典型的なビール瓶の例
ビール瓶 (ビールびん)は、ビール の包装容器となる瓶 である。
概要
素材は主にガラス が用いられる。酸化による品質劣化を軽減するため[ 1] 、茶色 や黒色 に着色したものが多く、緑色 に着色したもの、無色透明 、陶器 製も用いられる。茶色や緑色のガラスは酸化を促進する波長 の透過を減ずる効果を有するが、冷暗所 の保管が推奨される[ 1] 。コロナビール など無色瓶を用いる商品は、酸化成分を除去したホップエキス を用いるものも見られる。
1970年代 以降は冷却や運搬に便利なアルミ缶 が増加しており、近年は缶内壁を合成樹脂 で被覆して「缶臭さ」を消したもの[ 2] なども見られるが、瓶の需要は強い。クラフトビール は小瓶のみを一般向け販売する銘柄が多いが、酸化防止のため小売り商品は缶のみを用いる醸造 者もある。
2004年 にアサヒビール がペットボトル でビールの発売を発表したが、環境影響を考慮して発売を中止した[ 3] 。ワイン はペットボトル商品が普及した後も、ビールはペットボトルを用いていない。
容量
日本は1940年 に酒税法 で、ビールの生産量に応じて課税するビール税と出荷量に応じて課税する物品税 を、ビールの出荷量に応じて課税するビール税を新設して一本化した[ 4] 。当時ビール大瓶の容量は最大643 ml 、最小633 mlで、容量の少ない633 ml瓶を規格とすれば容量の大きい瓶も使用可能であることから、1944年 にビール大瓶の容量を633 ml、小瓶は334 ml[ 4] と定めた。
500 mlを超える大容量のビール瓶が流通している国はごく少数で、現在の国産ビールは500 mlの中瓶、スタイニーボトル 、334 mlの小瓶などが流通する。
再利用
日本の大手メーカーが取り扱うビール瓶の多くはデポジット 制のリターナブル瓶 で、回収後に洗浄され再利用 される。再利用期間はおおむね8 - 10年ほどで、使用に耐えられなくなったリターナブル瓶は、使用済みのワンウェイ瓶 と同様にカレット に加工され、茶色瓶の原料として利用される[ 5] 。
同容量で数種類の瓶が流通し、大瓶はアサヒビール、サッポロビール 、サントリー 各社が相互に共同利用している。キリンビール は、ラベル上部に黄文字でカタカナ社名とキリンマークを印し、頚部のくびれがなだらかな独自仕様の瓶を用い、ビールメーカとして唯一「富田製壜工場」を1938年 から2002年 8月まで山口県 周南市 に有して自社供給したが、現在は独自の瓶仕様を外部の製壜メーカーから供給する。
おもに沖縄県 内で流通するオリオンビール 瓶などは個別回収ルートで再利用される。キリンハートランドビール 、サントリー小瓶、アサヒスタイニーボトル、アサヒスーパードライなど専用瓶もリターナブル扱いのものがある。
日本では液体商品を満たした場合に正しい量となるよう法令の規格に従って製造された透明または半透明のガラス製容器を「特殊容器」といい、これらのリターナブル瓶のビール瓶も特殊容器とされている[ 6] 。
結婚式場 やホテル など慶事 を催す事業体へ、新品の瓶で配送する事例も見られる。クラフトビールはほとんどがワンウェイ瓶である。
運搬
高さは異なるが、大きさが統一されたビールケース。(左)、アサヒ小瓶用。(中)、アサヒドライ用。(右)、サントリー大瓶用。 (場所不明、2009年 4月24日 撮影)
運搬には、製造所から顧客までの流通に用いる専用のビールケースや、店内や宴席などで数本程度を運ぶ際に運び溜などを用いる。
かつては縦横の長さを揃えた木製通函を用いたが、劣化による破損もあり、大きさを統一して段積み可能な各社共通のプラスチック製通函を昭和40年代 [ 7] に採用する。現在まで大手4社は色調を下記定めている。
アサヒ=クリーム色地に赤色文字。
キリン=黄色地に赤色文字、年代や成型メーカーにより朱色文字もある。
サッポロ=赤色地に白色文字。
サントリー=緑色地に白色文字、年代や成型メーカーにより黄色文字もある。
応用
相撲の土俵作成時に盛土を叩き固める用具として利用される。
映画 やプロレス などの乱闘シーン、コントやドラマなど、ビール瓶で殴る様子がよく見られるが、ガラス 製ではなく、割れやすい飴ガラス やロジン などの樹脂でできたものである[ 8] 。
実物のビール瓶は一般の瓶より厚く重く強度が高く、人の殴打は極めて危険で、傷害 事件などの犯行で凶器として用いられる事例もある。2007年に時津風部屋力士暴行死事件 で凶器となった。1992年 にケルン大学 の法医学者 らは「Skull Injuries Caused by Blows With Glass Bottles」で、殴打よりも、割れたガラス瓶が鋭利な刃物として頭部に生じた裂傷から出血で死亡例が多かった[ 9] としている。
スイス のベルン大学 で、未開栓のビール瓶と空のビール瓶で危険性を比較検証したが、いずれも人間の頭蓋骨 を叩き潰す威力があることが実験で証明された[ 9] [ 10] [ 11] 。研究チームは2009年のイグノーベル賞 平和賞を受賞した[ 9] [ 11] 。
脚注
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