CXAMは、アメリカ海軍研究所(NRL)が設計した2次元レーダー。アメリカ海軍が初めて艦隊配備した対空捜索レーダーである。また本項目では、同系列のSA, SC, SKレーダーについても扱う。
CXAM
1936年8月、アメリカ海軍は、周波数200メガヘルツ(波長1.5メートル)の実験機であるXAFを製作し、1937年4月より駆逐艦「リアリー」に搭載しての洋上試験が開始された。また1938年末には、戦艦「ニューヨーク」に搭載されて演習にも参加した[1]
これを元にした実用機としてNRLが開発したのがCXAMである。製造はRCA社が担当して、1940年5月より実艦搭載を開始し、8月までに戦艦「カリフォルニア」など戦艦・航空母艦・重巡洋艦 計6隻に搭載された。なお「カリフォルニア」は真珠湾攻撃で大破・着底したが、搭載するCXAMは回収されて、空母「ホーネット」に移設された[2]。
また、1941年末からは、反射板をスクリーンとし、アンテナ旋回機構にも改良を加えたCXAM-1の引き渡しが開始され、こちらは1943年まで運用されていた[2]。
CXBE (SA)
CXAMはあまりに大掛かりであり、装備するには巡洋艦以上の大型艦である必要があった。このことから、より小型の艦にも搭載できるよう、アンテナを小型化して開発されたのがSAである。製造は引き続きRCA社が担当しており、1942年9月より引渡しが開始されて、最終的には計400基が生産された。その後、平面位置表示器(PPI)の導入などの改良を加えたSA-2(865基)、SA-3(225基)へと発展した[2]。
また、さらにアンテナを1.52 m×1.83 mに小型化、重量45 kgに軽量化したSA-1も配備された。周波数も182 MHz(波長1.65 m)に変更されたが、アンテナの小型化(ビーム幅は45°×52°に太くなった)と相まって方位角精度3°に低下した[2]。
CXBD (SC)
ゼネラル・エレクトリック社によって開発されたCXAMの小型化版がSCである。1941年後半より配備が開始された。また1942年1月には、出力を倍増することで、探知距離をほぼ倍増するなどの改良を加えたSC-1が開発され、既存のSCはいずれもこちらに改装された[2]。
その後、SC-1をもとにアンテナを大型化したSC-2(415基生産)、電子防護能力強化などを施したSC-3(200基生産), SC-4(250基生産)が順次に配備されたほか、新開発のSRレーダーの計画遅延のため、さらにSC-5も100基生産された[2]。
CXFA (SK)
ゼネラル・エレクトリック社によって、いわば同社のSC-2をもとにCXAMと同大のアンテナを備えるものとして開発されたのがSKであり、大戦中のアメリカ海軍大型艦の標準的なレーダーとして広く配備された。
また海兵隊の地上配備用レーダーとしてSK-1M(後にAN/MPS-24に改称)も開発・配備されたほか、サイドローブ削減のため、ディッシュアンテナに変更したSK-2,-3も開発・配備された[2]。
諸元表
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CXAM
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SA
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SC-1
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SC-2
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SK
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周波数
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VHF (当時はPバンドと呼称)
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200 MHz
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220 MHz
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195~205 MHz または 215~225 MHz
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n/a
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パルス幅
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3マイクロ秒
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5マイクロ秒
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2~6マイクロ秒
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4マイクロ秒
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5マイクロ秒
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パルス繰返周波数
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1,640 pps
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60 pps
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送信尖頭電力
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15 kW
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100 kW
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200 kW
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20 kW
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200 kW
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アンテナ形式
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マットレス型
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アンテナ素子
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ダイポールアンテナ×15本
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ダイポールアンテナ×6本
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ダイポールアンテナ×12本
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ダイポールアンテナ×36本
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アンテナ寸法
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5.18 m×5.49 m
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2.67 m×1.52 m
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2.59 m×2.29 m
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4.57 m×1.37 m
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5.18 m×5.18 m
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アンテナ重量
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544 kg
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227 kg
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n/a
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1,043 kg
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アンテナ利得
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40 dB
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25 dB
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40 dB
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n/a
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90 dB
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ビーム幅
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幅14°×高さ70°
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幅30°×高さ52°
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幅30°×高さ40°
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幅20°×高さ50°
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幅20°×高さ17°
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回転速度
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5 rpm
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1.25 または 5 rpm
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5 rpm
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n/a
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4.5 rpm
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探知距離
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130 km (高度3,048 mのPBYに対して) 93 km (高度3,048 mの戦闘機に対して) 30 km (戦艦・巡洋艦に対して) 22 km (駆逐艦に対して)
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74 km (爆撃機に対して) 56 km (戦闘機に対して) 22 km (戦艦・巡洋艦に対して) 15 km (駆逐艦に対して)
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約110 km (爆撃機に対して) 約90 km (戦闘機に対して) 約40 km (戦艦・巡洋艦に対して) 約10 km (駆逐艦に対して)
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148 km (高度3,048 mの爆撃機に対して) 74 km (高度3,048 mの戦闘機に対して) 37 km (主力艦に対して)
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185 km (高度3,048 mの爆撃機に対して)
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精度
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距離300 yd (270 m)
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距離100 yd (91 m) / 角度1°
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距離100 yd (91 m) / 角度5°
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距離100 yd (91 m) / 角度3°
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距離100 yd (91 m) / 角度1°
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分解能
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距離400 yd (370 m) / 角度3°
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距離500 yd (460 m) / 角度25°
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距離500 yd (460 m) / 角度10°
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距離300 yd (270 m) / 角度10°
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距離900 yd (820 m) / 角度10°
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参考文献
関連項目
- ウィキメディア・コモンズには、CXAMに関するカテゴリがあります。
- AN/SPS-29 - 大戦後に開発された新世代のVHF対空捜索レーダー