オオケタデ

オオケタデ
Polygonum orientale
オオケタデ Persicaria orientalis
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
: ナデシコ目 Caryophyllales
: タデ科 Polygonaceae
亜科 : ミチヤナギ亜科 Polygonoideae
: Persicarieae
亜連 : Persicariinae
: イヌタデ属 Persicaria
: オオケタデ P. orientalis
学名
Persicaria orientalis (L.) Spach[1]
シノニム
和名
オオケタデ
オオベニタデ
英名
Polygonum orientale
Princess feather[5]
Kiss me over the garden gate[5]

オオケタデ(大毛蓼、葒草、学名:Persicaria orientalis)は、ナデシコ目タデ科イヌタデ属一年生草本。別名でオオベニタデ(大紅蓼)、ベニバナオオケタデ(紅花大毛蓼)ともよばれている。同じタデ属のイヌタデオオイヌタデに似ているが、本種はそれらよりも大型で葉幅も広く、花の紅色が鮮やかである[6]

名称

和名オオケタデの名は、他のイヌタデ属(タデ)の植物に比べて大型で、草全体に細かい毛が密生していることに由来する[6]。地方によって、ハブテコブラ[6]、オオタデ[6]、トウタデ、ホタルタデなどの地方名でもよばれている。花言葉は、「思いやり」[6]「雄弁」[6]である。別名のハプテコブラは、ポルトガル語に由来すると言われ、貝原益軒の『大和本草』にその記述が見られる[5]

種小名の orientalis は「東方の(中近東の)」[7]、属名の Persicaria は「桃に似ている」という意味がある[注釈 1]

漢名の葒草は花が紅色であることから名付けられた。

分布・生育地

インドマレーシア中国など熱帯アジア・東南アジアの原産[5][8]。インド、ヒマラヤ、中国、朝鮮半島フィリピンインドネシアなどに分布する[9]。日本へは観賞用として江戸時代にアジアから渡来し、栽培されている[8][6]。現在では野生化して北海道から沖縄まで分布し、河原道端空き地土手野原荒れ地などに生えている[8][7][6]。日当たりがよく、やや湿ったような場所を好む。畑のわきや、人家のまわり、水辺でも見られ、観賞用に栽培もされる[10][9]

特徴

大型の一年草で、は直立して草丈は1 - 2メートル (m) 、茎の太さは径3センチメートル (cm) にもなる[8]。茎など全体に斜上する細かい毛が多く生えていて、この植物の名の由来になっている[7][6]は、緑色をしており、長さ10 - 25 cm、幅5 - 15 cmで卵形から広卵形、幅広で先は尖り、基部は円形または心形、両面に短毛が密生し、葉柄が長く互生する[8][6][11]。側脈は10 - 20対あり[5]、葉の裏側には腺点がある[11]。鞘状の托葉は長さ0.8 - 2 cmで筒形になって茎を抱き[8]、頂部(上縁)は緑色草質でしばしば葉状に広がっており、縁毛がある[11]

花期は夏から秋(8 - 11月ころ)で、茎が長く伸びて多数分枝した先には、イヌタデに似た花穂が穂状花序になってつく[11]。花穂は、長さ2 - 12 cm、径1 - 1.5 cmで、直立または稲穂のように先が下垂し、米粒大のが密になって多数つく[5][11]花被は淡紅色から濃桃色で、まれに白色がある[9]。花被の長さは3 - 5ミリメートル (mm) 、花径は6 - 7 mmになり、花被(花びら)は花弁ではなく、萼片が5枚ある[11][7]雄しべは7本、まれに8本で花被と同じ長さ程度あり[11]、花の中央に2本、その外側に花被の内面に沿って5本ある。雌しべは子房が円形で花柱は2裂する[5][11]

花後にできる果実痩果で、長さ約3 mmの扁円形で黒褐色の果実が花被に包まれている[8][7]。一年草であるが、前年生えていた場所に翌年生える[8]。染色体数は2n=22[11]

利用

観賞用に江戸時代から庭園に栽培されている。日本で栽培される系統は全体に毛が短く、花序が長く下垂して紅紫色であることから「オオベニタデ」として分けられることもあるが、原産地では変異が大きいことから区別が困難である[11]。また、葉に斑が入った園芸品種もある[11]

生薬名はないが、かつて民間薬として生葉が外用された[8]。毒虫さされのときに、必要に応じて柔らかい生葉を採取して、水洗いして揉んで汁をなすりつけると痛みが止まるといわれている[8]。俗にマムシの毒を医すといわれるが、ウルシにかぶれたときに、葉の汁を塗れば優れた効き目があるといわれる[5]

脚注

注釈

  1. ^ かつてはタデ属にまとめられていた。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Persicaria orientalis (L.) Spach”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年5月17日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Polygonum orientale L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年5月17日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Persicaria pilosa (Roxb.) Kitag.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年5月17日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Persicaria cochinchinensis (Lour.) Kitag.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年5月17日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h 長田武正 1989, p. 347.
  6. ^ a b c d e f g h i j 主婦と生活社編 2007, p. 84.
  7. ^ a b c d e オオケタデ(オオベニタデ)”. みんなの花図鑑. エヌ・ティ・ティレゾナント. 2020年3月21日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j 馬場篤 1996, p. 28.
  9. ^ a b c 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 201.
  10. ^ 大嶋敏明監修 2002, p. 255.
  11. ^ a b c d e f g h i j k 清水建美編 2003, p. 46.

参考文献

  • 大嶋敏明監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、2002年5月20日、254頁。ISBN 4-415-01906-4 
  • 長田武正『原色日本帰化植物図鑑』保育社、1989年6月1日、347頁。ISBN 4-586-30053-1 
  • 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、201頁。ISBN 978-4-09-208303-5 
  • 清水建美編『日本の帰化植物』平凡社、2003年3月25日、46頁。ISBN 4-582-53508-9 
  • 主婦と生活社編『野山で見つける草花ガイド』主婦と生活社、2007年5月1日、84頁。ISBN 978-4-391-13425-4 
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、28頁。ISBN 4-416-49618-4 


関連項目