特例市

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:政令指定都市       :中核市       :施行時特例市

特例市(とくれいし)は、日本地方公共団体のうち「法定人口が20万人以上」の要件を満たし、地方自治法第252条の26の3第1項に定める政令による特別指定を受けたのこと。かつて存在した都道府県の事務権限の一部を移譲する大都市制度の1つで、2015年に制度としては廃止され、廃止時に特例市だった市のうち中核市等に移行しなかった市は施行時特例市と呼ばれ、中核市移行に際し経過措置がとられている。

概要

施行当時

特例市制度は2000年(平成12年)4月1日から施行され、同年11月1日から2014年(平成26年)4月1日にかけて指定がなされた。

これにより日本の大都市制度は、政令指定都市(要件:法定人口50万人以上)・中核市(当時の要件:法定人口30万人以上)・特例市(当時の要件:法定人口20万人以上)の3段階となった。これらはいずれも都市の規模に応じて、都道府県の事務権限の一部が市に移譲される制度で、特例市には「中核市に準じた事務の範囲」が移譲された。

特例市の指定は、関係市からの申出に基づき、市議会及び都道府県議会の議決を経て、政令でなされた。一度指定されると、法定人口推計人口が減少して20万人以下になったとしても指定は解除されず、また法定人口が30万人以上になった場合でも自動的に中核市に昇格するわけではなく、中核市指定の手続きを改めてすることになっていた。

制度の廃止

「特例市と中核市との区別を無くそう」という意見が中核市市長会全国特例市市長会の双方から出されており、これらの問題を取り扱う国の地方制度調査会側も前向きな姿勢を見せた[1]。その結果、2014年(平成26年)5月23日可決・成立の改正地方自治法(当該部分の施行は2015年4月1日)により、特例市制度が廃止されるとともに、中核市の人口要件を「20万人以上」に緩和し双方を事実上統合することとなった。

改正法施行の時点で中核市に移行していない特例市は、制度上は他の一般市と同格となり、仮に人口が20万人を超えていても中核市指定のためには改めての手続きが必要となっている。ただしこれらの市は「施行時特例市」に指定され、経過措置として従来の特例市の事務権限を引き続き保持出来るとともに、前述の改正法施行後5年間(2020年4月1日まで)に限り、人口が20万人未満になったとしても中核市に移行できるものとされている。この中核市への移行についての人口特例は、期限が延長されずに2020年に終了している。事務権限については、期限はないので2020年4月以降も変更はない。ただしもともと特例市の制度は、一律に権限の委譲がされるのではなく、個々に移譲の範囲が決定され、施行時特例市は、地方自治法の一部を改正する法律(平成26年法律第42号)附則第2条に「施行時特例市が処理する事務に関する法令の立案に当たっては、同号に掲げる規定の施行の際施行時特例市が処理することとされている事務を都道府県が処理することとすることがないよう配慮」と規程されることにより、個々の法令ベースで規定されている。

なお「施行時」特例市の施行時とは、制度廃止の施行時を意味する。先述のとおり、制度施行時からの特例市は存在しない。

移譲される事務

法令上は、「中核市が処理することができる事務のうち、『都道府県が一体的に処理すべき』とされた事務以外のものを処理する」と定義される。

行政分野ごとに個別にみると、特例市は環境保全行政・都市計画行政の分野において、中核市に近い権限を持つことになる。中核市との大きな相違点(中核市に認められ、特例市には認められないもの)としては、民生行政(社会福祉関係の事務)、保健衛生行政(中核市は自ら保健所を設置して処理)、地方教育行政(中核市は県費負担教職員に対して研修実施の権限)に関する事務などがあげられる。特例市に指定されると、移譲を受けた事務権限を行使するために必要な財源として、地方交付税が増額される。

特例市に移譲される権限は、すべて列挙すれば1000件程度にのぼるため、ここでは主要な権限のみを抜粋して掲載する。なお、ここに掲げるのはあくまでも標準的な特例市の例であり、都道府県が独自の条例を制定して、更に多くの権限を移譲することも可能である。

事務 特例市が移譲される事務 中核市との違い(中核市に認められ、特例市に認められない事務)
民生行政に関する事務

特例市に移譲される事務はない

特例市に該当するものはない。
保健衛生行政に関する事務

特例市に移譲される事務はない。
中核市は、自ら保健所を設置。政令市と同様の権限

特例市に該当するものはない。
都市計画に関する事務

都市景観の保全を除き、中核市と同様の権限

左記の特例市の事務に加えて、

環境保全行政に関する事務

中核市の権限の一部

左記の特例市の事務に加えて、

地方教育行政に関する事務

特例市に移譲される事務はない。
中核市は、県費負担教職員に研修を実施する権限

特例市に該当するものはない。
中核市は、県費負担教職員の研修権限がある[注 1]
行政組織上の特例・その他
  • 計量法に基づく勧告・定期検査(計量法関係)

関与の特例については、該当なし。

計量法事務は中核市にも該当。
中核市として移譲された事務については、通常都道府県知事の監督が必要とされる場合でも
その監督を受ける必要がなく、直接主任の大臣の監督となる。  

特例市の一覧

施行時特例市

特例市制度廃止時点に特例市に指定されていた市のうち、中核市や政令指定都市に移行していない市。2021年4月1日現在、以下の23市が「施行時特例市」に指定されている。

地方 都道府県 自治体名 特例市の指定日 特記事項
関東地方 茨城県 08220 つくば市 2007年(平成19年)4月1日 中核市移行を検討している[2]
群馬県 10204 伊勢崎市 2007年(平成19年)4月1日
10205 太田市 2007年(平成19年)4月1日
埼玉県 11208 所沢市 2002年(平成14年)4月1日 施行時特例市の中で最も推計人口が多い。2030年4月の中核市移行を目指している[3]
11221 草加市 2004年(平成16年)4月1日
11214 春日部市 2008年(平成20年)4月1日
11202 熊谷市 2009年(平成21年)4月1日 特例期限中の中核市移行は見送る方針[4]

神奈川県

14206 小田原市 2000年(平成12年)11月1日
14213 大和市 2000年(平成12年)11月1日
14203 平塚市 2001年(平成13年)4月1日
14212 厚木市 2002年(平成14年)4月1日
14207 茅ヶ崎市 2003年(平成15年)4月1日
中部地方 新潟県 15202 長岡市 2007年(平成19年)4月1日
15222 上越市 2007年(平成19年)4月1日 施行時特例市の中で最も推計人口が少ない。
静岡県 22203 沼津市 2000年(平成12年)11月1日
22210 富士市 2001年(平成13年)4月1日
愛知県 23206 春日井市 2001年(平成13年)4月1日
三重県 24202 四日市市 2000年(平成12年)11月1日
近畿地方 大阪府 27211 茨木市 2001年(平成13年)4月1日
27202 岸和田市 2002年(平成14年)4月1日 2018年4月の中核市移行を目指していたが、2016年12月6日に見送ることを発表。
兵庫県 28210 加古川市 2002年(平成14年)4月1日
28214 宝塚市 2003年(平成15年)4月1日
九州地方 佐賀県 41201 佐賀市 2014年(平成26年)4月1日 県庁所在地

かつての特例市

「指定解除日」が2015年4月2日以降のものは施行時特例市からの解除、それより前のものは特例市からの解除。

都道府県 自治体名 特例市の指定日 指定解除日と理由
静岡県 清水市 2001年(平成13年)4月1日 2003年(平成15年)4月1日に廃止[注 2]
北海道 函館市 2000年(平成12年)11月1日 2005年(平成17年)10月1日に中核市移行。
山口県 下関市 2002年(平成14年)4月1日[注 3] 2005年(平成17年)10月1日に中核市移行。
岩手県 盛岡市 2000年(平成12年)11月1日 2008年(平成20年)4月1日に中核市移行。
福岡県 久留米市 2001年(平成13年)4月1日 2008年(平成20年)4月1日に中核市移行。
群馬県 前橋市 2001年(平成13年)4月1日 2009年(平成21年)4月1日に中核市移行。
滋賀県 大津市 2001年(平成13年)4月1日 2009年(平成21年)4月1日に中核市移行。
兵庫県 尼崎市 2001年(平成13年)4月1日 2009年(平成21年)4月1日に中核市移行。
群馬県 高崎市 2001年(平成13年)4月1日 2011年(平成23年)4月1日に中核市移行[5]
大阪府 豊中市 2001年(平成13年)4月1日 2012年(平成24年)4月1日に中核市移行。
枚方市 2001年(平成13年)4月1日 2014年(平成26年)4月1日に中核市移行。
埼玉県 越谷市 2003年(平成15年)4月1日 2015年(平成27年)4月1日に中核市移行。
広島県 呉市 2000年(平成12年)11月1日 2016年(平成28年)4月1日に中核市移行。
長崎県 佐世保市 2001年(平成13年)4月1日 2016年(平成28年)4月1日に中核市移行。
青森県 八戸市 2001年(平成13年)4月1日 2017年(平成29年)1月1日に中核市移行。
埼玉県 川口市 2001年(平成13年)4月1日 2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
大阪府 八尾市 2001年(平成13年)4月1日 2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
兵庫県 明石市 2002年(平成14年)4月1日 2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
鳥取県 鳥取市 2005年(平成17年)10月1日 2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
島根県 松江市 2012年(平成24年)4月1日 2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
山形県 山形市 2001年(平成13年)4月1日 2019年(平成31年)4月1日に中核市移行。
福井県 福井市 2000年(平成12年)11月1日 2019年(平成31年)4月1日に中核市移行。
山梨県 甲府市 2000年(平成12年)11月1日 2019年(平成31年)4月1日に中核市移行。
大阪府 寝屋川市 2001年(平成13年)4月1日 2019年(平成31年)4月1日に中核市移行。
茨城県 水戸市 2001年(平成13年)4月1日 2020年(令和2年)4月1日に中核市移行。
大阪府 吹田市 2001年(平成13年)4月1日 2020年(令和2年)4月1日に中核市移行。
長野県 松本市 2000年(平成12年)11月1日 2021年(令和3年)4月1日に中核市移行。
愛知県 一宮市 2002年(平成14年)4月1日 2021年(令和3年)4月1日に中核市移行。

人口順位

  • 推計人口による順位などは、各項目名にあるボタンをクリックすることで得られる。
  • 人口の単位は「人」。


都道
府県
法定人口
(人)
推計人口
(人)
増減率
(%)
種別
推計人口の
統計年月日
1 埼玉県 所沢市 342,464 340,774 -0.49 施行時特例市 2024年10月1日
2 愛知県 春日井市 308,681 303,833 -1.57 施行時特例市 2024年10月1日
3 三重県 四日市市 305,424 300,457 -1.63 施行時特例市 2024年10月1日
4 大阪府 茨木市 287,730 290,614 +1.00 施行時特例市 2024年10月1日
5 新潟県 長岡市 266,936 255,833 -4.16 施行時特例市 2024年10月1日
6 兵庫県 加古川市 260,878 254,947 -2.27 施行時特例市 2024年10月1日
7 神奈川県 平塚市 258,422 258,380 -0.02 施行時特例市 2024年10月1日
8 埼玉県 草加市 248,304 249,795 +0.60 施行時特例市 2024年10月1日
9 静岡県 富士市 245,392 239,767 -2.29 施行時特例市 2024年11月1日
10 神奈川県 茅ヶ崎市 242,389 245,419 +1.25 施行時特例市 2024年10月1日
11 茨城県 つくば市 241,656 260,083 +7.63 施行時特例市 2024年11月1日
12 神奈川県 大和市 239,169 244,113 +2.07 施行時特例市 2024年10月1日
13 佐賀県 佐賀市 233,301 228,293 -2.15 施行時特例市 2024年10月1日
14 埼玉県 春日部市 229,792 226,210 -1.56 施行時特例市 2024年10月1日
15 兵庫県 宝塚市 226,432 220,927 -2.43 施行時特例市 2024年10月1日
16 神奈川県 厚木市 223,705 223,704 -0.00 施行時特例市 2024年10月1日
17 群馬県 太田市 223,014 221,837 -0.53 施行時特例市 2024年11月1日
18 群馬県 伊勢崎市 211,850 210,754 -0.52 施行時特例市 2024年11月1日
19 埼玉県 熊谷市 194,415 189,898 -2.32 施行時特例市 2024年10月1日
20 大阪府 岸和田市 190,658 184,410 -3.28 施行時特例市 2024年10月1日
21 静岡県 沼津市 189,386 181,801 -4.01 施行時特例市 2024年11月1日
22 神奈川県 小田原市 188,856 185,926 -1.55 施行時特例市 2024年10月1日
23 新潟県 上越市 188,047 179,294 -4.65 施行時特例市 2024年10月1日

将来人口推計

  • 人口の単位は「人」。

都道

府県

2045年

推計人口

2021年

推計人口

1 埼玉県 所沢市 292,000 342,144
2 愛知県 春日井市 267,694 307,181
3 三重県 四日市市 283,410 304,000
4 大阪府 茨木市 265,917 288,620
5 新潟県 長岡市 208,572 262,381
6 兵庫県 加古川市 230,558 258,411
7 神奈川県 平塚市 208,823 257,503
8 埼玉県 草加市 219,300 248,978
9 静岡県 富士市 183328 242,890
10 神奈川県 茅ヶ崎市 227190 243,951
11 茨城県 つくば市 242804 250,724
12 神奈川県 大和市 219973 241,956
13 佐賀県 佐賀市 209719 231,275
14 埼玉県 春日部市 172,578 228,411
15 兵庫県 宝塚市 185968 224,614
16 神奈川県 厚木市 193759 223,991
17 群馬県 太田市 200107 221,355
18 群馬県 伊勢崎市 188505 210,742
19 埼玉県 熊谷市 150,068 193,126
20 大阪府 岸和田市 147949 187,542
21 静岡県 沼津市 134052 186,169
22 神奈川県 小田原市 146484 187,564
23 新潟県 上越市 143032 184,210

脚注

注釈

  1. ^ 中核市には、教職員の研修実施の権限のみがある。ただし、中核市市長会から「研修権限のみでは成果を得にくい」との要望が出ており、文部科学省では、中核市にも人事権を移譲する検討を進めている。(読売新聞平成19年5月2日付)
  2. ^ 静岡市(当時中核市)と合併し現在の静岡市となった。合併当日に静岡市は改めて中核市の指定を受け、2005年4月1日に政令指定都市に移行。特例市が廃止された唯一のケース。また同区域は全国で唯一、一般市から特例市、中核市、政令指定都市の順に指定を受けている。
  3. ^ 旧・下関市の特例市指定日。現在の下関市は2005年(平成17年)2月13日に旧・下関市と豊浦郡4町が新設合併して発足したもので、旧・下関市は自治体としては消滅。現在の下関市が特例市に指定されたのは市発足の当日。

出典

  1. ^ 「中核市」と「特例市」の統合をDAILYSPORTONLINE2012年11月7日配信記事(同年11月8日閲覧))
  2. ^ つくば市が中核市候補市として中核市市長会へ加入しました(H27.12.1)|中核市市長会 2016年9月5日閲覧。
  3. ^ 令和12年4月に中核市への移行を目指しています”. www.city.tokorozawa.saitama.jp. 2024年9月6日閲覧。
  4. ^ 平成28年5月1日発行 くまがや市議会だより第43号 9頁 (平成30年4月1日閲覧)
  5. ^ 群馬県高崎市が中核市に 来年4月に施行 閣議決定(朝日新聞2010年10月15日付)

関連項目

外部リンク