2019年 - )
役員一覧
令和5・6年度(2023年6月29日現在)[13]
加盟競技団体
※印は日本スポーツ協会非加盟。野球は日本野球連盟が加盟。
☆印はオリンピック非正式競技。
★印はアジア競技大会非正式競技。
正加盟団体
アスナビ
JOCの仲介による就職支援ナビゲーションシステムで、2010年秋にスタート。オリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技を安心して続けることができる環境を作るため、企業側のサポートを呼びかけるのが目的。2012年10月時点で、以下の11人の仲介に成功している。
JOCとJPCは、2014年8月6日パラリンピックを目指す強化指定選手の就職支援する協定を結んだと発表。JOCが仲介役となりオリンピックを目指すトップ選手と企業の橋渡しをする制度アスナビに障害者選手も登録すると発表。JOCとJPCの協定は初[14]。
2016年5月の時点で、企業に採用された選手が100人を突破したと報道された[15]。
報奨金
オリンピック競技大会のメダリストに対しては、日本オリンピック委員会から、報奨金が支給されている[16]。
- 金メダル:500万円 ※2016年リオ大会より、300万円から引上げ
- 銀メダル:200万円
- 銅メダル:100万円
また、これに加え、日本オリンピック委員会の加盟競技団体からも、報奨金を支給している場合がある。
国としては、メダリストの栄誉を称える観点から、報奨金について所得税と住民税を非課税とするとともに、メダリストへの顕彰を行っている[17]
[18]
[19]。
批判
2010年バンクーバーオリンピックにおける日本勢の不振に関して長野オリンピック金メダリストの清水宏保が、コーチやトレーナーではなくJOCの役員に金が使われている現状を「お金の使い方が逆でしょう」と痛烈に批判している[20]。フジテレビ「とくダネ!」では、派遣された選手の数より役員の数が多い点や[注 3]、選手をエコノミークラスで移動させている点を指摘、司会の小倉智昭は「お金の使い方が変」と述べている[21][22]。
産経新聞は本来、JOCは国の圧力によりボイコットしたモスクワオリンピックを機に国との結び付きが強い日本体育協会(現、日本スポーツ協会)から独立したにもかかわらず、現状、国への依存度が高く、国の支援なしでは選手強化もままならないとし、2018年に続出した国内競技団体の不祥事でも、統括団体であるJOCは事態収拾へ主体的に動こうとせず国内競技団体が守るべき規範としてスポーツ庁が策定を進める「ガバナンスコード」も、政府関係者の声を紹介する形で官主導であると指摘している[23]。
事故と訴訟・諸問題
関連項目
脚注
注釈
- ^ 「1991年に1998長野五輪招致が成功した後にも、『ジャパンオリンピックマーケティング』(JOM)という会社を(電通の排他的独占から脱して)JOCプロパーで五輪マーケティングをやるための組織として作ろうとしました。五輪ビジネスに興味を持っていた三菱商事を巻き込んでね。でも、結局は電通が猛烈に巻き返して、三菱商事と痛み分けの形で株主に入ってしまいました」などと、JOC元参事の春日良一は述べている[9]。
さらに、2016年東京招致委が抱えた6.9億円の赤字を電通が実質的に負担したり、「電通は招致段階から資金面でも招致委員会(ないしJOC[10])と一体化した存在だ」などと、国際的イベントプロモーターの康芳夫は述べている[11]。
その他、「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会#招致活動に関するトラブル」も参照。
- ^ 日本オリンピック委員会は1911年の創立以来、1989年に文部大臣より財団法人認可を受けるまでは委員長が最高責任者であった。
- ^ 日本は選手団94人に対し役員は111人。韓国は選手団が45人で役員は37人。日本は金0、銀3、銅2なのに対し、韓国は金6、銀6、銅2、合計14個のメダルを獲得した。
出典
参考文献
外部リンク