猫投下作戦(ねことうかさくせん、英語:Operation Cat Drop)とは、1950年代に世界保健機関(WHO)がボルネオ島で実施したと伝えられる環境保全活動。書籍やインターネットで話題として取り上げられるが[1][2]、その実像は一般に伝えられるものとは違っている。一般に広まっている話の骨子は次のようなものである。
1950年代初期にボルネオ島で
マラリアの流行があった。そこで、WHOはマラリア原虫を媒介する
蚊を撲滅するために
殺虫剤の
DDTを広範囲に散布した。その結果、マラリアの発生を抑えることができたが、無関係な昆虫も同時に駆除することになった。
その副作用として、次の二つの出来事が起きた。(1)
スズメバチが減少したことで、家屋の屋根を侵食する毛虫が大量発生した。(2)
食物連鎖で
猫にDDTの蓄積が起き、猫が死亡して、
ネズミの大量発生が起きた。
ネズミの大量発生に伴って、それらが媒介する
発疹チフスや
ペストの発生が憂慮される事態になった。そこで、WHOは
イギリス空軍の協力の下、猫に
パラシュートをつけて空から投下する作戦を実施した。
一説によると投下した猫は1万4千匹にのぼったという[2]。以上の物語は、環境問題の複雑さを「風が吹くと桶屋が儲かる」的に解説するものとして話題に取り上げられている。この物語は、トム・ハリソンによる1965年のAnimals誌の記事[2]、あるいは1969年11月13日のニューヨーク・タイムズの記事[1]が源流になっていると伝えられている。
しかしながら、実際に行われた作戦に関する記録としては、英国空軍記録に「1960年3月13日に各種資材と同時に『籠に入れられた20匹以上の猫』が投下された」と書き残されているに過ぎない[3][4]。
巷間の話とその記録との間には、
- 猫の頭数が20匹強であること。
- 猫は籠に入れられていたこと。
- 猫の役割は、「作物を荒らすネズミと戦う」ためであって、感染症予防の目的ではなかったこと。
の違いがある。
2000年代後半でも、バリ島土産などとしてパラシュートを着けた猫「パラシュートネコ」をデザインした小物が市販されている。
関連文献
以下の文献が本記事の話の出所とされている。
脚注