フラット防止装置(フラットぼうしそうち)は、鉄道車両の車輪の異常磨耗を防ぐ装置であり、アンチロック・ブレーキ・システム(車輪固着防止装置、英語:Antilock Brake System、ドイツ語:Antiblockiersystem、略称:ABS)と同義である。
フラットの意味と影響
フラットとはタイヤフラットの略で、制動時に制動力がレールと車輪の摩擦力を上回ると車輪の回転が止まって滑走を引き起こし、レール頭部に接触している部分のタイヤ踏面が削られて発生する平らな傷のことである。自動車のタイヤで言うフラットスポットと同義。ゴムタイヤの不具合で「フラットタイヤ」(flat tire)という現象があるが、こちらは何らかの原因で空気が抜ける意味で本現象とは異なる(詳細はパンクを参照)。
この平滑傷が発生すると、列車走行時の騒音・振動・乗り心地の悪化の原因になる[1]。また運動エネルギーが車輪とレールのみの摩擦熱としてしか変換されないため、雨などの水分、落葉が介在すると制動距離が大幅に伸び、事故の要因ともなる。
走行中、走行速度にあわせて早くなる「タンタンタンタン・・・」という断続音が、このフラットの音である。
装置概要と効果
- 一般的な二軸ボギー車では、4つの車軸全てに速度発電機もしくはパルスセンサーによる回転数検知器を搭載しており、その電気信号が制御ユニットに送られて車軸の回転数を監視している。ブレーキ時に車軸間の回転数の差が基準値より大きくなると、回転数の低い車軸が滑走していると判断され、制御ユニットから電気信号による指令が滑走防止弁[2]に送られ、回転数の遅い車軸のブレーキを弱め、車軸の再粘着を行って回転数を回復させ、その後に再びブレーキを掛けることで、4つの車軸の回転数が等しくなるように調整する[3]。
- 滑走を検知すると、一部の車種では運転席にあるブレーキシリンダ圧力計の針が一瞬だけ大きく振れたり、床下のブレーキ装置やブレーキシリンダから動作音がするなど、装置が作動していることがわかる[4]。
その他フラットを防止する装置・効果
- フラット検出器
- 特に雨天でのブレーキ時や危険回避時の非常ブレーキ時などで、車輪の表面(踏面)に発生した傷は、走行中の不快な音や振動の原因となる。そこでフラット検出器を営業線に設置し、不快な音や振動の発生する車両を特定して、その車輪表面(踏面)を車輪転削装置や踏面修正用の制輪子を使用し、速やかに元の形状に削正している。
- 砂撒き装置
- セラミック噴射装置
- この装置はきわめて少量のセラミック(酸化アルミニウム)の粒子を高速で踏面・レール頭部間に正確に噴射供給することによって粘着係数を増す事ができ、高速域での制動機会が多い新幹線や、在来線の130 km/h運転、またはそれ以上の速度域での制動距離の短縮に高い効果がある。
- 踏面清掃装置
- 車輪の踏面に付着したゴミ等の汚れがレールとの摩擦力低下、ひいてはタイヤフラット発生の要因の一つであるため、制動時に踏面の清掃をして摩擦力の低下を防止する装置。機構的には小型のエアシリンダーと小型の清掃用のシューからなり、空気ブレーキがかけられるとエアシリンダーによってシューが車輪踏面に押し付けられて踏面の汚れを除去する。踏面の清掃手段を持たないディスクブレーキ装備車に採用されたが、機構的には小型の踏面ブレーキともいえるため、近年の車両では一つの台車にディスクブレーキと踏面ブレーキの両方を装備して本装置の代わりとしている場合が多い。
脚注
- ^
熊谷 則道. “ブレーキのすべり率滑走制御装置”. 鉄道総合技術研究所. 2015年12月7日閲覧。
- ^ 空気ブレーキで使用される圧縮空気の給気と排気を切替える弁であり、2つの電磁弁によるオン・オフにより、ブレーキ位置・保持位置・緩め位置の3段階で切替えることができる
- ^ 『史上最強カラー図解 プロが教える電車のメカニズム』ナツメ社 164-165頁
- ^ JRでは205系電車などで確認することが出来る。
関連項目
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鉄道用ブレーキシステムメーカー | |
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その他の鉄道ブレーキ関連記事 | |
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