3000メートル障害(3000mしょうがい, 英語: 3000 metres steeplechase)は、陸上競技の障害物競走の一種で、障害を通過しながら3000メートルを走るタイムを競う。一般的に3000mSCと表記され、「SC」とは「スティープルチェイス」(Steeplechase)の略である。
日本では3000m障害又はサンショーと略して呼ばれている。
概要
Steeple(教会の尖塔)を追う、という意味の競技名が示す通り、昔、ヨーロッパの各々の村が教会を中心としたコミュニティーであった時代に、ある村の教会を出発点とし、別のある村の教会をゴールとした徒競走(もしくは馬術競走)をする際に村境を示す柵や堀を飛び越えて行ったことに由来する、ヨーロッパなどで人気の高いクロスカントリーのレースを、トラック上で再現するためにつくられたと言われている。競馬の障害競走も英語でSteeplechaseであり、陸上競技と競馬とでどちらが先にSteeplechaseの名称を用いて、他方に流用されたかについては諸説ある。
3000mを走るうちに障害物(平均台に類似した形状でハードルと同様のペイントを施したもの)を28回、障害物の着地点に水濠がある障害を7回越えなくてはならない。スタート後にフィニッシュラインを初めて通過してから、各周に5個の障害物があり、その4番目の障害物は水濠である。水濠以外の4つの障害物は移動式であるが、倒れることはなく手や足をついて越えるのは許されているが、外側や内側を通ったりくぐったりする行為は失格となる。障害物の高さは、男子が91.4cm、女子が76.2cmである。水濠は、男女とも最深部の深さが0.7メートル、長さが3.66メートルで、障害に近いほど深い。競技場によって、水濠がトラックの内側に設置されている場合(内水濠)と外側に設置されている場合(外水濠)がある(日本では外水濠が圧倒的に多いが、近年国際大会で使用されるトラックが8レーンではなく9レーンのため世界的には内水濠が多い)。外水濠の場合は1周の距離は421メートル、内水濠の場合は1周の距離は390メートルとなる。
上述の設置パターンの違いゆえに、競技場によってスタート位置やレースパターン[1] にも違いが見られ、内水濠の方が記録は出やすいと言われているが、記録上は同一条件として扱われる。
日本では1954年以降、内水濠を日本記録として公認している[2]。
3000メートルという比較的長い距離を走りながらも、約80メートルおきに跳躍しなければならないため、スムーズなレース運びのためには、ある程度のスピード維持が必要となる。また、ハードルと違って障害は足をかけても倒れないため、転倒事故も起こりうる非常に危険なレースとなる。さらにジャンプ時の着地や水濠の通過、シューズ自体も水を吸って重くなる、といった要素によって相当な体力を奪われることになり、ペース配分を考えないと好記録はおろか完走すらおぼつかなくなるという様相で、メディア中継においては「トラック種目で最も過酷な競技」の一つとして紹介されることもある。なお、夏季オリンピックにおいての本種目は、男子は1900年パリオリンピックから、世界陸上でも第1回の1983年世界陸上ヘルシンキ大会からの正式種目であるが、女子は競技の過酷さから、正式種目となったのは2008年北京オリンピックからで、世界陸上でも2005年世界陸上ヘルシンキ大会からと遅いものであった。
現在、世界的に男子では、ケニアやエチオピアを中心としたアフリカ勢のレベルが高く、ヨーロッパ勢がそれを追う形になっている。女子も男子同様にアフリカ勢が強く、ヨーロッパ勢(特にロシア)がアフリカ勢を追う形になっている。この種目においてアジア(主に中東出身)の選手は、男女とも8位以内入賞できれば上出来といったところのレベルであるが、しばしば上位入賞ができる力量をもっている。日本人選手は比較的に健闘しており、1972年ミュンヘンオリンピックで小山隆治が9位、2003年世界陸上パリ大会で岩水嘉孝が11位、2005年世界陸上ヘルシンキ大会で早狩実紀が12位と、入賞こそ果たせなかったものの、過去3人が決勝進出を果たし、日本人選手の可能性を示してきたが、ついに2021年東京オリンピックで、三浦龍司が7位に入り、初の入賞を果たした。
世界歴代10傑
エリア記録
U20世界歴代10傑
- 樹立年の12月31日時点で年齢が20歳未満である選手のみが対象となる。
U18世界最高記録
- 樹立年の12月31日時点で年齢が18歳未満である選手のみが対象となる。
アジア歴代10傑
U20アジア歴代10傑
- 樹立年の12月31日時点で年齢が20歳未満である選手のみが対象となる。
U18アジア最高記録
- 樹立年の12月31日時点で年齢が18歳未満である選手のみが対象となる。
日本歴代10傑
日本学生歴代10傑
日本人学生歴代10傑
U20日本歴代10傑
- 樹立年の12月31日時点で年齢が20歳未満である選手のみが対象となる。
U18日本最高記録
- 樹立年の12月31日時点で年齢が18歳未満である選手のみが対象となる。
高校歴代10傑
高校学年別歴代記録
- 2002年より日本国籍のない高校生の記録は日本高校国内国際記録とされた。
五輪・世界選手権における日本人入賞者
五輪・世界選手権における日本人男子入賞者
- 2021年東京オリンピックで三浦龍司が7位入賞を果たし、この種目で日本人男子選手最初の入賞者となった。
脚注
- ^ 水濠がトラックの内側に設置されている場合は、1周目は400mコースの方を走り270m(スタートからフィニッシュラインまで)は障害は設置せず水濠も通らない。
- ^ 陸上競技マガジン1999年記録集計号321p
関連項目
外部リンク
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※太字はオリンピック・パラリンピック・世界選手権大会実施種目、斜字は性別を限定する実施種目 |