有限会社ボイルドエッグズは、作家のための著作権エージェント業務を行う日本の会社である。代表取締役は、村上達朗だったが、2024年の死去後、長女の森薫(同名の漫画家とは別人)がボイルドエッグズ代表取締役に就任した[1]。
概要
早川書房の編集者であった村上が、欧米の出版界では一般的である著作権エージェント会社として1998年12月に創業した。業務内容としては、作家・著者の代理人として各出版社への作家・作品の販売促進、原稿依頼・取材等の申込受付窓口、出版社との出版契約時の契約書締結業務、二次使用を含めたプロモーション展開などといった著作権管理、などがある。
最初にエージェント契約を行なったのは、三浦しをん。三浦は、早川書房での入社試験の際、担当面接者であった編集者・村上に、入社試験作文から執筆の才を見出され、村上が早川書房を退社後に作家に転進するよう勧められた。
ほかにエージェント契約をしている小説家としては、滝本竜彦などがいる。
ボイルドエッグズ新人賞
ボイルドエッグズ新人賞は、ボイルドエッグズが主催し、産業編集センターが後援する公募の新人文学賞。400字詰め原稿用紙換算で150枚以上500枚以下の小説を募集している。ジャンルは問わない。受賞作は、産業編集センター出版部より単行本として出版される。募集・発表は不定期に、約6か月から9か月に一度のペースで行われている。
選考委員が全ての応募作に目を通すのが特徴である。第1回から第7回までは作家の滝本竜彦、千木良悠子、三浦しをん、およびボイルドエッグズ代表の村上達朗が選考していたが、第8回(2008年)以降は村上達朗が1人で選考にあたっている。
また、1作品につき7000円を振り込んでエントリーするのも他の文学賞と異なる点である。受賞作の発表は公式サイト上で行われ、選評も公式サイトに掲載される。受賞者には、賞状と副賞(記念品)が贈られ、規定の単行本の印税が支払われる。
第4回受賞の万城目学『鴨川ホルモー』以降はしばらく受賞作が出なかった。「(『鴨川ホルモー』の出現によって)受賞のハードルが上がってしまった」と村上達朗は述べているが、エントリー数は増加している。その影響からか第12回では史上初の2作同時受賞となった。
ライトノベル的要素を持つ作品が受賞作に選出される傾向がある。
選考委員
- 第1-7回 滝本竜彦、千木良悠子、三浦しをん、村上達朗
- 第8-回 村上達朗
受賞作リスト
第1回から第7回までは「フィクション部門」と「ノンフィクション部門」があった。第8回以降は小説のみ募集している。ノンフィクション部門では受賞者は出なかった。
(ノンフィクション部門のエントリー数 第1回:1作品、第2回:4作品、第3回:なし、第4回:1作品、第5回:なし、第6回:2作品、第7回:2作品)
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結果発表 |
応募数 |
受賞作 |
作者 |
刊行年月
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第1回
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2004年 |
24作品 |
『本格推理委員会』 |
日向まさみち |
2004年7月
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第2回
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2004年 |
16作品 |
【奨励賞】『彼女には自身がない』 |
時里キサト |
未刊行
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第3回
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2005年3月 |
29作品 |
『コスチューム!』 |
将吉 |
2005年7月
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第4回
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2005年11月 |
22作品 |
『鴨川ホルモー』 |
万城目学 |
2006年4月
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第5回
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2006年5月 |
25作品 |
受賞作なし
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第6回
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2006年12月 |
31作品 |
受賞作なし
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第7回
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2007年8月 |
46作品 |
受賞作なし
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第8回
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2008年5月 |
75作品 |
受賞作なし
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第9回
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2009年1月 |
87作品 |
『お稲荷さんが通る』 |
叶泉 |
2009年11月
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第10回
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2009年10月 |
78作品 |
『オカルトゼネコン富田林組』 |
蒲原二郎 |
2010年3月
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第11回
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2010年6月 |
48作品 |
受賞作なし
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第12回
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2011年2月 |
76作品 |
『白馬に乗られた王子様』 |
石岡琉衣 |
2011年7月
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『をとめ模様、スパイ日和』 |
徳永圭 |
2011年7月
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第13回
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2011年10月 |
91作品 |
『サザエ計画』 |
園山創介 |
2012年3月
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第14回
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2012年6月 |
49作品 |
『じらしたお詫びはこのバスジャックで』 |
大橋慶三 |
2012年11月
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第15回
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2013年2月 |
80作品 |
『あしみじおじさん』 |
尾﨑英子 |
2013年10月
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『バージン・ロードをまっしぐら』 |
鈴木多郎 |
未刊行
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第16回
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2014年1月 |
67作品 |
『気障でけっこうです』 |
小嶋陽太郎 |
2014年10月
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第17回
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2014年12月 |
52作品 |
受賞作なし
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第18回
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2015年9月 |
50作品 |
受賞作なし
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第19回
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2016年5月 |
30作品 |
受賞作なし
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第20回
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2017年2月 |
53作品 |
『クルンテープマハナコーン(ry』 (『別れ際にじゃあのなんて、悲しいこと言うなや』に改題) |
黒瀬陽 |
2018年6月
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第21回
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2018年2月 |
44作品 |
『探偵はぼっちじゃない』 |
坪田侑也 |
2019年3月
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第22回
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2019年2月 |
40作品 |
『シャガクに訊け!』 |
大石大 |
2019年10月
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第23回
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2020年2月 |
29作品 |
受賞作なし
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第24回
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2021年5月 |
51作品 |
受賞作なし
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第25回
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2022年5月 |
79作品 |
『ドールハウスの惨劇』 |
遠坂八重 |
2023年1月
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第26回
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2023年5月 |
56作品 |
受賞作なし
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第27回
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2024年5月 |
65作品 |
受賞作なし
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最終候補
第8回の最終候補作『電子の蝶は乱れない』は、のちに鏡征爾『白の断章』(2009年、講談社BOX)として刊行されている。また、同じく第8回に『赤鼬奇譚』で最終候補となった赤星香一郎は、2009年にメフィスト賞を受賞してデビューしている。また、第7回に『ロストワルツ』で最終候補となった松尾佑一は、野性時代フロンティア文学賞を受賞して2010年にデビューしている。
脚注
外部リンク