初島(1971)は沖縄のイジュをヒメツバキとは別種の S. wallichii ssp. liukiuensis と見なし、琉球列島の固有亜種と判断している[7]。
北村・村田(1979)は両者を同一種 S. wallichii としながら別亜種と見なし、イジュを ssp. noronhae 、ヒメツバキを ssp. mertesiana としており、それぞれの分布域をイジュは東南アジアまでのものをこれに含め、ヒメツバキについては小笠原のみとしている。また、ヒマラヤ等の種についても触れ、扱いについて断定はしないものの、種として区別するのが困難と述べている[8]。
佐竹他(1999)ではこの植物が風で散布される種子を持つことに絡め、比較的新しい地質時代に分布域を広げたものと推定している。そのため、各地で地理的変異を見ることができるが、それは種を区分するには当たらないとの立場で、琉球列島産と小笠原産を同一種 S. wallichii としている[9]。堀田は更に、本属の知られている10種全てを同一の種とする判断を紹介している。それによると日本の琉球・小笠原の両集団は東ヒマラヤから東南アジアに分布するものとまとめてヒメツバキ S. wallichii ssp. wallichii となり、東南アジアのものを S. wallichii ssp. noronbae とする。だが同時に彼はこれらの中に地理的、あるいは生態的に明瞭に区別できるものが含まれると、この体系への疑問を示してもいる[10]。
しかしYListでは両者を別種とし、イジュを S. superba var. kankaoensis の学名をあて、これに対してヒメツバキを S. walichii ssp. mertensiana としている[11]。