『This War of Mine』は、戦争状況を市民として生き延びるサバイバルゲーム(英語版)であり、ポーランドのゲーム開発会社の11 bit studios(英語版)によって開発、販売された[3]。本作は戦争をテーマとする作品だが、ありきたりの戦争ゲームとは異なって主人公は兵士ではなく、一般市民であり、プレーヤーは敵軍に包囲された街の一角で必死に生き残ろうとする人々となってプレイし、狙撃手や盗賊を警戒しつつ乏しい物資をやりくりし、しかも状況によっては仲間を犠牲にしながらも生き抜かなければないという内容のものであり、かなり重いテーマのサバイバルシミュレータである[4]。日々の危険から生き延びるために、キャラクターは難しい決断をたくさんしなければならない。ゲームでの決断に応じて、それぞれのキャラクターに様々なエンディングが用意されている。『This War of Mine』は2014年11月にMicrosoft Windows、OS X、Linux向けに発売された。Androidへの移植版は2015年7月14日に発売され、iOSへの移植版は翌日(7月15日)に発売された[5]。拡張パック『This War of Mine: The Little Ones』はPlayStation 4とXbox One向けに2016年1月29日に発売され[2]、Microsoft Windows向けに2016年6月1日に発売された。ゲームすべての内容を含むバージョン『This War Of Mine: Complete Edition』はNintendo Switch向けに2018年11月27日に発売された[6]。
『This War of Mine』は、戦時下で生き抜くことをテーマにした、道徳的・感情的にかなり重い内容をプレーヤーに突きつけるゲームである。プレイヤーは、包囲された架空の市であるGraznaviaのポゴレン(Pogoren)の、その場しのぎの壊れた家で市民の生存者たちを操作する。ゲームの主な目標はプレイヤーが収集できる道具や資材を使って戦争中に生き続けることである。プレイヤーの操作するキャラクターのうち大半は軍隊の経験やサバイバルの経験がなく、生き続けるためにプレイヤーによる定期的な介入を必要とする。プレイヤーは停戦の宣言までキャラクターの健康、飢え、気分のレベルを維持しなければならない。プレーヤーは戦争がいつまで続くのか、いつ停戦となるか予想がつかない状況でプレイしなければならず、停戦宣言は無作為に選ばれた継続時間の後に発生する。
ゲームは1人から4人の生存者がいる状態で始まる。プレイヤーは生存者の行動に影響を与えることができる。プレイヤーが行う行動によりそれぞれの生存者のエンディングは変わる。それぞれのキャラクターにはプレイヤーを助けたり、妨げたりするような性格上の特性が1つないし2つあり、さらに、戦闘や動作の速度などに影響する様々な隠しステータスがある。常に役立つ特性もあるが、特定の日に役立つ特性もある。例えば、Brunoという名前のキャラクターには「料理上手」という特性があり、食事を作る際にプレイヤーは燃料と水の使用量を減らすことができる。プレイヤーが操作できるキャラクターは合計で12人いる[8]。DLC『This War of Mine: The Little Ones』では子どもの生存者が追加される可能性がある。子どもの生存者は自分の身を守ることができないか、避難所を維持するために最初に必要とされる仕事をすべて行うことができない。その上、抑うつ状態になるのを防ぐため、子どもの生存者には絶えず注意を払う必要がある。しかし、料理、水の濾過、作物の栽培のようなちょっとした雑用が行えるように他の生存者が子どもの生存者に教えることができる。子どもの生存者は一度大人と親しくなると、夜間にその大人と同じベッドで眠ることができ、2人に別々のベッドを用意する必要がなくなる。
本作の開発元である11 bit studiosが拠点を置いている場所はポーランドにあり、開発者たちにとって母国語はポーランド語で、彼らにとって英語はあくまで外国語であり[4](英語に疎いので)、彼らは当初、家の玄関先まで戦争が迫るという意味にするつもりで、本作に英語で「War of Mine」という題名を付けていた[4]。ところが、英語に詳しい者から「これでは『炭鉱(Mine)の戦争』となる」という指摘が寄せられ、「This War of Mine」に変更された[4]。11 bit studiosのマーケティング部門代表のPatryk Grzeszczukは、Game Developers Conferenace 2017にて、「英語としての語感はちょっと変だが、「戦争が迫れば、戦う人もいれば、殺される人もいる。生き残ろうとする人もいる」、あるいは「人は誰もが兵士ではない」といった事実を、暗に主張するタイトルになった」と振り返っている[4]。
2014年11月にゲームの違法コピーがオンラインで不正に入手できるようになった。11 bit studioは使用可能なSteamキーの数字を公表する対応をとり、ダウンロードをした人が友達とゲームを共有し、金銭的に余裕があればゲームを購入するよう勧めた[4][10]。
3周年を記念して、11 bit Studiosは2017年11月14日に3つのストーリーDLCのうち1つ目『Fathers Promise』を発売した。2つ目のDLC『The Last Broadcast』は2018年11月14日に発売された。2018年11月に11 bit StudiosはNintendo Switch専用の『This War Of Mine: Complete Edition』を発表し、同月後半に発売した。『This War Of Mine: Complete Edition』はすべてのコンテンツを1つのゲームに集約しており、最初のゲーム、アニバーサリーエディション『This War of Mine: The Little Ones』、3つのエピソードから成るDLC『Fathers Promise』、『The Last Broadcast』、『Fading Embers』を含む[6]。パッケージ版はNintendo Switch向けで、世界同時発売日にヨーロッパにおいてDeep Silverから入手できる[14]。
『Digital Fix』はPC版を10点中9点とし、「道徳的なレンズを通して見ることを選択しようがしまいが、卓越した戦術的サバイバルシステムがあり、このことがゲームを道徳じみた話にならないようにしている。ゲームが描写する出来事は重苦しく、長々と熟考するが、何とかして決着をつけようと努力し、逆境に打ち勝ち、自分のキャラクターを救うために気が付くと何度も戻ってきていた」と述べた[38]。また、『Digital Fix』は『This War of Mine: The Little Ones』のPS4版を10点中8点とし、「PC版の方が良いが、PS4での発売によりこの注目に値するゲームは新たな顧客を得た」と述べた[39]。411Mania gaveはXbox One版を10点中8.5点とし、『This War of Mine』は「直感的な体験で落ち着いたり、経験値を得たり、何かを撃ち殺したりするのが好きな場合に勧めるゲームではない。このゲームはテンポが速いわけではない。実際のところ、このゲームを遊んでもあまり楽しくない。このゲームはほぼ至る所で自分の行動に関してプレイヤーをひどい気分にする。これらすべてを考えても、ゲーム体験についてきわめて重要なものがあるため、このゲームを試しにやってみることを勧める」と述べた[40]。『Digital Spy(英語版)』はPC版を星5つ中4つとし、「問題だらけでも、がれきがすっかり崩れ落ちてきても、人間味にあふれているところが『This War of Mine』を説得力のあるものにしている。再び飛び込んですべてに耐えようとするために必要な最低限の希望を残す」と述べた[31]。『Metro UK(英語版)』はPS4版を10点中7点とし、『This War of Mine』を「戦時中の市民側の様子を示すための、大胆で、大部分は成功した試みで、時折ゲームとして失敗していても、双方向性のドラマとして成功した」とみなした[41]。しかしながら、『Slant Magazine(英語版)』はコンソール版を星5つ中2つとし、『This War of Mine』は「プレイヤーを啓発するという歪んだ試みにおいて、人間の絶望のうちほとんどポルノレベルのものを示すことにしか興味がないように見える」と述べた[32]。
ポーランドの首相府は2020年に『This War of Mine』がポーランドの高校で2020–2021年度[43]の推薦図書一覧に追加されると公表した[47][43]。これは学校の推薦図書にコンピューターゲームを追加する世界で初めての取り組みである[47][43]。本作はポーランドで実際に授業でも使われるようになっており、学生たちは授業でPCに向かい本作をプレイする。書籍に書かれた文章をただ読むのとは異なり、戦争状況に身を置いたような状態で主体的に考えられるようになり、ものごとの優先順位、人はいったい何を優先すべきなのかについて自然と考える機会を得ることができる。
^Karol_11bitstudios (July 14, 2015). “This War of Mine is out on Play Store!”. Reddit. December 21, 2015閲覧。 “Hey guys, it's Karol from 11 bit studios, one of the devs behind the game. Currently, the game is dedicated to tablets, but I want to assure you, that we are already working on bringing it to other devices as well, including before mentioned smartphones. Hopefully, soon we'll have some good news about it.”
^Steven McCullough (January 23, 2015). “This War Of Mine Review (PC)”. The Digital Fix. Poisonous Monkey. January 30, 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。April 29, 2018閲覧。