J1昇格プレーオフ(J1しょうかくプレーオフ、J1 Promotion Play-Offs[1][注 1])は、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)において翌年度のJ1リーグ参入チームを決定するためのプレーオフ制度。2012年シーズンから2017年シーズンまで実施され、2023年シーズンから復活した。
概要
2012年から2017年
2011年8月18日に実施されたJリーグ理事会において、2012年シーズンからの実施が決定した[3]。J1参入チームをポストシーズンにより決定するのは、2004年シーズンから2008年シーズンまで5年間導入されていたJ1・J2入れ替え戦以来。8月の理事会では名称を仮称としていたが、2011年12月19日のJリーグ理事会で「J1昇格プレーオフ」が正式名称に決定した[4]。
JリーグにおいてJリーグ ディビジョン1 (J1) とJリーグ ディビジョン2 (J2) の参加チームの振り分けについては、入れ替え戦廃止後の2009年シーズンから2011年シーズンの3年間は、「J1年間順位下位3チームが自動降格、J2年間順位上位3チームが自動昇格」とする方式がとられていた。これを、2012年度以降は「J1年間順位下位3チームが自動降格」というルールはそのまま、J2から自動昇格するチーム数を3チームから2チームに減じた上で、残る1チームをJ2年間順位の3位から6位までのトーナメント方式によって争うというものである。
このようなプレーオフにより3チーム目の昇格チームを決定する方式は、以前よりイングランド(チャンピオンシップからプレミアリーグへの昇格)やイタリア(セリエBからセリエAへの昇格、条件付き)で行われてきた方式であり、Jリーグではプレーオフの導入によりJ2の年間順位6位のチームにまでJ1昇格のチャンスを与えることにより、「J2リーグ戦の活性化」「新しいファンの開拓」「J2クラブの経営、環境改善の促進」を目的とすることを掲げている[5]。
2017年6月27日に行われたJリーグ理事会で、2018年シーズンからはJ2年間順位の3位から6位までと、それまでJ2自動降格となっていたJ1年間16位のチームとの間でJ1参加クラブを決定する「J1参入プレーオフ」を行うことが発表され、J2クラブのみで昇格チームを争う形式の昇格プレーオフは一旦2017年シーズン限りとすることとなった[6]。
2023年以降
2022年12月20日、Jリーグは2024年シーズン以降のリーグ構成並びに昇降格制度の変更を明らかにした[7]。これによれば、2024年シーズンからJ1/J2/J3のクラブ数を20クラブずつに統一する(J1が2増、J2が2減)のに合わせ、J1からの降格枠をそれまでの「自動降格2+参入プレーオフ」としていたものを「自動降格3」に変更し、J2からは引き続き「自動昇格2+3位から6位クラブによるプレーオフ」とすることで、J1クラブの参戦する参入プレーオフからJ2クラブのみで争う昇格プレーオフに変更されることとなった。なお、2023年シーズンについてはその過渡期に当たるシーズンとして、J1からは1クラブが自動降格、J2からは2クラブが自動昇格し、残る1枠をプレーオフで争う形となり、2023年シーズンからJ1昇格プレーオフが復活することになった。更に2024年シーズンからは、J3でも本プレーオフを踏襲した「J2昇格プレーオフ」が行われている[7]。レギュレーションについても、2017年の形式を踏襲している[8]。
レギュレーション
Jリーグが2011年8月18日に発表したニュースリリース[3] ならびに2011年12月19日に発表したニュースリリース[4] に基づくレギュレーションは以下の通り。
参加チーム
J1参入資格を持ち、J2年間順位の3位から6位までのクラブ、最大4チームが参加する。
昇格プレーオフ参加にはホームスタジアムや環境面などでJ1参入資格(J1ライセンス)を有することが必須条件となり、これを有しないクラブは昇格プレーオフに参加できない。また、公式試合安定開催基金からの貸付を受けているクラブについても、J2リーグ戦最終日の30日前までに基金からの貸付を完済しない場合は「J1クラブライセンスの交付判定を受けられなかったクラブ」とみなされ、昇格プレーオフへに参加できない[9]。これらの場合、7位以下のクラブからの繰り上げはなく、その分は参加チーム数が減じられることになる。また、J2年間順位上位2チームがJ1参入資格を有しない場合も、自動昇格チームの繰り上げは行われず(J2からの自動昇格チーム数およびJ1からの自動降格チーム数がそれぞれ減じられる)、3位から6位のチームがプレーオフ出場を免除されることはない。
3位から6位までのクラブのうち、J1ライセンスを有するクラブが1チーム以下の場合はJ1昇格プレーオフは行われない。1チームだけの場合は当該チームがJ1へ自動昇格し、J1ライセンスを有するクラブがいない場合はJ2からの昇格チーム数およびJ1からの自動降格チーム数がそれぞれ減じられる。
試合方式
J2のリーグ戦全日程終了後、最大4チームによるトーナメント方式でJ1昇格チームの座を争う。以下は4チーム参加の場合のレギュレーション。
| 準決勝 | | 決勝 |
| | | | | | |
| A | | |
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| 3位 | H |
| C |
| 6位 | | |
| Aの勝者 | (H) |
| B |
| | Bの勝者 | |
| 4位 | H |
| |
| 5位 | | |
|
- 初戦(準決勝)は「J2年間3位 - J2年間6位」・「J2年間4位 - J2年間5位」の組み合わせで戦う。勝者は決勝進出、敗者はJ2残留となる。
- 準決勝の勝者同士が決勝を戦って、決勝の勝者がJ1昇格となる。
- 各試合とも1試合勝負(かつての入れ替え戦のようなホーム・アンド・アウェーではない)。90分を戦って同点の場合は延長戦・PK戦は行わず、年間順位の上位チームの「勝利」(決勝進出、またはJ1昇格決定)とみなす。
- 準決勝は上位チーム(年間3位・4位)のホームゲーム(H)として行われる。
- 決勝は2012年から2015年までは中立地開催(Jリーグが直接主管する試合。ただし組み合わせ上は、上図Aの勝者側をホーム扱い)として行われた。2012・2013年は国立競技場で行われたが、国立競技場の建て替え工事に伴い、2014年は味の素スタジアムで[10]、2015年はヤンマースタジアム長居で[11] 開催された。しかし、2015年シーズンではヤンマースタジアム長居をホームとするセレッソ大阪(リーグ戦4位)が決勝に進出し、同じく決勝に進出したリーグ戦上位(3位)のアビスパ福岡の優位性が薄らいだ[注 2]との指摘を受け、2016年からは準決勝同様、上位チームのホームスタジアムでの開催に変更される[13][14]。
なお、参加チームが3チームの場合は準決勝は下位2チームにより行われ、最上位チームは決勝から参加となる(例えば、4位が出場できない場合、3位が決勝戦に自動的に進出し、5位と6位で準決勝を行う)。また、参加チームが2チームの場合は決勝戦のみが行われる。
2017年までのJ1昇格(プレーオフ優勝)クラブにはJリーグより優勝盾が贈呈されていたが、J1参入プレーオフを挟んだ後に再開された2023年からは廃止された。
試合結果
トーナメント表の上のチームのホームゲーム(2015年までの決勝は中立地開催のためホーム扱い)として行われる[15]。
J1昇格プレーオフ制度が始まった2012年から2017年及び2023年において、J2の年間順位が5位だったチームはトーナメントを勝ち抜いたことがなく(それどころか決勝への進出も2012年の1例のみ)J1への昇格経験がなかったが、2024年に初めて年間順位5位のチームがJ1昇格を決めた。
2012年
6位の大分が3位の京都、5位の千葉を破ってJ1昇格を決めた。
2013年
4位の徳島が5位の千葉と引き分けて決勝に進出し、3位の京都を破って初のJ1昇格を決めた。
2014年
5位にJ1ライセンスを持たないギラヴァンツ北九州が入ったため、3チームでの対戦となった。
6位の山形が4位の磐田、3位の千葉を破ってJ1昇格を決めた。
2015年
3位の福岡が6位の長崎を破って決勝に進出し、4位のC大阪と引き分けてJ1昇格を決めた。
2016年
4位のC大阪が5位の京都と引き分けて決勝に進出し、6位の岡山を破ってJ1昇格を決めた。
2017年
3位の名古屋が6位の千葉を破って決勝に進出し、4位の福岡と引き分けてJ1昇格を決めた。
2023年
3位の東京Vが6位の千葉を破って決勝に進出し、4位の清水と引き分けてJ1昇格を決めた。
2024年
5位の岡山が4位の山形、6位の仙台を破って初のJ1昇格を決めた。
統計
クラブ別成績
年間順位別成績
順 |
昇 |
決 |
計 |
昇格年度 |
決勝敗退年度
|
3位 |
3 |
2 |
5 |
2015(福岡), 2017(名古屋), 2023(東京V) |
2013(京都), 2014(千葉)
|
4位 |
2 |
3 |
5 |
2013(徳島), 2016(C大阪) |
2015(C大阪), 2017(福岡), 2023(清水)
|
5位 |
1 |
1 |
2 |
2024(岡山) |
2012(千葉)
|
6位 |
2 |
2 |
4 |
2012(大分), 2014(山形) |
2016(岡山), 2024(仙台)
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プレーオフ制度に対する意見
プレーオフ制度の導入については賛否両論がある。
スポーツライターの戸塚啓は、自身のコラム[16] で「J2の昇格争いはサッカー界だけの注目にとどまっているのが現状」と指摘した上で、「プレーオフ進出をかけた争いという新たな興味は、J2の中位争いに目を向けさせることになる」「(昇格争いでホームタウンが盛り上がれば)クラブの経営が少しでも上向いたり、スタジアムなどの環境整備に勢いが出てくれば、プレーオフ導入のメリットはある」と肯定的な意見を述べている。
一方、サッカー解説者のセルジオ越後は、自身のコラム[17] の中で「普段、J2は見向きもされないのに、プレーオフだけ騒がれても、Jリーグ全体のレベルアップ、盛り上がりにはつながらない」「(仮に6位のチームが昇格しても)本来、シーズンを通して6番目の力しかなかったのだから、J1で通用するはずがないし、だからといって無理して補強などすれば、財政的に逼迫する可能性もある」と述べ、J2の活性化より前にJ1のレベルアップが必要だと否定的な意見を述べている。2012年・2013年にJ1昇格プレーオフを勝ち抜いた大分・徳島はいずれも翌年J1最下位でJ2に降格しており、2014年12月7日付のデイリースポーツは「来季の山形の成績次第では、大会のあり方を見直す必要があるだろう」と記しており[18](結果的に山形も1年限りで再降格)、この「プレーオフで昇格したクラブがJ1に定着できない」点が、2018年からのJ1参入プレーオフへの移行の遠因となっている。
関連項目
脚注
注釈
- ^ 歴代ロゴや看板、トロフィー等には「J.League Road To J1 Play-Offs[2]」の表記があるが、英語版公式サイトでの英字表記とは異なる。
- ^ これについてJリーグは、国立競技場に替わる決勝会場として、入場可能数2万人以上の全国のスタジアムの中から開催希望地を募り、「(チャンピオンシップ開催に伴い)J1で使用しないスタジアムであること」「J2・J3入れ替え戦が同日に開催できること」「スタジアムのアクセス、立地、開催時の気象等」の3条件を総合的に勘案して3月のJリーグ理事会で選定したものであると説明している[12]。
出典
外部リンク