30時間制

デンマーク国鉄(DSB)の回数券 (da:Klippekort。赤枠部分で27:45と打刻されている。

30時間制(さんじゅうじかんせい)とは、24時間制を延長し、日界を午前6時とする、時刻の表記法の一種である[1]

概要

24時(正子)で終わる24時間制に対して、30時間制では、24時以降に6時間分だけ延長し、24時、25時、・・・29時、30時を用いる。そして、日界(日付が変わる時点)を午前0時ではなく午前6時とするものである。ここで、「日界」とは、どの時刻において「日」を進めるか(例えば3日→4日)ということであり、24時間制の場合は、それは午前0時であり、30時間制の場合は午前6時である。

したがって、24時間制と異なる表示となるのは、夜の0時(正子。昼の12時である正午の正反対)から午前6時の直前までの6時間のみである。そして、30時間制においては、0時・1時・2時・3時・4時・5時の表記がなされることはない。

なお、終了時刻を表す場合はそれを「30時」と表記することもある[2]。これは、鉄道の時刻表などで、24時間制表記であるにもかかわらず、到着時刻に限り、正子(真夜中)を「24:00」と表記することと同様である。

営業時間の終わりが25時となっている

表記の実際

24時間制と30時間制を対比すると、以下のようになる。日は、例として2日・3日・4日を用いている。

24時間制 30時間制
3日 06:00 3日 06:00(=2日 30:00 *)
3日 12:00 3日 12:00
3日 18:00 3日 18:00
3日 23:00 3日 23:00
4日 00:00(=3日 24:00 *) 3日 24:00
4日 01:00 3日 25:00
4日 02:00 3日 26:00
4日 03:00 3日 27:00
4日 04:00 3日 28:00
4日 05:00 3日 29:00
4日 06:00 4日 06:00(=3日 30:00 *)
4日 07:00 4日 07:00

*:時刻表の終着時刻など、終了時刻を表す場合に使用される表記

変形

日界を午前6時ではなく、午前4時として28時間制、午前8時として32時間制などと呼ぶこともあるが、起点が異なるだけで、考え方は30時間制と同じである。起点が何時であるか記載されずに、24時間制で収まらないはずの24時や25時という表記が用いられる場合もある[注釈 1]

一例として、JR東日本のウェブサイトにおける列車時刻表は、深夜に運転する列車の発着時刻は「0:xx」「1:xx」ではなく、「24:xx」「25:xx」として、27時台まで表示される[注釈 2]

用いられる分野

日本の放送業界、天文分野、日本の深夜営業店舗の営業時間表記などで用いられる場合がある。

放送業界では、ビデオタイマー表示装置でこの表記に対応しているものがある[3]。また、放送局の公式サイトや番組表、例えば『CM NOW』のスポンサーリストなどでも、24時、25時などのように表記されることがしばしばある。

ただし、放送分野でも30時間制を用いず、他の表記法(12時間制や24時間制)を用いることもある。例えば、NHKでは12時間制[注釈 3]が採用されている。

天文分野でも30時間制が用いられている。例えば、国立天文台に勤務する天文学者たちが30時間制を採用している[2]。国立天文台のある日本と、すばる望遠鏡のあるハワイ州との時差を考えて、コミュニケーションエラーを避けることができる点を利点として挙げている。例えば、ハワイで21時から翌朝6時までを観測する場合、時差が19時間ある日本では、翌日16時から翌々日1時までとなる。30時間制で表記すると、ハワイ時間(=ハワイ・アリューシャン標準時)で21時から30時、日本時間で翌日16時から翌日25時までとなる。観測途中で日替わりが発生しなくなるため、24時間制を用いる場合に比べて計算が楽になり、コミュニケーションエラーを避けられるという。また、論文を書く際にはUTCで表記する必要があるが、その際も、日本時間から単純に9時間引けばよく、24時間制に比べて計算が楽であるという。

アマチュア天文家の流星観測などでも、日付の間違いを防ぐために午前1時を前日の25時、午前2時を26時…と記録する習慣がある。

他には、時計メーカーにも30時間制表記に対応しているものがある[1]

なお、NHKが2003年に行った調査によると、午前1時を指している時計の図を見て、30時間制表記「25時」と表現するほうがわかりやすいと答えた人は1%に過ぎない[4]。また、12時間制「午後11時から午前1時まで」よりも30時間制「23時から25時まで」がわかりやすいと答えた人も2%に過ぎない[4]。そして、12時間制で答える人が圧倒的に多かった[4]

脚注

注釈

  1. ^ CM NOW』148号には、145ページにスポンサーリストという週間タイムテーブルが記載されており、それには12時から25時までの時間が表記されている。この場合、24時や25時という表記から、24時間制でないことは確実である。しかし、起点が午前2時であるのか、午前6時であるのか、午前12時(午後0時)であるのかは不明である。
  2. ^ 上りの臨時列車「ムーンライトながら」の時刻は沼津27:19発、横浜04:40着であることから、28時間制であることがわかる。
  3. ^ ただし内部の技術セクションでは28時間制が使われている。[要出典]

出典

  1. ^ a b CASIO 3164・3250*JA 取扱説明書 p.14、時刻モードの「時刻表現」について
  2. ^ a b 林公代 (2012-05-07). 宇宙就職案内. 筑摩書房. p. 22. ISBN 978-4480688804 
  3. ^ ビデオタイマー表示装置 VT-70HD-R”. ビデオトロン. pp. 1,5,7. 2014年1月20日閲覧。
  4. ^ a b c ことば 言葉コトバ 12時間制と24時間制”. 日本放送協会. 2014年1月19日閲覧。

関連項目