タデ属 (タデぞく、Polygonum sensu lato )はタデ科 にかつて置かれていた属 である。
約300種 を含む大きな属だった。しかしその実態はタデ亜科全体に分散する多系統 であり、Hedberg (1946) やそれに続く研究者により分割され[ 1] 、現在は8属
となった[ 2] 。そのうち1属は旧タデ属の学名 Polygonum を保つが、タデ 類を含まず、和名はミチヤナギ属となる。
Polygonum は、ギリシア語 でミチヤナギ などの茎 の形から「多くの(Poly )ひざ(Gonu )がある」の意味といわれるが、その他の語源説もある。
分割の過程ではさまざまな属が提唱されたため、学名には属の異なるシノニム が多数ある。
形態・生態
大部分は草本 で、中には数メートルの高さに達するものや、つる性 (一部は木性 )のものもある。湿地 または水中 に生育するものも多い。
茎 は赤みを帯びるものが多く、とげ を持つものもある(イシミカワ 、ママコノシリヌグイ 、ウナギツカミ など)。
葉 は全縁の単葉 で互生 し、形は多様で、幅広い卵 形(ミズヒキ )から、細長いもの(ヤナギタデ、ミチヤナギ)、心臓 形(ツルドクダミ )、ほこ 形(イタドリ )、三角形(イシミカワ)などがある。葉の中央部に黒斑のあるものもある。また托葉 があり、多くは茎を包む筒状であるが、イシミカワのように大きく広がるものもある。
花 には4-6個の花被片 があり、緑色、白色、または淡紅色ないし赤色に色づく。総状、穂状または頭状の花序 をなす。花被片は花後も宿存し、果実 を包むものもある。
果実は1個の種子 を含む痩果 。
分布
主に北半球 温帯 に分布する。
人間との関わり
イヌタデ、ミチヤナギ、イタドリなど、雑草 として至る所に見られるものも多い。経済的に最も重要なのはソバ である。このほか、香辛料 もしくは野菜 として食用にするヤナギタデがある。イタドリなど山菜 として利用されるものもある。ツルドクダミ (何首烏)は漢方薬 に用いられる。染料 として使われるアイ (タデアイ)も含む。また、観賞 用に栽培 されるヒメツルソバ 、オオケタデ 、ミズヒキ 、ナツユキカズラ などがある。
系統
旧タデ属は、タデ亜科の中の広い範囲に分散する[ 2] 。
次の系統樹で、旧タデ属以外の属は主要なもののみであり完全ではない。
タデ亜科
Polygoneae
Rumiceae
Calligoneae
Fagopyreae
Fagopyrum ソバ属 (旧タデ属)
Persicarieae
Eriogonoideae
属と主な種
ツルドクダミ
Reynoutria イタドリ属
イタドリ
Reynoutria multiflora = Polygonum multiflorum = Pleuropterus multiflorus ) ツルドクダミ
Reynoutria japonica = Polygonum cuspidatum = Polygonum japonicum = Fallopia japonica イタドリ
Reynoutria sachalinensis = Polygonum sachalinense = Fallopia sachalinensis オオイタドリ
ソバカズラ属 Fallopia に含める説もあったが、この広義のソバカズラ属はミューレンベッキア属 Muehlenbeckia を内包する側系統になる[ 2] 。
ミチヤナギ
旧タデ属の節 sect. Eleutherospermum Hook.f. (セリ科 の属 Eleutherospermum K.Koch とは別)の種はチシマミチヤナギ属に移された[ 1] 。
Aconogonon オンタデ属
Aconogonum weyrichii = Polygonum weyrichii = Persicaria weyrichii ウラジロタデ (オンタデ を含む)
Aconogonum nakaii = Polygonum nakaii = Persicaria nakaii オヤマソバ
Aconogonum ajanense = Polygonum ajanense = Persicaria ajanensis ヒメイワタデ
オンタデ属とイブキトラノオ属をイヌタデ属 Persicaria に含める説もあったが、この広義のイヌタデ属はチシマミチヤナギ属 Koenigia を内包する側系統になる[ 2] 。
旧タデ属の節 sect. Rubrivena を Rubrivena 属として分離するあるいはイヌタデ属 Persicaria に含める説があったが、系統的にオンタデ属内に位置する[ 3] 。
イブキトラノオ
Bistorta major = Polygonum bistorta = Persicaria bistorta イブキトラノオ
Bistorta vivipara = Polygonum viviparum = Persicaria vivipara ムカゴトラノオ
Bistorta tenuicaulis = Polygonum tenuicaule = Persicaria tenuicaulis ハルトラノオ
Bistorta suffulta = Polygonum suffultum = Persicaria suffulta クリンユキフデ
オンタデ属とイブキトラノオ属をイヌタデ属 Persicaria に含める説もあったが、この広義のイヌタデ属はチシマミチヤナギ属 Koenigia を内包する側系統になる[ 2] 。
ミゾソバ
ミズヒキ節 sect. Tovara をミズヒキ属 Antenoron として分離する説があったが、系統的にイヌタデ属内に位置する[ 4] 。
出典
^ a b Galasso, G.; Banfi, E.; et al. (2009), “Molecular phylogeny of Polygonum L. s.l. (Polygonoideae, Polygonaceae), focusing on European taxa: preliminary results and systematic considerations based on rbc L plastidial sequence data” , Atti della Società Italiana di Scienze Naturali e del Museo Civico di Storia Naturale di Milano 150 : 113–148, http://www.researchgate.net/profile/Gabriele_Galasso/publication/257029473_Molecular_phylogeny_of_Polygonum_L._s.l._%28Polygonoideae_Polygonaceae%29_focusing_on_European_taxa_preliminary_results_and_systematic_considerations_based_on_rbcL_plastidial_sequence_data/file/60b7d5243dcbdf2e06.pdf
^ a b c d e Schuster, Tanja M.; Setaro, Sabrina D.; Kron, Kathleen A. (2013), “Age Estimates for the Buckwheat Family Polygonaceae Based on Sequence Data Calibrated by Fossils and with a Focus on the Amphi-Pacific Muehlenbeckia ”, PLOS ONE 8 (4): 1, doi :10.1371/journal.pone.0061261
^ Fan, Deng-Mei; Chen, Jia-Hui; et al. (2013), “Molecular phylogeny of Koenigia L. (Polygonaceae: Persicarieae): Implications for classification, character evolution and biogeography” , Molecular Phylogenetics and Evolution 69 : 1093–1100, http://210.72.14.139:8080/bitstream/131C11/2691/1/V.69%201093-1100%202013.pdf
^ Kim, Sang-Tae; Donoghue, Michael J. (2008), “Molecular phylogeny of Persicaria (Persicarieae, Polygonaceae)”, Systematic Botany 33 (1): 77-86
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外部リンク