AK-630 は、ソビエト連邦 の艦載 機関砲 システム。30mm口径 ・6砲身 のガトリング砲 を使用した全自動システムであり、密閉された自動操作の砲座に搭載され、レーダー や光学式指揮装置により管制される。このシステムの主要目的は、対艦ミサイル などの精密誘導兵器 に対する対空防御にあるが、航空機 や艦艇などの水上目標、沿岸の目標への攻撃および浮遊機雷 の処分にも用いることが可能である。
AK-630は、最も初期に開発されたCIWS システムと言える。当時はまだファランクス やゴールキーパー などは実用化されていなかった。
実用化後に急速に搭載艦艇が増加し、掃海艇 から航空母艦 に至るまでソ連海軍 艦艇に幅広くかつ数多く搭載された。
現在もロシア海軍 を中心に多くの艦艇に搭載されている。
概要
AK-630は、弾倉 が甲板下にあり、レーダー など管制用装置 が別に配置されていることから、非常にコンパクトな外形となっている。
AK-630M機関砲 、MR-123-02火器管制レーダー、およびSP-521光学式追尾装置から成る兵器 システムは A-213-ヴィンペル-A (A-213-Vympel-A)と呼ばれる。
MR-123 ヴィンペル射撃指揮装置
MP-123 レーダーは1基につき2基の砲座を管制することが可能で、その組み合わせには30ミリ機関砲ないし57ミリ連装砲2基、または30ミリ機関砲および57ミリ連装砲各1基がある。レーダーは4-5キロの間で海面上の目標を捕らえることが可能である。
SP-521光学式追尾装置は、MiG-21 相当の航空機 なら7キロ、魚雷艇 相当の水上目標なら70キロから捕捉可能である。この装置はレーザー 照準器 、および光学式照準器から構成され、監視および追跡モードを持ち、電波妨害 に対する高い抵抗力がある。
砲座は完全に自動化されているが、オペレーターが管制用機器ないし砲座より離れて取り付けられた照準器により手動で制御することも可能である。AK-630は、ブロック1以前のファランクス やゴールキーパー より高い射撃速度を誇る。多くの場合2基1組で取り付けられ、有効な個艦防空システムとなっている。 しかし、他のガトリング機関砲 ベースのCIWS 同様、即応性と、複数目標への対応が課題となっている。
CIWSの比較 [疑問点 – ノート ]
AK-630
ファランクス
ゴールキーパー
730型
画像
重量[要出典 ]
9,114 kg (20,093 lb)
6,200 kg (13,700 lb)
9,902 kg (21,830 lb)
9,800 kg (21,600 lb)?
武装 [要出典 ]
GSh-6-30 30 mm (1.2 in) 6砲身ガトリング砲
M61 20 mm (0.79 in) 6砲身ガトリング砲
GAU-8 30 mm (1.2 in) 7砲身ガトリング砲
[ 注 1] 30 mm (1.2 in) 7砲身ガトリング砲
発射数[要出典 ]
毎分5,000発
毎分4,500発
毎分4,200発
毎分5,800発
射程[要出典 ]
4,000 m (13,000 ft)
1,490 m (4,890 ft)
2,000 m (6,600 ft)
3,000 m (9,800 ft)
携行弾数 [要出典 ]
2,000発
1,550発
1,190発
1,000発
弾丸初速 [要出典 ]
毎秒900 m (3,000 ft)
毎秒1,100 m (3,600 ft)
毎秒1,109 m (3,638 ft)
毎秒1,100 m (3,600 ft)
垂直軸射撃範囲[要出典 ]
+88°~-12°
+85°~-25°
水平軸射撃範囲[要出典 ]
360°
+150°~-150°
360°
改良型
AK-630は、幾つかの改良型および派生型があり、しばしばCADS-N-1 カシュタン システムも含まれる場合がある。
AK-630
AK-630は、1963年 に設計が開始され、1964年 には最初の試作品 が完成した。
レーダー も含めた全体の管制システム は、実艦への搭載および運用が開始された後の1976年 頃まで運用試験が続けられた。
AK-630M
初期のAK-630が配備・運用されていくにつれ、システム開発中及び運用試験では判らなかった多数の問題が明らかになった。これらの問題を修正し、1979年 に新しいシステムはAK-630Mと命名され、運用が開始された。
AK-306
AK-630Mの派生型は小型艦艇用に開発され、このシステムはAK-306と命名された。
AK-306とAK-630の間には外観上の違いは無いが、AK-306(A-219)は電気駆動へと変更された。 また、この派生型はレーダー 制御を欠き、光学式装置に管制されるだけであり、その結果、全体のシステム名称は「A-213-ヴィンペル-A(A-213-Vympel-A)」から「A-219」へと変更された。
1974年 に設計が開始され、1980年 に運用を開始した。 1986年 までに125基が生産され、運用された。
AK-630M1-2
1983年 に、縦に2本の銃身 を束ねたAK-630改良型を設計することが決定された。 AK-630M1-2 ロイ(Roy)は、既存のAK-630が搭載されている砲座を換装できるように、同程度の寸法と重量にまとめられた。
本格的に導入が進められると思われたが、AK-630M1-2 ロイは、後にカシュタン とも呼ばれているミサイル と砲の複合対空システム3M87 コールチクの開発・生産が優先されたために生産されなかった。
AK-630M1-2 ロイは、マトカ型ミサイル艇 「R-44 」への搭載に留まった。
2007年 7月のIMDS-2007において、AK-630M1-2の近代化タイプがOAO AK Tulamashzavodにより出展、「AK-630M-2 デュエット (ロシア語版 ) (ロシア語 : Дуэт 、Duet)」という新しい名称を付され展示された。「デュエット」の「ロイ」との外観上の相違点は、ステルス性 を考慮した新しいレーダー反射面積 の低い形状にある。
中国製AK-630
中国 で生産されているAK-630には、独自に開発されたレーダー反射率 の低減を図ったステルス シールドが採用されており、江凱型フリゲート や紅稗型ミサイル艇 、071型揚陸艦 に搭載されている。紅稗型ミサイル艇には、管制 レーダー に中国独自のHEOS-300が用いられている。
中国人民解放軍海軍 では、中国で独自に開発された730型CIWS も運用しているが、AK-630の4倍という高コストのため、AK-630も併用している。
運用国及び機関
現在運用中および過去に運用した国および機関の一覧
要目
銃身 :AO-18 6砲身 30mm ガトリング 機関砲
重量 (本体のみ/砲弾 および管制システム を含む)
AK-630/630M :1,850kg(本体のみ), 1,918kg(砲弾含む), 9,114kg(砲弾および管制システムを含む)
AK-630M1-2 :2,500kg(本体のみ), 11,819kg(砲弾および管制システムを含む)
AK-306 :1,100kg(本体のみ), 1,630kg(砲弾および管制システムを含む)
仰俯角範囲および速度 :-12度から+88度、50度/秒
旋回範囲および速度 :360度、70度/秒
初速 :900m/秒
発射速度 :83発/秒(5,000発/分)
弾薬 :HE-FRAG, FRAG
弾薬搭載量 (1層下の弾薬庫 に搭載)
AK-630M1-2 :4,000発
AK-306 :500発
射程 :HE-FRAG(0.54kg)shell, 4,000m
捜索・追尾システム :A-213-Vympel-A, レーダー 、レーザー および光学式管制システム
脚注
注釈
出典
^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023 . Routledge. p. 179. ISBN 978-1-032-50895-5
関連項目
外部リンク
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