メルボルン市電D形電車

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メルボルン市電D1形電車
メルボルン市電D2形電車
D1形(2014年撮影)

D2形(2013年撮影)
基本情報
運用者 Mトラム英語版ヤラトラム英語版
製造所 シーメンス
製造年 2002年 - 2004年
製造数 D1形 38両(3501 - 3538)
D2形 21両(5001 - 5021)
運用開始 2002年11月
投入先 メルボルン市電
主要諸元
編成 D1形 3車体連接車
D2形 5車体連接車
軸配置 D1形 Bo′+Bo′
D2形 Bo′+2′+Bo′
軌間 1,435 mm
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
設計最高速度 70 km/h
編成定員 D1形 90人(着席32人)
D2形 140人(着席56人)
車両重量 D1形 25.5 t
D2形 34.5 t
全長 D1形 20,040 mm
D2形 29,850 mm
全幅 2,650 mm
床面高さ 300 mm
(低床率100 %)
台車 動力台車:SF 30 C TFW
D2形無動力台車:SF 30 C LFW[1]
車輪径 600 mm[1]
固定軸距 1,800 mm[1]
主電動機 シーメンス製
1TB1422-0GA03[2]
主電動機出力 100 kW
出力 400 kW
備考 主要数値は[3][4][5][6]に基づく。
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D形は、オーストラリアメルボルンの路面電車であるメルボルン市電に在籍する電車の1形式。車内全体が低床構造となっている超低床電車で、3車体連接車D1形、5車体連接車のD2形の2種類が存在する[3][4][5][6]

概要

オーストラリアの大都市・メルボルン市内に存在する路面電車メルボルン市電)は長年公営組織によって運営されていたが、サービス向上や事業の効率化を目的に列車の運営権を民間企業へ割譲する事となり、1997年に路線ブランドを東西・南北に分割した後、1999年以降フランチャイズ契約を結んだ各民間企業が運営を担当する事となった。それ以降、両社は車両や施設の近代化を積極的に実施する事となったが、その中で南北系統の運営を担当したスワンストン・トラム(→Mトラム)英語版1999年に発注した超低床電車がD形である[注釈 1][5][6][8]

D形はシーメンスが展開した路面電車ブランド・「コンビーノ」の1形式で、フローティング車体を含めた連接構造を有する超低床電車である。メルボルンには編成が異なる2種類の車両が導入されており、3車体連接車は「D1形」、5車体連接車には「D2形」という形式名が付けられている[3][4][5]

最初の車両は2002年11月から営業運転を開始したが、同年にスワンストン・トラム改めMトラム(M>Tram)を運営していたナショナル・エクスプレス英語版が収益性の問題からメルボルン市電を含むオーストラリア市場から撤退したため、同事業者の路線および車両については一時的にビクトリア州による運営が行われた後2004年以降はヤラトラムによる運営に統合された。そのため、同年まで納入されたD形の大半の車両はビクトリア州やヤラトラムによる導入が実施されている。2020年現在、D1形は38両(3501 - 3538)、D2形は21両(5001 - 5021)が在籍し、前者は5・6・16・58・72号線、後者は6・19号線で使用されている[3][5][6][8]

トラブル

2000年代後半以降コンビーノにアルミニウム製の車体の接合部分に亀裂が生じる欠陥が見つかり、衝突時に屋根が崩壊する危険性がある事から製造メーカーのシーメンスによる大規模な修繕工事が実施されたが、メルボルンに導入されたD形についても同様に構体に微細な亀裂が発見され、2009年から2011年まで無償の修理が行われた。これによる車体構造の強化の影響で座席数が減少し、D1形は32人分、D2形は56人分に変更されている[9]

その他

高雄市内の実験線を走行するD2形(2004年撮影)

5車体連接車のD2形のうち、1両についてはメルボルン市電への導入に先立つ2004年1月台湾高雄市内でライトレールのデモンストレーション走行を実施した。その後高雄市内にはライトレールが開通したが、それに合わせて導入された車両はコンビーノではなくスペインCAFが展開するウルボス(Urbos)となっている[10]

脚注

注釈

  1. ^ メルボルン市電には1940年まで在籍した車両に「D形英語版」が存在しており、本項目のD形は2代目にあたる[7]

出典

  1. ^ a b c First Class Bogies” (英語). シーメンス. 2019年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月22日閲覧。
  2. ^ Tram Track Design”. ヤラトラム. 2023年1月27日閲覧。
  3. ^ a b c d Melbourne's tram fleet”. YarraTrams. 2020年11月17日閲覧。
  4. ^ a b c Harry Hondius (2002-7/8). “Rozwój tramwajów i kolejek miejskich (2)”. TTS Technika Transportu Szynowego (Instytut Naukowo-Wydawniczy „SPATIUM” sp. z o.o): 38-39. http://yadda.icm.edu.pl/yadda/element/bwmeta1.element.baztech-article-BGPK-0379-2650/c/Hondius.pdf 2020年11月17日閲覧。. 
  5. ^ a b c d e Rattlers one day, combino the next”. The Age (2002年11月24日). 2020年11月17日閲覧。
  6. ^ a b c d Geoff Brown (2019-3). “Introducing low-floor trams to Melbourne”. The Bellcord (Melbourne Tram Museum) 41: 1-4. http://www.hawthorntramdepot.org.au/downloads/bellcord/bc-041.pdf 2020年11月17日閲覧。. 
  7. ^ Russell Jones (2008年). “PMTT tramcar fleet”. Melborune Tram Museum. 2020年11月17日閲覧。
  8. ^ a b 三浦幹男; 服部重敬; 宇都宮浄人 (2008-6-15). 世界のLRT(Light Rail Transit) 環境都市に復権した次世代交通. JTBパブリッシング. pp. 132-135. ISBN 978-4-533-07199-7 
  9. ^ Clay Lucas (2009年4月16日). “Latest model trams found to be cracking up”. The Age. 2020年11月17日閲覧。
  10. ^ The trams that Melbourne rejected”. Waking Up in Geelong (2015年10月20日). 2020年11月17日閲覧。

外部リンク