1986年、ウサギのおもちゃを巨大にしたステンレス鋼製の『スタチュアリー(Statuary)』[2]を制作し、それから『バナリティ(Banality)』シリーズ[3]を1988年まで続けた。その1つ『マイケル・ジャクソン・アンド・バブルス(Michael Jackson and Bubbles)』(1988年)は、ペットのチンパンジーのバブルスを抱いている歌手マイケル・ジャクソンの、金粉を施した等身大の座像で、世界最大の陶器と公表された。3つ作られた内の一つが、3年後にニューヨークのサザビーズでロット・ナンバー7655として競りにかけられ、約560万ドルで落札された。それはこれまででクーンズの作品についた最高値の3倍の値段だった。
結婚
1991年にクーンズは、ハンガリー生まれでイタリアに帰化したポルノ女優で、1987年から1992年まで女優業と国会議員の二足のわらじを履き続けたチチョリーナことシュターッレル・イロナと結婚した。絵画・写真・彫刻から成る『メイド・イン・ヘヴン(Made in Heaven)』シリーズ[4]は夫婦のセックスを露骨に描いたもので、それまで以上の論争を引き起こした。1992年に息子ラディックをもうけるが、その直後、結婚は破局した。二人は共同親権に同意するも、シュターッレルは子供を連れてニューヨークからローマに逃げた。1998年、アメリカ合衆国は結婚の解消とクーンズの単独親権を認めるが、母子はそのままローマで暮らしている。このことについて、クーンズはこう語っている。「まったく、あの経験は僕に社会への責任を意識させてくれた。僕は人情を解する気持ちを失っていたんだ。今、僕は、もっともっと、コミュニケーティングとシェアリングの行為に責任を感じていて、美術家としてできるだけ寛大であろうと努めている」。なお2008年になって、シュターッレルは養育費未払いでクーンズを告訴した[5]。
クーンズの作品は両極端の反応を受けている。「(『バルーン・ドッグ』は)最高の存在……非常に永続性のあるモニュメント」(エイミー・デンプシー編『Styles, Schools and Movements』2002年、Thames & Hudson)、「テクニカルな名人芸と目玉が飛び出すくらいの視覚的爆発で喝采を浴びた」(美術評論家ジェリー・サルツ[11])と絶賛する人々がいる一方、『ニュー・パブリック』誌(en:The New Republic)のマーク・スティーヴンスはクーンズのことを「彼は退廃した芸術家だ。自分のテーマや制作時の流儀をありふれたものにしたり、他と区別したりする以上のことをしようという創造性に欠けている。彼は趣味の良くない金持ちに仕える一人でしかない」と、また『ニューヨーク・タイムズ』紙のマイケル・キメルマンは「1980年代の最悪のものの特徴である、ある種の自己PRな売り込みやセンセーショナリズムの最後の痛ましいあえぎ」で「わざとらしく」「チープで」「厚顔無恥にもひねくれている」と切り捨てている。
クーンズはこれまでに数回、作品に既存のイメージを使用したことで、著作権侵害で訴えられた。ロジャーズ対クーンズ訴訟、960 F.2d 301 (2d Cir. 1992)(en:Rogers v. Koons)においては、第2巡回区連邦控訴裁判所(en:United States Court of Appeals for the Second Circuit)は、クーンズが彫刻『ストリング・オブ・パピーズ(String of Puppies)』(1998年)の制作にあたって、プロ写真家アート・ロジャーズの写真『パピーズ』(1980年)を使用したという訴えを支持した[13]。さらに、ユナイテッド・フューチャーズ・シンジケート株式会社(ユナイテッド・メディア、en:United Media)対クーンズ訴訟、817 F. Supp. 370(ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所、1993年)、キャンベル対クーンズ訴訟、No. 91 Civ. 6055, 1993 WL 97381(ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所、1993年4月1日)でもクーンズは敗訴した。最近の訴訟事件では、クーンズの絵画『ナイアガラ(Niagara)』(2000年)[14]に描かれた足の素材に写真広告を使用したという、ブランチ対クーンズ訴訟、No. 03 Civ. 8026 (LLS)(ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所、2005年11月1日)があったが、クーンズはこれには勝訴し、2006年10月、第2巡回区連邦控訴裁判所もその判決を支持した。法廷はクーンズはフェアユースを十分に満たすオリジナルの変換を行ったと裁定したのであった。
”Jeff Koons, the Banality Work” by Jeff Koons; Paul Tschinkel; Sarah Berry; Inner Tube Video; Sonnabend Gallery (New York, NY). Videorecording. NY: Inner-Tube Video, 1990.