Ryzen (ライゼン[1][2]) はアドバンスト・マイクロ・デバイセズ (AMD) が開発したZenアーキテクチャーを採用するAMD64マイクロプロセッサのシリーズに用いられるブランド名である。「Ryzen」の名前は2016年12月13日のAMD New Horizon サミットで正式に発表された[3][4]。
"Summit Ridge" (サミットリッジ) [5]は、2017年3月2日 (日本では日本時間の3月3日) に発売された初代Ryzen CPUである[6][7]。2015年5月から2016年にかけて段階的に発表[8][9][10]されていたZenアーキテクチャを搭載したCPUであり、GPUは統合していない。「Ryzen」の名前は2016年12月13日[4]、各モデルの詳細は2017年の日に発表された[6]。
Ryzen PROは、2017年6月29日(アメリカ時間)に発表された法人向けCPUのブランド名である。18ヶ月間のプラットフォーム安定性、24か月のプロセッサ提供保証、システム製造元向けの36か月間限定保証などの法人向けサポートに加え、通常のRyzenでは無効化しているセキュリティ関連機能を有効にして差異化を図っている[11]。
"Whitehaven" は、2017年7月13日(アメリカ時間)に「Ryzen Threadripper」として発表されたハイエンド・デスクトップ (HEDT) 向けのCPUである[12]。Summit RidgeのシリコンダイをMCM技術により1つのパッケージに2基搭載しており、各ダイそれぞれメモリーコントローラーが存在するNUMA構造のプロセッサとなっている[13]。
(W)
(MB)
"Raven Ridge" (レイヴンリッジ) は、「Ryzen Desktop Processors with Radeon Vega Graphics」として2018年1月のCES 2018で予告され[31]、同年2月12日 (日本時間では日本時間2月13日) に発売された[32]ZenアーキテクチャのAPUである 。先に発表されていたモバイル版をベースとしており、Summit Ridgeと異なり、Radeon GPUを統合している。一方でPCI Expressのレーン数やL3キャッシュの容量はSummit Ridgeより低い[32]。モデル名は2000番台で、発売時期も"Zen+"世代のPinnacle Ridgeの直前だが、CPUのアーキテクチャ自体は一世代古い。このためRyzen 2000GシリーズなどPinnacle RidgeのRyzen 2000シリーズとは区別して表記される場合もある。
(MHz)
"Raven Ridge" (レイヴンリッジ) は、デスクトップ版より早い2017年10月26日に「Ryzen Mobile」として発表されたZenアーキテクチャのAPUである。これもSummit Ridgeと異なり、Radeon GPUを統合している[35]。モデル名は2000番台で、同じアーキテクチャのデスクトップ版とはズレがある。BGA版のみの提供で、交換可能なソケットでは提供されていない。 2018年第二四半期には、法人向けモデルであるRyzen PRO Mobileも投入された[36]。
"Pinnacle Ridge" (ピナクルリッジ) は、現地時間2018年4月19日9:00に「2nd Generation AMD Ryzen Desktop Processor」[37][注 8]として発表されたSummit Ridgeの後継CPUである[38]。日本では「第2世代Ryzen」[39]やモデル名から「Ryzen 2000 (シリーズ)」[40]などと呼ばれている。
約2か月前に発売されたGPU搭載のRaven Ridgeが代替する格好となったため、Summit Ridgeで用意されていたRyzen 3等の下位クラスは一般販売では用意されない[38]。
内部構造は前世代であるSummit Ridgeの"Zen"から基本的には変わっていないが、プロセスルールがGLOBAL FOUNDRIESの14 nmから12 nmに変更され、動作クロックが大きく向上し、対応するメモリーもDDR4-2933へと拡大された。また、APUに先行して採用されていた自動オーバークロック機能"Precision Boost 2"への対応も行われている。これに併せ上位クラスのTDPがこれまでの95 Wから105 Wに上昇している[38]。
対応マザーボードはPinnacle Ridgeと同時に投入されたX470などの400シリーズと、メーカーがBIOSアップデートを提供すれば従来の300シリーズチップセットを搭載したマザーボードも使用可能である。実際に自作PC市場向けとして発売されたマザーボードは全てのメーカー・機種で対応している。
"Colfax" (コルファックス)は、2018年8月6日に「2nd Gen Ryzen Threadripper」として発表されたハイエンド・デスクトップ (HEDT) 向けのCPUである[41]。前世代と同様に"Zen+"のPinnacle RidgeのダイをMCMにより1つのパッケージに搭載しており、4基搭載で32コア・64スレッドまでの製品がラインアップされている。4基構成のWXシリーズはその構造上の特性から、当初はLinuxでの運用が推奨されていたが[42]、ソフトウェアを導入することで有効となる「Dynamic Local Mode」を使う事でWindows環境でもパフォーマンスが向上するようになった[43][44]。
2020年5月ごろ、Ryzen 5 1600AFが日本市場にて発売された (米国では2019年10月中旬より発売開始) 。モデル名は旧世代の1000番台ではあるが、コアは12 nmの"Zen+"であり、わずかに低いクロックを除けばRyzen 5 2600とほぼ同等のスペックとなる。正式なモデル名はRyzen 5 1600のままであり、パッケージのシール及びCPUの刻印に記載されたOPNの末尾が従来の"AE"から"AF"に変更されているため便宜的に1600AFと呼ばれる。
"Picasso" (ピカソ)[51]は、AMD Next Horizon Gaming E3 2019にて、現地時間2019年6月10日 (日本時間 2019年6月11日) に発表されたRaven Ridgeの後継APUである。先行して発表されたモバイル版と同様に、Zen+アーキテクチャ・12 nmプロセスルールで製造されている。GPUは前世代と同じくVega世代を内蔵している[52]。Raven Ridgeと同じく、モデル名は3000番台で発売日はMatisseと同日であるが、CPUアーキテクチャは"Zen+"世代のため1世代古い。Athlonブランドに3000Gが存在するためか、個別の製品名で呼ばれる事が多い。
"Picasso" (ピカソ) はデスクトップ版より早い2019年1月7日に「2nd Gen. Ryzen Mobile Processor with Radeon Vega Graphics」として発表されたRaven Ridgeの後継APUである[57]。Zen+アーキテクチャ・12 nmプロセスルールで製造されている。日本では「第2世代Ryzenモバイル」[58]などと呼ばれる。これもPinnacle Ridgeと異なり、Radeon GPUを統合している[58]。前世代ではTDP 15 W版しか用意されていなかったが、ゲーミングノートPC向けにTDP 35 W版の「Ryzen 7 3750H/Ryzen 5 3550H」が追加された。2019年10月に発表された、Microsoft Surface Laptop 3 15インチの一般モデルにカスタマイズ版第2世代Ryzen Mobile APUプロセッサーが搭載されている[59]。
また、法人向けモデルのRyzen PRO 3000シリーズも2019年4月に発表された[60]。
"Matisse" (マティス) は、COMPUTEX TAIPEI 2019開幕前日の2019年5月26日にComputex 2019 Keynoteにて、AMDのCEOであるリサ・スーにより「3rd Gen AMD Ryzen Desktop Processor」として発表されたPinnacle Ridgeの後継CPUである[64]。日本では前世代同様に「第3世代Ryzen」[55]や「Ryzen 3000 (シリーズ)」[65]と呼ばれている。
"Zen+"のPinnacle Ridgeからの最大の変更点は、CPUとI/Oの2種類のChipletを組み合わせる設計になったことである。CPU Chiplet「CCD (CPU Complex Die)」は最大8コア16スレッドのプロセッサを搭載しTSMC 7 nm FinFETで製造されており[66]、最大2つのCCDがパッケージングされる[67]。アーキテクチャの改良によりAMDはシングルスレッドで15%の性能(IPC)向上を果たしたと発表している[64]。I/O Chiplet「cIOD (Client I/O Die)」はDDR4-3200をサポートしたメモリコントローラ[66]、PCI Express 4.0コントローラなどが集積されGLOBAL FOUNDRIESの12 nmプロセスルールで製造されている[68][69][70][71][72]。これによって世界初のPCI Express4.0対応プロセッサになった[73]。
新たなブランドとしてRyzen 9シリーズが新設され、Ryzen Threadripperや競合のIntel Core Xなどソケットやチップセットの変わるハイエンド・デスクトップ (HEDT) 向けではないメインストリーム向けCPUでは初めてとなる12コア24スレッドを搭載するRyzen 9 3900Xが2019年7月7日に[64][74]、さらに2019年6月に開催されたAMD Next Horizon Gaming E3 2019では上位モデルとなる16コア32スレッドのRyzen 9 3950Xが発表された。このうち3950Xは9月に発売予定であったが[75]、11月に発売延期された[76]。
対応マザーボードは、Matisseと同時投入のX570ほか500シリーズの他、従来のSocket AM4対応マザーボードでもメーカーからのBIOSアップデートが提供されれば対応可能であるが、A320搭載マザーボードは対応しない[73]。また、2020年5月現在も未対応、あるいはβ版のみの提供となっているマザーボードも存在するため、よく確認する必要がある。
"Castle Peak" は、2019年11月7日 (アメリカ時間)に「3rd Gen Ryzen Threadripper」として発表されたハイエンド・デスクトップ向けのCPUである[77]。第2世代ThreadripperのWXシリーズと比べ、Zen 2アーキテクチャによるシングルスレッドの性能向上と、メモリーコントローラーが独立したチップになった事ですべてのダイから均等にアクセスできるようになり処理速度が改善された[78]。最大8コアのCCDを最大8基搭載し64コア128スレッドまでの製品が用意されているが、前述の通りメインストリーム向けCPUに新設されたRyzen 9が12コア及び16コアを搭載しているため、第2世代WXシリーズに相当する24コア以上の製品しか存在しない[注 9]。プラットフォームとしてはチップセットとCPUとの接続がPCI Express 3.0のx4レーンからPCI Express 4.0 x8レーンと強化されたため4倍の速度となった。一方でソケット及びチップセットが変更になったため前世代までのマザーボードとの互換性は無い。当初、このソケットおよびチップセットの変更は「将来の開発とスケーラビリティ」のためとAMDから説明されていたが[79]、Zen3世代で後述のThreadripper PROに一本化されたため、Castle Peak以外の製品が出ないまま1世代で製品展開は終了した。
2020年4月21日 (アメリカ時間)、下位モデルであるRyzen 3シリーズが発表された[80]。前世代ではAPUがその役割を担うとしてリテール向けには登場しなかったため、約3年ぶりの復活となる。
2020年6月16日 (アメリカ時間)、クロックを向上させた3000XTシリーズが発表された[81]。ブースト時のクロックを除きCPU本体のスペックに差はないものの、3600XTを除きクーラーが同梱されていない。米国では7月7日より販売され、国内での販売は7月18日開始の予定だったが[82]、7月23日に変更された[83]。
2020年7月14日 (アメリカ時間)、Threadripper初の法人・ワークステーション向けCPUである Ryzen Threadripper PROシリーズが発表された[84]。既存のRyzen Threadripper 3000シリーズをベースに、企業向けの「AMD PRO」技術を搭載しており、メモリはECC UDIMMに加えてRDIMMとLRDIMM(つまりDIMMの全種類)をサポート、従来の倍となる8ch接続にも対応し容量の上限は2 TBまでとなっている。また、既存のThreadripperには存在しない16コア及び12コアのモデルも用意され、コア数よりもメモリやPCI Expressのレーン数を重要視するニーズにもこたえている。ソケットはsWRX8となり従来のThreadripper 3000シリーズと互換性は無い。当初はレノボのワークステーションに搭載される形で発売されていたが、後に一般消費者向けにCPUとマザーボードの単品販売もされた[85]。
"Renoir" (ルノワール)[102]は、日本時間2020年7月21日22:00に「Ryzen 4000 Series Desktop Processor with Radeon Graphics」として発表されたPicassoの後継APUである[103]。先行して発表されたモバイル版と同様に、Zen 2アーキテクチャ・7 nmプロセスルールで製造されており、GPUはPicassoと同様にVegaアーキテクチャのRadeon Graphicsを内蔵している[104]。モデル名が4000番台となり、Zen 3アーキテクチャのCPUが5000番台となったため当初はAPU専用のシリーズであった。
GPUのCU数が減っているものの、下位モデルを除きクロックが大幅に向上しており結果的にグラフィック性能が向上している。Mattiseで特徴的であったチップレット構成は採用されておらず、先行して投入されたモバイル向けのRenoirと同じくモノリシックダイである。Mattiseとは異なりPCI ExpressはGen3までの対応となっているが、これまでのAPUの8レーンから16+4レーンに拡張されており、グラフィックカードとNVMe SSDをレーン数に制限される事無く同時に搭載可能となった。
OEM向けの出荷が中心で単品販売は想定されていないが、日本を含め数か国ではPROシリーズのみバルク品として販売されることになった[105]。
対応マザーボードは公式には500シリーズチップセット搭載のマザーボードのみ。
2022年3月15日、デスクトップ向け5000シリーズの下位モデルとして新たな製品がリテール向けに追加された[106]。APUからGPUを無効化した製品も含まれているため、4000番台はAPU専用ではなくなっている。
2022年6月10日 (日本)
"Renoir" (ルノワール) は、デスクトップ版より早い2020年1月7日に「AMD Ryzen 4000 Series Mobile Processor with Radeon Graphics」[110]として発表されたPicassoの後継APUである[111]。Matisseと異なり、Radeon GPUを統合している。 Zen 2アーキテクチャ・7 nmプロセスルールで製造されており、前世代のPicassoから倍となる最大8コア16スレッドと8 MBのL3キャッシュを搭載したCPUと、改良版Vegaグラフィックスを搭載。デスクトップ向けCPUで大きな特徴であったチップレット構成は特に低消費電力が要求されるAPUでは実現することが困難なため採用されておらず、シングルダイのプロセッサとなっている[112]。プロセッサーナンバー末尾のHシリーズのTDPは前世代のPicassoでは35 Wだったが、Renoirからは45 Wに変更された。
新しい熱設計制御としてCPUとGPUの熱設計枠を共有し、CPUのパワーが必要なときにはGPUのほうに必要な熱設計の枠をCPUに共有、その逆にゲームなどでGPUが重要なときは、CPUの熱設計の枠をGPUに共有する「AMD SmartShift」がRyzen 4000シリーズとRadeon RX 5000Mシリーズに導入された。
"Lucienne" (リュシエンヌ) は、2021年1月13日にCezanneと共に発表されたモバイル版APUである[119]。モデル名は5000番台であるが、Zen 3アーキテクチャではなくZen 2アーキテクチャである[注 12]。ただしRenoirのリブランド品ではなく、電力管理機構の改善などCPUコア以外がLucienne相当に改良された異なる設計のダイによる製品である[120]。プロセスルールの据え置きでダイサイズが肥大化したCezanneの下位モデルをより小規模な"Zen 2"コアでカバーするために用意された。
"Vermeer"(フェルメール)は、2020年10月8日にYouTube上でのオンラインイベントで「AMD Ryzen 5000 Series Desktop Processors」として発表された、Matisseの後継CPUである[121][122][123][124]。モデル名は4000番台がスキップされ5000番台となり、世代と数字にズレが生じたため「第4世代Ryzen」とは呼ばれず専ら「Ryzen 5000 (シリーズ)」と呼ばれている。
先代と同じ7 nmプロセスルールを採用しながら、内部構造の改良によって、同じクロックで19%のIPCの向上を実現している。特に、初代から続くL3キャッシュ周りの構造が一新されており、大きな改良点とされる。
各モデル共、ベースクロックは低下したものの、ブーストクロックは向上している。TSMCの7 nmプロセスルールで製造されるCPUチップレット「CCD」とGLOBAL FOUNDRIESの12 nmプロセスルールで製造される「cIOD」を組み合わせるというチップレット構造は変化しておらず、まだcIODは前世代と同一のものとされている[125]。
Matisseでは後からの発表であった16コアモデルが初めからラインナップに加わっている一方、当初は8コア・6コアの下位モデルが存在していなかった。また価格も前世代に比べて50ドル、下位モデルが無くなった8コア・6コアモデルは同じコア数で約100ドルの値上げとなっており、CPUクーラーも前世代のXTシリーズと同様に最下位モデルの5600Xを除き付属せず、5600X付属のCPUクーラーもTDPが65 Wとなった事で下位グレードのWraith Stealthとなっており、CPU単体のコストパフォーマンスは低下した。
対応マザーボードは発売時点では500シリーズ (X570・B550・A520) チップセット搭載のマザーボードのみで、メインストリーム向けのプラットフォームとしては珍しく、CPUの世代交代と同時に新チップセットのマザーボードは投入されなかった。前世代である400シリーズ (X470・B450) チップセット、特にB550が発表された2020年4月 (発売は6月) まで現行の製品であったB450での非対応は非難を浴びたため[126]、後に対応する事が発表され[127]、500シリーズからは遅れるもののメーカーからBIOSの提供があれば対応可能となった。300シリーズ(X370・B350・A320)は長らく非対応であったが、後述の下位モデル発表時に併せて対応する事が発表され、400シリーズ同様にメーカーからBIOSの提供があれば対応可能となった[106]。
"Chagall"(シャガール)は、2022年3月8日 (アメリカ時間) に「Ryzen Threadripper PRO 5000シリーズ」として発表されたZen 3アーキテクチャを採用したワークステーション向けCPUである[128]。ソケットは前世代にあたるRyzen Threadripper PRO 3000シリーズと同じsWRX8で、従来の16コアと32コアの間となる24コアの製品もラインアップされている。前世代と同様に当初はレノボのワークステーションに搭載された形で販売され、一般向けには後から販売される[129]。"PRO"の付かないRyzen Threadripperより先に発表された形であったが、ThreadripperとThreadripper PROは「統合」され、"PRO"のソケット及びチップセットがThreadripper唯一のプラットフォームになる事 (つまり、PROの付かないThreadripperは廃止される事)がAMDから発表されている[129][130][131][注 13]。
当初の発表から1年半後の2022年3月15日、L3キャッシュ容量を従来の3倍に引き上げた5800X3Dと、従来品の下位モデルとなる製品群が発表された[132][106]。5800X3Dは2021年の6月に技術的なプロトタイプの発表を行っていたもので[133]、シリコン貫通ビアにより追加のL3キャッシュを積層(スタッキング)する「3D V-Cache」と呼ばれる技術を用いている[134]。当初は2021年末までに発売予定とされていたが[135]、後に2022年に発売するとしていたものである[136]。従来製品の下位モデルは前世代であるRyzen 3000シリーズと同等のラインナップに相当するものが追加されているが、Zen 3アーキテクチャのAPU(Cezanne)からGPUコアを無効化した製品と、Zen 2アーキテクチャのAPU(Renoir)とそのGPUを無効化した4000シリーズの製品も同時に追加されている[137]。
2022年4月15日 (日本)
"Cezanne"(セザンヌ)は、2021年4月13日に「AMD Ryzen 5000 G-Series Desktop Processor」として発表 (公開) されたRenoirの後継APUである[141][142]。日本では「Ryzen 5000G (シリーズ)」と呼ばれる。
先行して発表されたモバイル向けCezanneと同じくZen 3アーキテクチャのCPUコアにVega世代のGPUを内蔵しており、アーキテクチャの改良とL3キャッシュの倍増によりCPU性能が大きく向上している。当初はOEM向けとされており、あまり大々的な発表ではなかったものの、同年6月1日のCOMPUTEX TAIPEI 2021における基調演説において8コア及び6コアモデルがリテール向けに8月5日に発売される事が発表された[143][144]。前世代のRenoirはバルクのみでリテールは発売されなかったため、デスクトップのリテール品としては2世代ぶりのAPUとなる。
当初は価格と性能の両方において"X"付きのVermeerの下位モデルとしてラインナップをカバーする事となっていたが、後にVermeerの下位モデルは別で追加されている。
2022年3月には、CezanneからGPUを無効化したRyzen 5 5500が既存の5000シリーズの下位モデルとして発表された[137]。競合のIntel Coreプロセッサでは2019年から行われているが[145]、RyzenシリーズのAPUからGPUを無効化した製品は初となる。
"Cezanne" (セザンヌ) は、2021年1月13日にLucienneと共に「AMD Ryzen 5000 Series Mobile Processors」として発表された、Renoirの後継APUである[119][147]。デスクトップ向けのVermeerと同じく、Zen 3アーキテクチャの採用により性能が大きく向上している。コア数は変わらないものの、L3キャッシュは前世代の2倍となる16 MBを搭載し、CCXの改良を合わせると実質4倍と大幅に増量された。一方でプロセスルールは前世代と同じTSMC 7 nmで据え置きかつモノリシックダイのため、ダイサイズは肥大化している。このため、より小規模で安価なZen 2アーキテクチャのLucienneも同時に発表されている。また、統合されるGPUはVega世代で据え置かれている。
"Rembrandt" (レンブラント) は、2022年1月3日に「Ryzen 6000 Series Mobile Processor」として発表された、Cezanneの後継APUである。7nmで製造されていた"Zen 3"をTSMCの6nm FinFETプロセス向けに改良したZen3 +アーキテクチャが採用されており、CPUの基本的な構造は"Zen 3"を踏襲しているが、対応メモリーはLPDDR5/DDR5となっている。モバイル向けながらPCI Express 4.0に対応し、USB4が統合されるなど"足回り"も強化されている。CPU部分は改良レベルに留まるが、GPU部分には長らく採用され続けていたVegaからRDNA2へと大幅に刷新された。これ伴いメディアエンジンや出力パイプラインも強化され、AV1のハードウェアデコード、HDMI 2.1やDisplayPort 2.0への対応も行われている[151][152]。
"Raphael" (ラファエル) は、現地時間2022年8月29日に「Ryzen 7000 Series Desktop Processors」[153]として発表されたVermeerの後継CPUである[154]。
チップレット構造を踏襲し、TSMCの5 nmプロセスルールが採用されたCCDはL2キャッシュ増加などの内部構造の改良により同じクロックで13%のIPCの向上を実現している。TDPの向上と引き換えにクロック周波数も最大5.7GHzと大幅に向上し、IPCの向上と合わせ全体としては29%の性能向上を果たしている。また、内部的には256bitでの処理ではあるもののSIMD拡張命令セットとしてAVX-512にも対応している。Zen 2からZen 3にかけて据え置きであったcIODも6 nmに微細化され、PCI Express 5.0コントローラとDDR5-5200をサポートしたメモリコントローラやが統合されているほか、これまで型番に"G"の付くAPUにしか搭載されてこなかったGPUが初めて搭載されている。統合GPUのアーキテクチャはRDNA2であり、モバイル向けのRembrandtと同様のメディアエンジンを搭載しているものの、コア (CU) 数が少ないため演算能力は最低限のみとなっている。また、PCI Expressはレーン数がそれまでの合計24レーン[注 14]から4レーン[注 15]が追加され計28レーンと増加している。[155]
ソケットには2017年から4世代・5年間に渡って使用されてきたCPU側にピンが存在するSocket AM4に代わり新たにソケット側にピンが存在するSocket AM5が採用され、前述の通り対応するメモリもDDR4 SDRAMからDDR5 SDRAMに変更となった。
対応マザーボードは同時に投入されるSocket AM5対応のAMD 600シリーズとなる。基本的なスペックとなるB650をベースに、B650チップを二つ搭載したX670と、さらにそれぞれグラフィックカード向けの拡張スロットがPCI Express 5.0に対応したX670E及びB650Eが展開される[注 16]。CPU側のPCI Expressコントローラは全て5.0対応だが、600シリーズチップセットとの接続には4.0が用いられるほか、前述の通り拡張スロットのPCI Expressの世代によってグレード分けがされている。[156]
ソケット及びメモリの変更で従来のプラットフォームとの互換性が失われたほか、米ドルベースでのCPUの価格はZen 3発売当時と同等か値下げされたものの、マザーボード側の価格の上昇、既存の5000シリーズの大幅な値引き、さらに日本国内では急激な円安により前世代と比べると導入コストが著しく増加している。また、CPUのTDP向上に加えデュアルチップであるX670チップセットの影響もあり性能と引き換えに消費電力も前世代と比べ増加している[157]。温度及びクロック制御の方式も変更され、デフォルトでは「95℃をターゲットに可能な限り最も性能が出るクロックに動的に調整する」となっており、強力な冷却装置を用いてもこの温度に達するため、従来の感覚では発熱も著しく増加しているが、AMDはプロセッサの損傷や劣化といったリスク無しで95℃でも24時間365日動作するように設計したとしている[158]。
2022年9月30日 (日本)
Ryzenを含む今日のほぼ全ての高性能マイクロプロセッサで、新種の投機的実行に関する脆弱性「Spectre」の影響を受けることが判明している。この脆弱性はマイクロコードのアップデートやオペレーティングシステムの問題回避策により軽減することができるが、この方法ではパフォーマンスが低下する代償を負うことになる[160]。AMDのプロセッサはMeltdown脆弱性に関連する回避策が不要なため[161]、AMD RyzenやEpycはSpectre軽減策をとることによって負荷次第で0%から9%のパフォーマンスが低下するが、Intel CoreやXeonプロセッサでは50%を超える場合があることに比べれば優位である[162][163]。
AMDは、2019年に発売する"Zen 2"でハードウェアの修正を含んでいることを発表した[164]。
Ryzen 1000シリーズプロセッサの初期出荷分には、特にGCCでコードをコンパイルしている最中に、Linux上で特定の負荷においてセグメンテーション違反を引き起こすものがある[165]。AMDは該当のプロセッサを問題のない新しいプロセッサに交換するサービスを開始した[166]。
2018年初め、イスラエルのサイバーセキュリティコンサルタント会社 CTS Labs は、Ryzenにいくつかの重大な欠陥を発見したと主張した[167]。それらは後に2つの別々のセキュリティ会社によって事実と確認されたものの[168]、CTS LabsはAMDに主張の正当性に関する懸念や質問、リアクションに24時間だけ猶予を与えた後、情報を公開した[169][170][171]。AMDは欠陥を事実と認め、ファームウェアのアップデートによって修正される予定であることを発表した[171][172]。攻撃者がそれらを悪用するには物理的なアクセスと管理者権限を必要とする[170][171][172]。
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