トライアンフ TR5(Triumph TR5)は、1967年8月から1968年9月までトライアンフ・モーター・カンパニーがイングランドのコベントリーで製造したスポーツカー[1]。
外見的には、もととなったジョヴァンニ・ミケロッティがデザインしたオープンツーシーター(英語版)のTR4とほぼ同等だが[2]、TR5ではトライアンフ製で105 bhp (78 kW)のSAEスタンダード・ウェットライナー直列4気筒エンジン(英語版)から、より高出力のルーカス製(英語版)機械式燃料噴射装置を装備した出力150 bhp (110 kW)のトライアンフ2.5リットル直6(英語版)エンジンに変更された。アメリカ合衆国の価格圧力と、より厳しくなった排ガス規制から、出力は劣るもののそれ以外は同一仕様の車両にゼニス・ストロンバーグキャブレターを装備したモデルが北米市場ではTR250として販売された。
この当時、市販車では燃料噴射はまだ一般的ではなく、トライアンフは販促用パンフレットで「燃料噴射を搭載した、初めてのイギリスの量産スポーツカー」と訴求した[3][4]。
TR5
イギリスでのTR5の1968年の基本価格は税込み1,260ポンド(当時のレートで約127万円)だった。ディスクブレーキ、独立懸架、ラック・アンド・ピニオン式ステアリングおよび4速ギアボックスが標準で装備されていた。オプションとしてはワイヤーホイール(英語版)(38ポンド、38,000円)、オーバードライブ(英語版)(60ポンド、6万円)、トノーカバー(13ポンド、13000円)が用意されていた[4]。
TR5には剛性のあるリアウィンドウ、ドライバーとパッセンジャーの頭上をカバーする取り外し可能な柔らかい布地製のパネルで構成される「サリートップ」ハードトップシステムがオプションとして用意された。
主要諸元
注:イギリスでの販促用パンフレットから抜粋[3]
- エンジン:2498cc、6気筒、ボアxストローク 74.7mm x 95.0 mm、圧縮比9.5:1、150 bhp (110 kW)
- 最小回転半径:10.1 m (33.1 ft)
- 最低地上高:152 mm (6.0 in)
- 荷室容量:
- 最大幅:1,180 mm (46.5 in)
- 最大高:510 mm (20.1 in)
- 容量:
- 燃料タンク:51リットル (11.22 imp gal; 13.47 US gal)
- エンジンオイル:4.53リットル (1.00 imp gal; 1.20 US gal)
- ギアボックス:1.13リットル (0.25 imp gal; 0.30 US gal)
- 48 - 80 km/h (30 - 50 mph):7秒
- 64 - 97 km/h (40 - 60 mph):7秒
- 97 - 129 km/h (60 - 80 mph):8秒
- 0 - 402メートル (0 - 0.25 mi):16.5秒
- 変速比
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トップ
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3速
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2速
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1速
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後退
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ギア比
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1.0
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1.33
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2.01
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3.14
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3.22
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最終減速比込
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3.45
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4.59
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6.94
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10.83
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11.11
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車体
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トリム
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New White
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Black / Matador Red
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Triumph Racing Green
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Black, Light Tan
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Signal Red
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Black
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Jasmine Yellow
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Black / Light Tan
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Royal Blue
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Black / Shadow Blue
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Wedgewood Blue
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Black / Shadow Blue
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Valencia Blue
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Black / Light Tan
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性能
英国での販売パンフレットによると、燃料噴射エンジンはTR5を0発進から50 mph (80 km/h)まで6.5秒で加速し、最高速度125 mph (201 km/h)に達することができるとのことだった[3]。当時の路上テストでは、若干異なる性能数値が報告されていた[5]。
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Sports Car World 1968年10月号
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Cars & Car Conversions 1968年9月号
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Motor 1968年5月4日号
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0-50 mph (80 km/h)
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6.2秒
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6.4秒
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6.3秒
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最高速
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118 mph (190 km/h)
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112 mph (180 km/h)
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117 mph (188 km/h)
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TR5のエンジンはTR6でも使用された。
生産
TR5はTR250や後継のTR6と比べると生産台数が少なく、1967年8月29日から1968年9月19日までの間に2,947台しか生産されなかった。このうちの1,161台英国国内市場向けで[6]、残りは左ハンドル仕様としてフランス、ベルギー、ドイツその他の国々に輸出された。2011年第1四半期時点でイギリスの免許自動車ライセンス局には約410台のライセンス登録と74台の自動車税支払い中のTR4が登録されている[7][8]。
TR250
TR250は、TR5と同じ期間に北米市場向けに生産された。価格圧力とより厳しくなった排ガス規制からルーカス製(英語版)燃料噴射装置にかえてゼニス・ストロンバーグキャブレターを装備していたが、それ以外についてはTR5と同等だった。
TR250のエンジンはTR5よりも39bhp少ない111 bhp (83 kW)を発揮し、0–60 mph (0–97 km/h)加速に10.6秒を要した[2][9]。TR250にもサリートップが用意された。
1968年にTR250haアメリカ合衆国で3,395ドル(当時のレートで約122万円)で販売され、オプションのワイヤーホイールが118ドル(同42,480円)、オーバードライブが175ドル(同63,000円)、エアコンが395ドル(同142,200円)で用意された[10]。
主要諸元
- エンジン:2498cc、6気筒、ボアxストローク 74.7mm x 95.0 mm、圧縮比8.5:1、111 bhp (83 kW; 113 PS)(4,500rmp)
- 最小回転半径:10.1 m (33.1 ft)
- 容量:
- 燃料タンク:51リットル (11.22 imp gal; 13.47 US gal)
- エンジンオイル:5.4リットル (1.19 imp gal; 1.43 US gal)
- ギアボックス:1.13リットル (0.25 imp gal; 0.30 US gal)
性能:
- 0 - 60 mph (0 - 97 km/h): 10.6秒[11]
- 0 - 100 mph (0 - 161 km/h): 39秒
- 燃費:23.5マイル毎米ガロン (10.0 L/100km; 28.2 mpg‑imp) [11]
生産
早慶で8,484台のTR250が生産され、多くは米国とカナダに輸出された[1][12]。今日でも1300台以上のTR250が現存しており、その殆どは欧州を主とする米国外で見られる。
ギャラリー
- Triumph TR5
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斜め前からの1968年式TR5
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1968年式TR5の車内
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1968年式TR5のエンジンルーム
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斜め後ろからの1968年式TR5
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ハードトップを装着したTR5
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TR250
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サリートップを装着したTR250
脚注
- ^ a b c Piggott, Bill (1991). Original Triumph TR. ISBN 1-870979-24-9
- ^ a b TR for Triumph, Chris Harvey, ISBN 0-902280-94-5
- ^ a b c Original UK sales brochure, 387/168/UK
- ^ a b Motor Magazine. 133. (4 May 1968).
- ^ Clarke, R. M. (December 1985). Triumph TR4, TR5, TR250. ISBN 0-948207-53-1
- ^ Richards, Michael (1990). Triumph TR4, 5, 6. ISBN 0-85429-816-9. https://archive.org/details/triumphtr4560000rich
- ^ “Triumph Tr5”. How Many Left. 27 June 2011閲覧。
- ^ “Vehicle licensing statistics”. Department of Transport. 29 August 2011時点のオリジナルよりアーカイブ。27 June 2011閲覧。
- ^ Road & Track. (December 1967).
- ^ Motor Trend Magazine, April 1968
- ^ a b Bryant, Thomas L. (June 1977), “Driving Impressions: TR3A & TR250”, Road & Track
- ^ Original Triumph TR, Bill Piggott, ISBN 1-870979-24-9