ケビン・ナッシュ (Kevin Scott Nash 、1959年 7月9日 - )は、アメリカ合衆国 のプロレスラー 。ミシガン州 出身。
ディーゼル (Diesel )のリングネーム でも知られ、WWF 時代はビッグ・ダディ・クール (Big Daddy Cool )、WCW 時代はnWo の中心メンバーとしてビッグ・セクシー (Big Sexy )などの異名で呼ばれた。
来歴
学生時代はバスケットボール 選手として活動。テネシー大学 在籍時には巨体を生かしてセンター に君臨し、NCAA スウィート16 進出に貢献した。
テネシー大学卒業後、ドイツ のプロバスケットリーグであるProAのギーセン・フォーティシクサーズ に入団。2年間プレイしたが、膝を故障して退団することとなった。
WCW(1990-1993)
プロバスケット選手としての引退後、当時のアメリカのメジャープロレス団体だったWCW と契約。トレーニング施設のパワープラント で基礎を学び、1990年 8月24日、ハウス・ショー においてドクターX (Dr. X )の名義でデビュー。ビッグバン・ベイダー と対戦するが敗退した。その後、リングネームをスティール (Steel )と改め、ブレイドことアル・グリーンとのタッグチーム 、マスター・ブラスターズ (The Master Blasters )を結成。9月5日の "Clash of the Champions #12" では、ブラッド・アームストロング &ティム・ホーナーのライトニング・エクスプレスを5分足らずで一蹴した[ 1] 。以降、スティーブ・アームストロング &トレイシー・スマザーズ のヤング・ピストルズと抗争し、NWA USタッグ王者チームだったスタイナー・ブラザーズ (リック・スタイナー &スコット・スタイナー )にも挑戦したがタイトル奪取には至らず[ 2] 、1991年 3月にチームを解散。
その後はシングルプレイヤーとなり、5月19日のPPV "SuperBrawl" において、オズの魔法使い をモチーフにした新キャラクターのオズ (Oz )に変身。ケビン・サリバン をマネージャー に迎え、ティム・パーカーから秒殺勝利を収めた[ 3] 。10月、負傷欠場したエル・ヒガンテ の代打として新日本プロレス にザ・グレート・オズ (The Great Oz )のリングネームで初来日、獣神サンダー・ライガー ともタッグを組んでいる[ 4] 。
その後はカジノの用心棒ビニー・ベガス (Vinnie Vegas )にギミックを変更し、1992年 1月21日の "Clash of the Champions #18" においてトーマス・リッチ に56秒で勝利[ 5] 。以後、ミスター・ヒューズ との用心棒コンビやダイヤモンド・ダラス・ペイジ とのベガス・コネクション (The Vegas Connection )などで活動[ 6] 。5月には新日本プロレスに再来日し、同月17日に大阪城ホール にて橋本真也 と対戦した[ 7] 。
1992年はダスティン・ローデス のUS王座 やリッキー・スティムボート のTV王座 にも挑戦したが[ 8] 、ミッドカードのポジションから脱することはできず、1993年 6月にWCWから退団した。
WWF(1993-1996)
1994年
1993年 8月、ショーン・マイケルズ のボディーガード 、ディーゼル (Diesel )としてWWF に初登場。1994年 4月13日、レイザー・ラモン を下してWWFインターコンチネンタル王座 を獲得[ 9] 。8月28日にはマイケルズとのコンビでザ・ヘッドシュリンカーズ(サムゥ &ファトゥ )からWWF世界タッグ王座 を奪取した[ 10] 。
その後、同年11月23日のサバイバー・シリーズ1994 にてマイケルズと仲間割れし、タッグ王座を返上してベビーフェイス に転向[ 11] 。3日後の11月26日、ニューヨーク のマディソン・スクエア・ガーデン にてミスター・ボブ・バックランド を破り、WWF世界ヘビー級王座 を獲得[ 12] 。以降、1995年 11月19日のサバイバー・シリーズ1995 でブレット・ハート に敗れるまで、前王者バックランド、マイケルズ、オーエン・ハート 、ジェフ・ジャレット 、キングコング・バンディ 、バンバン・ビガロ 、サイコ・シッド 、キング・メイブル 、ヨコズナ 、ジャン=ピエール・ラフィット 、ウェイロン・マーシー などを挑戦者に、約1年間王座を保持した[ 13] 。これはハルク・ホーガン 以降のWWF王座の最長保持記録となっている。また、リング外ではマイケルズ、ラモン、1-2-3キッド 、ハンター・ハースト・ヘルムスリー らで構成されたグループ、クリック の一員となって活動した。
しかし、WCWから巨額の契約金と年俸を提示されたため、1996年 5月、まだ契約期間が残っているにもかかわらず、レイザー・ラモンと共にWWFを退団。WWFでの最後の試合(5月19日、マディソン・スクエア・ガーデンにおけるマイケルズとのスチール・ケージ・マッチ )は、クリックのメンバーがベビーフェイスとヒールの敵対関係を無視してリング上で抱擁を交わすという掟破りの事件となり[ 14] 、通称「カーテンコール 」として知られている。
WCW(1996-2001)
1996年 7月1日、マンデー・ナイトロ にてラモンとのジ・アウトサイダーズ (The Outsiders )としてWCWに参戦。当初はビンス・マクマホン の指示でWCWを潰しに来たと称し、初登場時は放送ブースにいたエリック・ビショフ に「WWFの悪口を言い触らしているのはてめぇか!」と迫り、ビショフをブースから引きずり出して通路にジャックナイフ で叩きつけた。
これはビショフの考えた『WWF vs WCW』というアングル に基づいてのものだった。さらに盟友のマイケルズ、ヘルムスリー、そして1-2-3-キッドことショーン・ウォルトマンの参戦を匂わす発言もしていたが、結局このアングルに関連して移籍してきたのはウォルトマンと、既にセミリタイアしていたジャック・ルージョー 、契約だけで出場機会がなかったカール・ウエレ だけだった。これはWWFが様々な対抗処置を講じた結果である。また、『ディーゼル』『レイザー・ラモン』のリングネームはWWFが商標登録 していたために、アウトサイダーズはそれぞれリングネームを本名の『ケビン・ナッシュ』『スコット・ホール』に戻さなければならなかった。
結局『WWF vs WCW』はアウトサイダーズ参戦から1ヶ月足らずで頓挫。WCWは急遽アングルを練り直す事態に陥ってしまう。そこで新たに考え出されたアングルがnWo である。これは当時WCWで浮き上がっていたホーガンが、トップ復帰を狙ってナッシュとホールを抱き込んで結成したものだったとされる。以後、nWoはライバル団体WWFを廃業寸前に追い込むまでの一大ムーヴメントを巻き起こす。
nWo結成後、メンバーが拡大していく中でナッシュはホールとのアウトサイダーズで活動し、WCW世界タッグ王座 を保持していたハーレム・ヒート (スティービー・レイ &ブッカーT )と抗争を展開。10月27日のHalloween Havoc 1996での王座戦に勝利してベルトを奪取した。
1997年 3月5日、新日本プロレスのStrong Style Evolution in 大阪ドームに参戦。ホール&蝶野正洋 と組んで武藤敬司 &スタイナー・ブラザーズから勝利を収めた。
9月1日、ナイトロにて復活したフォー・ホースメン に対して、コナン 、バフ・バグウェル 、シックス と共にホースメンに扮して挑発し、挑戦状を叩きつける。14日のFall Brawl 1997にはコナン、バグウェル、シックスとのチームnWoで出場し、ホースメン(リック・フレアー 、カート・ヘニング 、クリス・ベノワ 、スティーブ・マクマイケル (英語版 ) )とのウォー・ゲーム に勝利した。
1998年 5月、nWoは二派に分裂。ナッシュはnWoウルフパックを結成し、ホーガン率いるnWoハリウッドと抗争。12月27日、スターケード1998 にてビル・ゴールドバーグ と反則裁定一切なしの対決を行い、セキュリティースタッフに扮したホールのスタンガンでの攻撃によるアシストで勝利。ゴールドバーグの連勝記録を173勝で終止符を打ったのと同時にWCW世界ヘビー級王座 を獲得した。
1999年 1月4日、ホーガンとWCW世界ヘビー級王座戦を行い、WCWを崩壊に導いたフィンガーポーク・オブ・ドゥーム にてベルトをホーガンへと譲り、nWo復活を宣言。
フィンガーポーク・オブ・ドゥームの一件によりnWoは価値を落とし、復活したもののすぐにメインストーリーより除外される。ナッシュはWCW世界ヘビー級王座戦線で活動し、2000年 1月にはWWF時代の旧敵ブレット・ハート、シッド・ビシャス 、ジェフ・ジャレットなどと抗争を展開した。10月よりWCWパワープラント の後輩である若手ユニット、ナチュラル・ボーン・スリラーズ の総帥になるも、造反してWCWを乗っ取ろうとしたスリラーズに対抗してダイヤモンド・ダラス・ペイジとジ・インサイダーズ (The Insiders )を結成し、WCW世界タッグ王座を巡り抗争した。
2001年 1月からはスコット・スタイナーとWCW世界ヘビー級王座を争い、2月18日のSuper Brawl Revengeにて引退を懸けた王座戦3本勝負を行うが敗退。そのまま引退することになったが、WCWも3月にWWFに買収されて崩壊を迎えた。
WWE(2002-2003)
WCW崩壊後、復帰する情報などもなく沈黙を貫いていたが2002年 2月17日、ノー・ウェイ・アウト2002 にてホーガン、ホールと共に登場し、オリジナルnWoを再結成した。3月11日のRAW にてホーガン&ホールと組んでストーン・コールド・スティーブ・オースチン &ザ・ロック と3vs2によるハンディキャップマッチを行い勝利するが、直後にホーガンはnWoから脱退。代わりにXパック を迎えてホーガンと抗争を展開するかと思われたが膝の故障により離脱。7月に復帰するも大腿二頭筋 断裂 という重傷を負い再び長期欠場となる。
2003年 4月に復帰。6月よりトリプルH とWWE世界ヘビー級王座 を巡りストリートファイト やヘル・イン・ア・セル でアピールしたものの頚部の故障が悪化し、再び満身創痍な状態に陥ってしまいテスト に秒殺敗戦、クリス・ジェリコ とヘアーvsヘアー・マッチ で敗戦して髪を切られるなど精彩を欠き、8月24日のサマースラム2003 のWWE世界ヘビー級王座争奪エリミネーション・チェンバーマッチを最後に欠場。契約満了に伴いWWEから退団した。
TNA(2004-2010)
2008年
WWE退団後、2004年 5月15日に日本のハッスル に参戦。ホールとジ・アウトサイダーズを再結成。橋本真也 & 小川直也 と対戦するが敗戦した。
11月よりホールと共にTNA と契約を交わし入団。12月5日、Turning Point 2004にてホール&ジャレットとキング・オブ・レスリング (Kings of Wrestling )なるユニットを結成してジェフ・ハーディー &AJスタイルズ &ランディ・サベージ と対戦するが敗戦。
2005年 2月13日、Against All Odds 2005にてNWA世界ヘビー級王座 を保持するジャレットに挑戦するも敗戦。
2006年 6月、アレックス・シェリー &オースチン・スター &ジョニー・デバイン の3者で結成されたユニットであるパパラッチ・プロダクション (Paparazzi Productions )の用心棒となり、クリス・セイビン &ジェイ・リーサル と抗争を展開。
2007年 11月11日、Genesis 2007にてTNA世界ヘビー級王座 を保持するカート・アングル と組んでブッカーT & スティング と勝者がベルトを獲得できる変則タッグマッチを行い、ナッシュがフォールしようとしたところにアングルが割って入り王座を防衛されてしまう。この一件によりアングルとは敵対関係になり、エリック・ヤング 、サモア・ジョー 、クリスチャン・ケイジ と共闘してアングル率いるアングル・アライアンスと抗争を展開。
2008年 、サモア・ジョー、スタイルズといった中堅レスラーの台頭に危機感を覚え、10月23日、iMPACT! にてメインイベント・マフィア (Main Event Mafia )を結成。アングルが中心となってスティング、ブッカーT、スコット・スタイナーといったレジェンドレスラーが集結。試合ではスティングと組んでAJスタイルズ&サモア・ジョーから勝利してリングを占拠した。
2009年 1月4日、新日本プロレスのレッスルキングダムIII に参戦。メインイベント・マフィアとしてアングルと共に来日して蝶野&長州力 と日米レジェンドタッグを結成し、カール・アンダーソン &石井智宏 &飯塚高史 &ジャイアント・バーナード との8人タッグマッチで勝利を収めた。
3月21日、ウィスコンシン州 を拠点とするインディー団体であるGLCW(Great Lakes Championship Wrestling)のTwo Words... Too Sweetにてホールと組んでジ・アウトローズ (BGジェイムス &キップ・ジェイムス )とnWo vs D-ジェネレーションX を実現するも試合途中にホールを裏切り敗退。7月19日、Victory Road 2009にてTNAレジェンズ王座 を保持するスタイルズに挑戦して勝利し、ベルトを奪取した。
2010年 1月1日、TNAに復帰したホール、シックス・パックとTNA版nWoとも言えるザ・バンド (the BAND )を結成。5月4日、ホールと組んでヘルナンデス と喧嘩別れして孤立していたTNA世界タッグ王者であるマット・モーガン に挑戦して勝利し、ベルトを奪取するが6月にホールはTNAより解雇となる。エリック・ヤングやスティングを加入させて巻き返しを図るも10月10日、TNA年間最大のPPVであるバウンド・フォー・グローリー2010 を最後にザ・バンドは終焉を迎え、ナッシュも契約満了に伴いTNAから退団した。
WWE(2011)
2015年(Hall of Fame)
2011年 、WWE とレジェンド契約を交わし再入団。1月30日のロイヤルランブル2011 に出場。WWF時代のリングネームであるディーゼル 名義で32番目にサプライズ登場を果たした。
5月14日、カナダ オンタリオ州 を拠点にするインディー団体であるCWI(Championship Wrestling International)のBrawl At The Bush IIに参戦し、CWIヘビー級王座を保持するスコット・スタイナーに挑戦するが敗戦。
8月12日、WWFやWCWに所属経験のあるICP が主宰するJCW (Juggalo Championship Wrestling)のLegends & Iconsに参戦。ホールをセコンドに従え、Xパックと組んでjWo (Juggalo World Order )を結成してニュー・エイジ・アウトローズに勝利。
8月14日のサマースラム2011 では、ジョン・シナ を破りWWEヘビー級王者となったCMパンク を急襲。そこへミスター・マネー・イン・ザ・バンク としてWWE王座 への挑戦権を持つアルベルト・デル・リオ が登場しパンクをフォール。デル・リオの王座戴冠を援護する形となった。
10月15日、バージニア州 を拠点とするAWE(Awesome Wrestling Entertainment)のNight of the Legendsに参戦。ダイヤモンド・ダラス・ペイジと組んで往年のベテランタッグであるロックンロール・エクスプレス (リッキー・モートン &ロバート・ギブソン )と対戦するがノーコンテストに終わった。
12月18日、PPVのTLC 2011 にてクリック時代の盟友トリプルHとスレッジハンマー・ラダー・マッチ で対戦するが、ハンマーで顔面を一撃され敗退した。
インディー団体(2012-)
2012年 1月、WWEとの契約が満期となり退団。5月26日、JCWのHatchet Attacksに参戦。Xパックと組んでヘッドバンガーズ(モッシュ&スラッシャー)に勝利。同年9月23日、全日本プロレス の横浜文化体育館 大会に出場。nWoで共闘した武藤敬司 とタッグを組み、真田聖也 &太陽ケア と対戦。得意技のジャックナイフで真田を沈め、日本のファンに健在ぶりをアピールした[ 15] 。
2013年 は、3月にBTW(Big Time Wrestling)のSpring Tour 2013に参戦、nWoで共闘したバフ・バグウェル とタッグを組んでデルフォンゾ・ブラザーズ(エディ・デルフォンゾ&トニー・デルフォンゾ)と一週間に5試合を行い、全戦全勝した。7月13日にはFSW(Future Stars Of Wrestling)にて久々の王座戦を行い、FSWヘビー級王者のタイショーン・プリンスに挑戦するが反則負けを喫した。9月21日にはNEW(Northeast Wrestling)にてスコット・ホールをセコンドに従え、スコットの息子であるコーディ・ホール とタッグを組んでアウトキャスト・キラーズ(ディアブロ・サンティアゴ&オマーン・トゥーガ)に勝利した。
2014年 1月26日、WWEのロイヤルランブル2014 にて14番目に登場。ジャック・スワガー を脱落させるがロマン・レインズ に落とされ9番目の退場者となった。
2015年 3月28日、WWE殿堂 に迎えられる。WWF時代の盟友であるマイケルズがインダクターを務め、最後はクリックのメンバーが登場して抱擁を交わした[ 16] 。
2019年 12月、今度はnWoとして2020年度のWWE殿堂入りを果たした[ 17] 。
その他
2010年 より自身が主宰するインディー団体であるBBWF(Bad Boys of Wrestling Federation)を設立している。
2014年 12月24日、息子であるトリステン・ナッシュに対して虐待の家庭問題により逮捕。後にトリステンが妻であるタマラに対して冒涜行為をした為に手を出した事が発覚。両者共に軽犯罪ではあるがすぐに釈放されたものの、ナッシュはWWEよりレジェンド契約を停止された[ 18] 。
得意技
フィニッシュ・ホールド
ジャックナイフ・パワーボム
自身の長身を利用した投げっ放しのパワーボム。ナッシュの場合は、通常のパワーボムのように体を前屈させず、相手を頭上まで担ぎ上げ、2メートル以上の落差から投げ捨てる。
ザ・ジャイアント を持ち上げたこともあるが、最終的には失敗して首からマットに突き刺してしまった。
打撃技
エルボー
バック・エルボー
主にカウンターなど使用。
ナックルパート
ビッグ・ブート
クローズライン
主にカウンターで使用。
投げ技
スープレックス
スーパープレックス
ベリー・トゥー・バック・スープレックス
抱え上げ式バックドロップを使用。
サイドウォークスラム
スネーク・アイズ
チョークスラム
入場曲
WCW
Ride the Bus
Rockhouse
Ready or Not
Wolfpac
WWF / WWE
Diesel
Diesel Blues
Jackknife
Rockhouse
TNA
Dre
Strut
Main Event Mafia
Saturn
The Band
タイトル歴
WWF世界タッグ王者時代
WWF / WWE
WCW
TNA
出演
映画
脚注
関連項目
外部リンク