『魔界都市〈新宿〉』(まかいとし しんじゅく)は、菊地秀行のデビュー作となった小説、またその後の菊地の作品群に登場する架空都市のこと。実在の新宿と区別するために「〈 〉(カッコ)付きの“新宿”」と呼称される。
本項では、同名の小説と都市の両方について記載する。
魔震(デビル・クエイク)と呼ばれる怪現象を伴う大地震は、東京都新宿区だけを一夜で崩壊させた。それ以来、亀裂によって外界と隔絶された〈新宿〉は、エスパーやサイボーグが集まり、怪異と暴力のはびこる犯罪都市となった。
初出であり同名の小説では、世界の平和の命運を握る地球連邦首席の暗殺を防ぐため、魔道士レヴィ・ラーを倒すべく魔界都市〈新宿〉に赴いた念法(ねんぽう)の使い手、十六夜京也(いざよい きょうや)の活躍を描いた。
菊池の後発作品の〈新宿〉や「魔界医師」ドクター・メフィストなどは、本作が初出となっているが、この時点では〈新宿〉の全貌は固定されておらず、キャラクター描写などに後の作品と矛盾する点が散見される。特に作中に2030年と記述のある年代設定および魔震の発生年(同作中では199X年もしくは1999年)はこの他の魔界都市ものの作品との関係に大きなくいちがいを発生させるため、後に菊地自身がこの作品の〈新宿〉は他の作品のそれとは別のものと考えて欲しいと述べている[要出典][3]。
〈新宿〉以外の場所を舞台とした菊地の作品のキャラクターが登場するクロスオーバーの舞台ともなっており、その作品群に占める登場率の高さから、菊地は盟友である夢枕獏に「魔界都市のセンセー」とからかわれている。
200X年、新宿は、わずか3秒で崩壊した。それから数十年後の2030年、偉大な政治指導者であり同時に聖人として知られる地球連邦首席・羅摩(らま)こずみを魔道士レヴィー・ラーが呪殺しようとしていた。人類を平和と繁栄に導ける首席は、なくてはならない存在だが、政治的混乱以上にレヴィー・ラーの目的が首席を生贄に地球を魔界と化すことにあると霊能者のライ老師は、見抜いた。
かつてライ老師に師事した二人の弟子、それがレヴィー・ラーと十六夜弦一郎だった。レヴィー・ラーは、地球を第2の魔界にするという妄執に囚われており、〈新宿〉を魔界都市に変えた〈魔震〉もその計画の一部だった。レヴィー・ラーが〈新宿〉に潜んでいることは分かっていたがライ老師だが、呪いから首席を守るため、離れることができない。首席の呪いは、残り3日で首席の命を奪ってしまう。そこでもう一人の弟子であり、正義感の強かった十六夜弦一郎の遺児・京也に希望を託すことに決める。
京也は、品行方正といえないまでも父・弦一郎によって霊力を込めた木刀「阿修羅」を譲られ、強力な念法を操る霊能者に成長していた。当初、京也は、「父は自分の修業を中断した。期待にそえると思えない」「命を懸ける理由がない」と話してライ老師の依頼を断る。しかし次第に父が京也に自分の意思で世界を救うことを望んでいたと信じて〈新宿〉に向かう。
一方、父・羅摩こずみの危機に平静さをなくした娘のさやかは、指輪型レーザー銃だけを武器に〈新宿〉に一人乗り込んだ。〈新宿〉で合流した京也とさやかは、協力してレヴィー・ラーを探す。さやかは、父親譲りの聖人ぶりで月コロニー育ちも手伝って地球の悪意に満ちた常識を知らない。しかし行く先々で持ち前のカリスマ性を発揮して京也や〈新宿〉の犯罪者たちをも驚かせる。
〈新宿〉の犯罪者や亡霊、アンドロイド、レヴィー・ラーの下僕たちを切り抜け、二人は、元凶のレヴィー・ラーに挑む。力の差に苦戦する京也だったがNYにいるライ老師が最期の気力を振り絞って命と引き換えに京也を助ける。
1988年にOVA化された。収録時間は約80分。原作と内容が若干異なる。
第5回日本アニメ大賞においてオリジナルビデオソフト最優秀作品賞を受賞したものの、このアニメ版に対する菊地の評価は極めて低く、これと『吸血鬼ハンター"D"』のアニメ化がトラウマとなり、その後の『魔界都市ブルース』シリーズに対して複数持ち込まれたアニメ化企画をすべて却下したと語っている。[要出典]
協力:青二プロ
小説『魔界都市〈新宿〉』を原作とした漫画作品。作画担当は細馬信一。『月刊サスペリアミステリー』(秋田書店)にて、2001年11月号から2002年9月号まで連載された。単行本は少年チャンピオン・コミックスより刊行。全2巻。 原作との違いは以下の通り。
上記の作者の発言に基き、『魔界都市〈新宿〉』および『魔宮バビロン』を除く作品群の設定からの記載となる。
魔震によって変貌したのは〈区民〉を含む生物のみではなく、〈新宿〉の土地そのものも物理的・超常的な影響を受けて大きく様変わりしている。場所によっては土地そのものが呪われ、足を踏み入れることすら危険な場所も存在するため、〈新宿区役所〉発行の〈区外〉からの観光客向けのガイドブックでは〈区内〉の各地域をランク付けし、〈危険地帯〉と指定された場所への一般人の足の踏み入れを制限している。ただし〈安全地帯〉と認定された場所でも傷害や殺人は日常茶飯事であり、あくまでも〈区民〉にとってはある程度安全といったレベルの、比較論としてのランク付けである。〈危険地帯〉に入ることは〈区民〉にとっても生命の危険を意味し、さらにその上の〈最高危険地帯〉に立ち入ることは魂や人間としての存在の危機を招くと言われ、ごく限られた人間以外が立ち入って無事に脱出することは不可能であるとされる。
また、魔震によって〈区外〉と亀裂で切り離されたことにより、地上・地下を問わずすべての鉄道路線はその運行を休止しており、その再開発も断念された状態である。地上の駅舎跡はランドマークとして各所に残るが、地下のトンネルは魔震後に発見された、あるいは「発生した」地下洞窟(一部は亀裂と結ばれている)などにつながっており、妖物や妖人がはびこる魔窟と化している。
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