ソール・アーロン・クリプキ (Saul Aaron Kripke、1940年 11月13日 - 2022年 9月15日 [ 1] )は、アメリカ の哲学者 、論理学者 。ニューヨーク市立大学大学院センター 教授、プリンストン大学 名誉教授 。ネブラスカ州 オマハ 生まれ。ユダヤ人 。
来歴・人物
父親は、ネブラスカ州 オマハ にある唯一の保守派会衆 であるベス・エル・シナゴーグ の指導者。母親はユダヤ教 の児童教育書の作家。マデリンとネッタという2人の姉妹とともに、ダンディー小学校とオマハ・セントラル高校に通った。6歳までに古代ヘブライ語 を独学し、9歳までにシェイクスピア の全集を読み、小学校卒業前にデカルト の著作や複雑な数学の問題をマスターするなど、神童と呼ばれていた。高校在学中の17歳の時に自分が発見した様相論理 の完全性定理 についての論文を書き、翌年に出版した。1958年、高校を卒業し、ハーバード大学に入学。1962年、数学のB.A. を取得し、ハーバード大学を首席で卒業した。大学卒業後、フルブライト・フェローシップを得て、1963年にはソサエティ・オブ・フェローズに任命された。後にクリプキは、「大学はすっ飛ばせればよかった。面白い人たちと知り合えたけど、何かを学んだとは言えない。どうせひとりで読んだら全部わかってしまっていたと思う」と語っている[ 2] 。
ハーバード大学で少し教えた後、1968年にニューヨークのロックフェラー大学 に移り、1976年まで教壇に立った。1978年にはプリンストン大学 の主任教授に就任し、1988年には同大学から人文科学分野での功績を称えるハワード・ベールマン賞を受賞。2002年からはニューヨーク市立大学大学院センター で教鞭をとり、2003年には同校の哲学の卓越教授に任命された。
また、ネブラスカ大学オマハ校 (1977年)、ジョンズ・ホプキンス大学 (1997年)、ハイファ大学 (1998年)、ペンシルバニア大学 (2005年)から名誉学位を授与されている。アメリカ哲学協会 会員、アメリカ芸術科学アカデミー フェロー、1985年イギリス学士院 コレスポンディング・フェロー。 2001年、ショック賞 論理学・哲学部門受賞。
妻は哲学者のマーガレット・ギルバート (英語版 ) 。また、テレビプロデューサーのエリック・クリプキ は又従兄弟である。
業績
線形時相論理のクリプキ・モデル の例
クリプキの学術的業績は以下のように大別できる。
様相論理 やそれに関連する論理のためのクリプキ意味論 。
1970年にプリンストン大学 で行われた講義「名指しと必然性 」は、以後の言語哲学 を大きく変えた。
ウィトゲンシュタイン 研究、テクスト解釈。
真理 の理論。
また、再帰理論 にも貢献している(許容順序数 、Kripke–Platek集合論 (英語版 ) を参照)。
ソール・クリプキ・センター
ニューヨーク市立大学大学院センター のソール・クリプキ・センターは、クリプキの作品の保存やその普及を目的とする施設である。センター長はRomina Padro。クリプキ・センターは、クリプキ関連のイベントの開催や、1950年代にさかのぼったクリプキの講義の未公開録音、講義ノート、書簡などのデジタル・アーカイブの作成などを行っている[ 3] 。
名誉・栄典
著作
Naming and Necessity, 1980.
Wittgenstein on Rules and Private Language , 1982.
『ウィトゲンシュタインのパラドックス──規則・私的言語・他人の心』(黒崎宏 訳、産業図書、1983年/ちくま学芸文庫 、2022年)
Is There a Problem about Substitutional Quantification?", 1976.(Truth and Meaning pp.325-419/edi. EVANS and McDOWELL/Oxford)
Marian Boykan Pour-El and Saul Kripke, Deduction-preserving "recursive isomorphisms" between theories, Fundamenta Mathematicae. 61 (1967) pp.141-163
書目
Arif Ahmed (2007), Saul Kripke . New York, NY; London: Continuum. ISBN 0-8264-9262-2 .
Alan Berger (editor) (2011) "Saul Kripke." ISBN 978-0-521-85826-7 .
Taylor Branch (August 14, 1977), "New Frontiers in American Philosophy". The New York Times Magazine .
John Burgess (2013), "Saul Kripke: Puzzles and Mysteries." ISBN 978-0-7456-5284-9 .
G. W. Fitch (2005), Saul Kripke . ISBN 0-7735-2885-7 .
Christopher Hughes (2004), Kripke : Names, Necessity, and Identity . ISBN 0-19-824107-0 .
Martin Kusch (2006), A Sceptical Guide to Meaning and Rules: Defending Kripke's Wittgenstein . Acumben: Publishing Limited.
Colin McGinn (1984), Wittgenstein on Meaning . ISBN 0631137645 , 978-0631137641 .
Christopher Norris (2007), Fiction, Philosophy and Literary Theory: Will the Real Saul Kripke Please Stand Up? London: Continuum
Consuelo Preti (2002), On Kripke . Wadsworth. ISBN 0-534-58366-0 .
Nathan Salmon (1981), Reference and Essence . ISBN 1-59102-215-0 , 978-1591022152 .
Scott Soames (2002), Beyond Rigidity: The Unfinished Semantic Agenda of Naming and Necessity . ISBN 0-19-514529-1 .
脚注
^ @KripkeCenter (2022年9月16日). "We mourn the passing but celebrate the life and achievements of Saul Aaron Kripke (Nov. 13, 1940–Sep. 15, 2022). His family and friends ask for privacy at this time" . X(旧Twitter) より2022年9月17日閲覧 。
^ McGrath, Charles (28 January 2006). "Philosopher, 65, Lectures Not About 'What Am I?' but 'What Is I?' " . The New York Times (英語). The college he eventually chose was Harvard. 'I wish I could have skipped college,' Mr. Kripke said in an interview. 'I got to know some interesting people, but I can't say I learned anything. I probably would have learned it all anyway, just reading on my own.'
^ Saul Kripke Center website : Most of these recordings and lecture notes were created by Nathan Salmon while he was a student and, later, a colleague of Kripke's.
外部リンク