共格(きょうかく、comitative case)とは、誰かと一緒に何かを行う相手を表す格である。付格(ふかく、sociative case、associative case、accompanitive case)とも呼ばれる。
たとえば (1) のバスク語の例では、共格名詞句 zurekin は「あなた」が「私」と一緒に「降りる」という行為を行う相手であることを表している。
(1) |
|
バスク語 |
|
|
|
|
|
Jaitsi-ko |
naiz |
zu-rekin ? |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
| |
降りる-FUT |
私.INTR |
あなた-COM |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
| |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
| | 「あなたと一緒に降りましょうか?」
[1]:148 |
インド・ヨーロッパ語族では具格が随伴の用法を持ち、ヴェーダ語などでは単独で使われるが、スラヴ語派ではほとんど常に前置詞(ロシア語: с(о))をともなう[2]。
共格の表す意味
共格が表す、誰かと一緒に何かを行う「相手」のことを随伴者(ずいはんしゃ、companion)、随伴者と一緒に何かを行う「主体」のことを被随伴者(ひずいはんしゃ、accompanee)という。
随伴者および被随伴者には、有生性に関する次のような意味的な制限が見られる場合がある。
- 随伴者と被随伴者のいずれも人間(あるいは少なくとも有生)でなければならない。たとえばカルムイク語の -la/-lä は随伴者と被随伴者のいずれも人間である必要がある。
- 随伴者と被随伴者が同程度の有生性でなければならない。たとえばグアラニー語では随伴者と被随伴者の有生性が高い場合には ndive を、低い場合には reheve を用いる。
- 被随伴者の有生性が高くなければならない。
エストニア語の -ga のように、有生性に関する制限がない場合もある。
出典
- ^
de Rijk, Rudolf P. G. 2006. Standard Basque: A progressive grammar. Cambridge, MA: MIT Press.
- ^ 高津春繁『印欧語比較文法』岩波書店、1954年、207-208頁。