『籠の聖母』(伊: Madonna della Cesta, 英: The Madonna of the Basket)は、ルネサンス期のイタリアの画家コレッジョが1524年頃に制作した絵画である。名前の由来は絵画に籠が描かれていることによる。油彩。コレッジョ特有の優しく穏やかな聖母子像が特徴で、画家の芸術が成熟を見せる時期に制作され、ジョルジョ・ヴァザーリによって早くも言及されている[1][2][3]。小品ながらも保存状態はきわめてよく[1][2]、レオナルド・ダ・ヴィンチなど様々な巨匠の影響がうかがえる作品となっている。現在はロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されている。ただし展示はされていない[1]。
ヴァザーリの記述から本作品はパルマの貴族、カヴァリエール・フランチェスコ・バイアルド(1486年-1561年, Cavaliere Francesco Baiardo)のコレクションであったことが知られている。この人物は詩人アンドレアの息子で、コレッジョの友人であり、後にパルミジャニーノのパトロンとなった[1][2]。
次に記録に現れたとき絵画はスペインに移っており、マドリードのアルカサルの1666年の目録に記載されている[2]。その後、半島戦争中にイギリス人画家で美術商のジョージ・オーガスタス・ウォリス(イタリア語版)に売却され、ベルギーの画商クリスティアン・ヨハネス・ニーヴェンホイス(Christian Johannes Nieuwenhuys)の手に渡った。ナショナル・ギャラリーが本作品をニーヴェンホイスから購入したのは美術館設立の翌年の1825年のことである[1]。価格は3,800ポンドであった[2]。前年に取得した銀行家ジャン・ジュリアス・アンガースタイン(英語版)のコレクションはコレッジョと関係のある作品を複数含んでいたが、いずれも画家本人のものではなく、本作品の購入によって数少ないコレッジョの最初のコレクションを形成することとなった。