月神(げっしん、つきがみ英語: lunar deity[1][2])は、月を神格化した神。
概要
太陽神が権力や支配者と結び付けられるのに対し、月神は寿命や性、庶民と結び付けられる[3]。また、日本神話にツクヨミが保食神を殺し、その死体から穀物が生じた、という神話があるように、月と農耕が結び付けられる場合もあり、類似するハイヌウェレ型神話は他の民族にも見られる[3]。
宗教と神話における月
太陽が一日周期で軌道を持つのに対し、月は一ヶ月周期の軌道を持っている。そのため、多くの文化で女性の月経周期と暗に関連付けられ、多くの語族では「月」と「月経」という語句が結び付けられている[4]。ギリシア神話のポイベー、アルテミス、セレーネーや、中国神話の嫦娥のように、有名な神話の多くは月神を女神としている。
他方、男性の月神としては、メソポタミア神話のシンや、北欧神話のマーニ、日本神話のツクヨミなどが挙げられる。これらの文化は一般に、太陽神を女神としている[注 1]。ギリシアやエジプトの文明では、月神信仰が一般的に行なわれていた。例えば、テーベで信仰されたイビスとコンスはどちらも月神である。エジプト神話のトートもまた月神とされるが、イビスやコンスよりも複雑な特徴を持っている[5]。原初の印欧系宗教における月神は、男神であった[6]。
ギリシア神話のアルテミスのように、元来は月神としての性質を持ち合わせなかった神で、古代末期にセレーネーと習合されるようになったものもいる。ローマ神話のディアーナとルーナもそれに類似する関係性である。男神では、ギリシア神話のヘルメースはトートなど、エジプト神話の男神と同一視される場合があった。また、ギリシアでは、スパルタの英雄・メネラーオスにも、月神の性質が見られる。
ヒンドゥー教のチャンドラという語句は「月」を意味しており、カルバ・チョート(英語版)[注 2]や、日食・月食の際など、多くの宗教祭儀において重要な役割を持っていた。
月は中世から近現代に到るまで、Madonna Orienteの崇拝など、ウィッチクラフトにおいても信仰される。
それらの信仰は芸術や文学に顕著に表され、また、占星術や神学にも特徴を残している。
主な世界の月神
脚注
注釈
出典
- ^ lunar deityの意味 - 英和辞典 Weblio辞書
- ^ 世界大百科事典,コトバンク
- ^ a b “月神(げっしん)とは”. コトバンク. 2017年10月27日閲覧。
- ^ Harding, Esther M., 'Woman's Mysteries: Ancient and Modern', London: Rider, 1971, p. 24.
- ^ Boylan, Patrick (1922). Thoth, the Hermes of Egypt: a study of some aspects of theological thought in ancient Egypt. Oxford University Press. p. 75
- ^ Dexter, Miriam Robbins. Proto-Indo-European Sun Maidens and Gods of the Moon. Mankind Quarterly 25:1 & 2 (Fall/Winter, 1984), pp. 137–144.
関連項目