INAX(イナックス)は、LIXILが展開する衛生陶器・住宅設備機器・建材のブランド名である。
また、株式会社INAX(英: INAX Corporation)は、2011年3月までこれらの事業を展開していた企業で、現在のLIXILの前身の一つである。
常滑焼の産地である愛知県知多郡常滑町において、1887年(明治20年)頃から陶工の伊奈初之丞が陶管の製造を開始した。1921年(大正10年)、伊奈初之丞は大倉陶園創業者である大倉和親の支援を受けて匿名組合伊奈製陶所を創業し、陶管(土管)やタイル等の建設用陶器を製造した。1924年(大正13年)2月には伊奈初之丞の長男である伊奈長三郎が法人化を行い、森村グループのタイルメーカーとして伊奈製陶株式会社が設立された。伊奈長三郎は常務に就任し、以後も伊奈家が経営に関わってきた。1945年(昭和20年)には衛生陶器の製造を開始し、同じ森村グループに属する東洋陶器株式会社(後のTOTO)とライバル関係になった。
1985年(昭和60年)4月21日、伊奈製陶はコーポレートアイデンティティ(CI)を実施し、株式会社イナックスに商号変更した。英字社名のINAXの社名は、それまでの「ina」に未知数などを示す「X」をつけたものである。同時に企業理念「INAX5」を制定し、ロゴマークも一新した。2004年(平成16年)にはロゴマークが微修正され、社名左側の図形部分が横長から縦横同幅になった。
2001年(平成13年)10月21日、アルミサッシなどを手掛ける建材メーカー大手のトステムとの経営統合により、純粋持株会社である株式会社INAXトステム・ホールディングス(旧・初代トステム。のちの住生活グループ→LIXILグループ、現・〈3代目〉LIXIL)傘下の事業会社になり、トステムとは住宅設備機器の企画や展開において協業関係になった。2006年(平成18年)1月、トステムとの共同ショールームを岐阜市にオープンさせた。
2011年(平成23年)4月1日、同じ住生活グループの2代目トステム、新日軽、東洋エクステリア(TOEX)、LIXIL(統合後と同じ名称だが、グループ内での営業戦略の立案を行っていた別法人)と合併し、サンウエーブ工業の開発・管理部門を統合して、新会社株式会社LIXIL(2代目法人)となり、INAXは同社における製品ブランド名の一つとなった。川本隆一社長は合併時にLIXILの社内カンパニー「金属・建材カンパニー」社長に就任している。
トイレや洗面器などの衛生陶器では、TOTOと同社で日本国内シェアの9割程度を占める。便器のシェアはTOTOが約60%でINAXが約30%、温水便座のシェアはTOTOが約55%でINAXが約25%である。
タイルについては世界最大のメーカーであり、内装用建材「エコカラット」などの独自商品も発売している。衛生陶器全製品を「ハイパーキラミック」と称する抗菌仕様に変更した。なお、抗菌については2007年(平成19年)にISO規格となり、INAXでも商品展開で強調している。さらに防汚性能を上げるために、「プロガード」と呼ばれるコーティングも導入され、住宅用便器や洗面器を中心に採用を広げている。プロガードは、他社製の物を含め既存便器(他社防汚技術商品を除く)・洗面器などにも加工が可能である。
2006年(平成18年)4月1日には、住宅用洋風便器に大洗浄6リットルの「ECO6トイレ」を発売[1]。大洗浄8リットルタイプを主力としていたTOTOに一歩先行したが、TOTOも2006年(平成18年)8月に「ネオレスト」をモデルチェンジし、6リットル洗浄を実現した。その後、2009年(平成21年)4月1日にINAXが「サティス」で大洗浄5リットル・小洗浄4リットルの「ECO5」を発売すると、TOTOは2009年(平成21年)8月に大洗浄4.8リットルの「GREEN MAX 4.8」シリーズを発売。対するINAXは2011年(平成23年)4月に大洗浄4リットル・小洗浄3.3リットルの「ECO4」を「サティス」で実現したが、TOTOはGREENMAX3.8を登場させている。
システムキッチンは2011年3月末をもって取扱を終了し、サンウエーブブランドに移行した。「レノ」については同年4月以降もサンウエーブブランドの製品として引き続き取り扱う[注 1]。
この節は株式会社INAX時代の事業所を示す。
経営統合以前は、INAX出版が書籍出版事業として存在していた(下記に後述)。
東京・銀座ショールームビルおよび大阪ショールームに「INAXギャラリー」を設置し、アートや考現学指向の展示を行った。また、出版部門「INAX出版」も持ち、INAXギャラリーでの展示内容を「INAXブックレット」として刊行する他、建築関連の書籍を多数発行した(なお、経営統合後は全て「LIXIL」のブランドに変更して運営している[3]。また、TOTOも同様の事業を行っている)。LIXILギャラリーは2020年秋に閉廊[4]、LIXIL出版は2021年11月25日を以て活動終了し既刊書籍は株式会社トゥーヴァージンズにて流通・販売を継続している[5][6]。
本社のある常滑市にはトイレパーク、タイル博物館、陶楽工房(INAXライブミュージアム)、また窯のある広場・資料館、といった施設がある。
産業廃棄物となっているおからの再生利用技術も開発している。
2006年(平成18年)9月 - 12月に、INAXギャラリーがある銀座通りにて、国際的な写真家集団マグナム・フォトのメンバーが撮影した東京の情景を、タイルにプリントして展示するというイベント「銀座フォトグラム2006」が行われた。タイルの持つ高い耐久性を生かし、長期にわたって屋外にて写真を展示することを実現した。このタイルはINAX伊賀上野工場が製造を担当し、その仕上がりはマグナム・フォトの厳しい要求にも応えている。
中部国際空港内の一部のトイレは、本社と同じ常滑市にあるにもかかわらず、入札でTOTO製が採用された。
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