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この項目では、自動車メーカーについて説明しています。比亜迪汽車の親会社については「比亜迪」をご覧ください。 |
比亜迪汽車工業有限公司(略称:BYD Auto、簡体字中国語: 比亚迪汽车、繁体字中国語: 比亞迪汽車、拼音: Bǐyàdí Qìchē)は、広東省深圳市に拠点を置く中華人民共和国の自動車メーカー。会社の理念は「技術為王、創新為本」(革新を基本とし、技術で王になる)。
2023年10~12月期の電気自動車(EV)の世界販売台数では米テスラを上回り首位となった[1]。2023年1月、日本国内で乗用車の販売を開始した[2]。
概要
比亜迪汽車(BYD Auto)は、1995年に設立された中華人民共和国のバッテリーメーカー比亜迪股份有限公司(BYD Company)の子会社として2003年に設立され、自動車事業に参入した。BYDは原材料の調達からバッテリー製造、車両組立まで一貫して行う垂直統合型のビジネスモデルにより生産コストを抑え、中国国内のEV・PHVカテゴリで高い競争力を持つ[3]。
2020年に「ブレード・バッテリー」と呼ばれる自社開発のリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)を発表した。三元系リチウムイオン電池と比較して高い安全性、長寿命、コスト効率を強みとする[4]。これらの電池はトヨタ自動車やテスラの車種へも納入実績があるとされる[5][6]。
2023年の世界販売台数は約302万台で、前年比62%増の急成長を遂げている。8割以上は中国市場であるものの、世界の自動車メーカーとの比較では独メルセデス・ベンツやBMWを超え、世界販売台数トップ10に入る水準に達している[7]。
創業者で現会長の王伝福は、2009年度版の胡潤百富榜の評価では総資産350億元(日本円で約4,556億円)と、中国一の資産家であった[8]。2024年時点では142億ドル(約2兆1000億円)で中国国内10位であった[9]。
沿革
会社の前身は、中小自動車メーカーの西安秦川汽車有限公司であり、比亜迪が経営危機に陥った同社を2003年に買収した後、新会社として設立された。これによりBYDは自動車製造のライセンスと既存の生産設備を獲得した。
2005年に最初の自社ブランド車「F3」を発売し、2008年12月15日には世界初の量産型プラグインハイブリッドカー「BYD F3DM」を発売した。
2010年4月1日、日本の金型メーカーオギハラの館林工場(群馬県)を買収し、館林工場の土地、建物、設備と従業員約80人を引き継いだ。これによりオギハラが開発した金型を中国本土に持ち込み、BYDへの技術移転が進められた[10]。
2016年にはアルファロメオ、アウディ、フォルクスワーゲンのチーフデザイナーなどを歴任したヴォルフガング・エッガーら欧州のデザイナーを迎え、カーデザインの向上が図られた[11]。
2021年には新たなEV向けプラットフォーム「e-Platform3.0」を発表した。
中国政府のEVへの補助金を活用し、中国国内と一部中国国外にも積極的に販売している。2016年時点で電気自動車の販売数では世界一である[12]。2020年代においてもEVの世界販売台数で米・テスラと1、2位を争う関係にある[13]。
国際展開
2020年代に入り、BYDは乗用車市場での海外展開を加速させている。特にオーストラリア、タイなどのEV市場で販売シェアを高めている[14][15]。
2022年、初の完成車の中国国外工場をタイに建設することを決定[16]、WHAグループと工場用地の購入などに関わる契約を結んだ。2024年に操業を開始予定で、右ハンドル車を中心に年間約15万台を生産し、タイ国内および近隣諸国向けに出荷する計画である。 また、同年10月にはドイツのレンタカー会社シクストとパートナーシップ協定を締結したと発表[17]。ドイツ、オランダ、フランス、イギリスで運用を開始する予定。
北米市場への本格参入も検討中であり、メキシコでの生産拠点設立を視野に入れている[18]。
欧州市場では、中国産EVに対して欧州委員会による追加関税が2024年7月から課されることが決定されるなど障壁が多い。ただし、BYDは対象企業の中で最も低い17.4%と設定されており、欧州での利益率の高さから影響は少ないとの見方もある[19][20]。
2024年上半期の海外販売台数は27万台で、全体に占める割合は14%であったが、2030年までに海外比率を50%まで高める見通しを示した[21]。
日本市場への進出
2005年に日本法人を設立し商用車市場に参入したのち、2023年1月には日本市場での乗用車販売を開始した。SUV「ATTO 3」は440万円と設定された。2024年6月までに「ドルフィン」「シール」の合計3車種を投入した[22]。
主要株主
世界最大の投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイの会長兼CEOのウォーレン・バフェットが、MidAmerican Energy社を通じて親会社の比亜迪に2008年から出資している[23]。「M6」発売のセレモニーには、バフェットと盟友のビル・ゲイツが出席している[24]。
車種
乗用車
日本市場向けのモデルは欧州の自動車安全性テスト機関ユーロNCAPで5つ星を獲得している。また、自動緊急ブレーキなどのADAS(先進運転支援システム)が標準搭載されている[25]。日本の急速充電規格であるCHAdeMO方式にも対応する。
方程豹(FangChengBao、ファンチェンバオ)、騰勢(denza、tengshi)、仰望(yangwan、ヤンワン)の3つのブラ ンドをもち幅広い車種展開をしている。国内への展開はない(2024年12月時点)
現行車種
(2021年現在[26])
過去に販売していた車種
バス
Kシリーズ
2010年から販売が開始されたリン酸鉄リチウムバッテリーを搭載したBYD社初の電気バスシリーズ
- K5 - 小型電気バス(全長6.0m)
- K6 - 小型電気バス(全長6.5m)
- K7 - 中型電気バス
- K8 - 大型電気バス(全長10.5m)
- K8S - 二階建電気バス
- K8M - 大型電気バス(全長11.5mのアメリカ市場向け車種)
- K9 - 大型電気バス(全長12.0m)
- K9A
- K9B
- K9D
- K9DA
- K9F
- K9FE
- K9M - 大型電気バス(全長12.0mのアメリカ市場向け車種)
- K9R
- K9RA
- K10B - 空港構内向け大型電気バス
- K11M - 電気連節バス
- K11U - 電気連節バス
- K12A - 電気二連節バス(全長26.8m)
Bシリーズ
2020年に販売が開始されたリン酸鉄リチウムブレードバッテリーを搭載したKシリーズのフルモデルチェンジ車種
- B6 - 小型電気バス(全長6.0m)
- B7 - 小型電気バス(全長7.0mのJ6をベースにした中国・香港市場向け車種)
- B8 - 中型電気バス(全長8.0m)
- B10 - 大型電気バス(全長10.5m)
- B12 - 大型電気バス(全長12.0m)
- B18 - 電気連節バス
トラック
- T5 - 小型電気トラック
- T7 - 中型電気トラック
- T8 - 大型電気トラック
- T10 - 大型電気トラック
- 8TT - 大型電気トラック(トラクターヘッド)
- Q1M / BYD 8Y - 大型電気トーイングトラクター
フォークリフト
- RTS15
- ECB16
- ECB16S
- ECB18
- ECB18S
- ECB20
- ECB25
- ECB30
- ECB35
- ECB40
- ECB45
- ECB50
- P20PS - 乗り込み式ハンドパレット
- P20JW - ハンドパレット
日本法人
日本国内では、2005年7月に現地法人「ビーワイディージャパン株式会社」(通常表記は「BYDジャパン」)を設立。最初の日本市場投入車は、後述記載する商用車の大型電気路線バスである[27]。
バス
2015年に中国メーカーとしては日本で初めて、京都市内の路線バス「プリンセスライン」に大型電気バス「K9」を導入[28][29]したのを皮切りに、日本国内では同社の電気バスを導入する事業者が増え、日本市場向けのモデルも登場している[30]。2019年には国内初となる観光バス用電気バスとして「C9」を沖縄県の伊江島観光バスが2台導入[31]。2021年には日本市場で販売する海外メーカーとしては初めて、国土交通省の「標準仕様ノンステップバス認定」をK8が取得し、その後J6も認定を取得している[32]。日本国内での電気バスのシェアは7割に達する[33]。
2021年には日野自動車がBYDからの技術供与の上、J6のOEM車種である小型電気バス「日野・ポンチョZ EV」を2022年春に販売開始すると発表したが[34]、その後品質の作り込みに期間を要していることを理由に2022年度中に発売が延期された[35]後、2023年2月16日に日本自動車工業会が自主的に規制している発がん性物質『六価クロム』が使用されている事が判明した為[36]、発売が凍結された事を発表した[37]。また、ビーワイディージャパン側も六価クロムの使用を認めた上で、乗員乗客及び整備員の人体への影響は無いとした上で、2023年末に発売予定の新型バスには日本自動車工業会の基準に準拠した素材で製造すると発表した[38]。この発表を受けて、同じく中国で製造し、日本で販売する同業他社のアルファバスも部品の一部に六価クロムが使用されていたことを公表するなど、日本国内でこの問題に関する影響が広がり、バス事業者の一部では運行休止や導入延期の対応が採られた[39]。同社の電気バスを保有する岩手県交通などでは、メーカーによる対象部品の無償交換が行われ、安全を確認したうえで運行を再開している[40]。
フォークリフト
日本では鉛電池を搭載したフォークリフトが一般的に多く使用されているが、バス販売に続き、BYDでは3時間の充電で10時間稼働可能なリチウムイオン電池を搭載したフォークリフトを2016年から販売している[41][42]。鉛電池型の方が導入コストと電池交換コストは低く抑えることができ、市場ではガソリンやLPGなどの内燃式との2択である中、BYDでは国内メーカーの鉛電池型と同等の価格で購入でき、充電時間の短さとランニングコストが低く抑えられる点が利点であるとしている[42]。2020年7月、BYD製電動フォークリフトの販売・整備などを行うビーワイディージャパンの子会社「BYD FORKLIFT JAPAN株式会社」を設立(本社は群馬県館林市)[27]。
乗用車
2022年2月に、EVモデルの e6 を法人向けに発売。
2022年7月4日には、乗用車の販売とアフターサービス、およびその関連業務を行うビーワイディージャパンの子会社「BYD Auto Japan株式会社」を横浜市に設立。同月21日、コンパクトカーの DOLPHIN(海豚)、SUVのATTO 3(元 Plus)、ハイエンド e-セダンの SEAL(海豹)の電気自動車3車種を日本で展開することを発表した[43]。
2023年1月31日、SUVのATTO 3の販売を開始し、同日より日本国内に開店準備室をオープンさせたほか、翌2月2日にはショールームを備えた店舗の日本1号店を神奈川県横浜市緑区にオープンした[44]。同時にカーシェアサービス「エニカ(Anyca)」に加盟し正規ディーラーでATTO 3をシェアカー提供する[45]。
同年9月、コンパクトカーのDOLPHINの販売を開始。セダンのSEALを2024年6月に販売開始した。
販売にあたっては、各地の販売会社と正規ディーラー契約を結んで全国展開する。アフターサービス業務の支援として自動車部品商社「明治産業」と提携し、正規ディーラーのスタッフに向けたサービス技術トレーニングを同社に委託する[46]。
2024年より長澤まさみを起用して各種広告を開始。キャッチコピーは「ありかも、BYD!」「Hello,e-Life!」
ギャラリー
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漢(ハン) EV
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漢(ハン) DM
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秦(チン) Plus EV
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秦(チン) Plus DM-i
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唐(タン) 第2世代
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宋(ソン) Plus EV
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宋(ソン) Plus DM-i
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ATTO 3(日本仕様)
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DOLPHIN(日本仕様)
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海豹(SEAL)
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K11U(ノルウェー・オスロのEV連節路線バス)
関連項目
脚注
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
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