サラ・ジェーン・ムーア

サラ・ジェーン・ムーア
Sara Jane Moore
生誕 Sara Jane Kahn
(1930-02-15) 1930年2月15日(94歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ウェストバージニア州チャールストン
罪名 ジェラルド・フォード大統領暗殺未遂事件
刑罰 終身刑
犯罪者現況 仮釈放
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サラ・ジェーン・ムーアSara Jane Moore, 1930年2月15日 - )は、1975年にジェラルド・フォード大統領暗殺未遂事件を起こしたことで知られるアメリカ合衆国の女性である[1][2]。事件により終身刑が宣告された彼女は32年間服役した後、2007年12月31日に仮釈放となった。ムーアの17日前には同じカリフォルニア州リネット・"スクィーキー"・フロム英語版フォード大統領暗殺未遂事件英語版を起こしており、2020年時点で女性によるアメリカ大統領暗殺未遂事件はこの2例のみである。

背景

ウェストバージニア州チャールストンでルース(旧姓はムーア)とオラフ・カーンの娘として生まれる[3]。父方の祖父母はドイツ系移民である[4]。ムーアは看護学校の学生、婦人陸軍部隊員、会計士であった。彼女は5回の離婚経験があり、1975年の事件前には4人の子供をもうけていた[5][6]キリスト教徒の家庭であったが[4]、後にユダヤ教を実践し始めた[7]

ムーアの友人によると彼女はパトリシア・ハーストに魅了され、執着していた[8]。ハーストがシンバイオニーズ解放軍(SLA)に誘拐される事件が発生した後、SLAから「『人々』に対する『犯罪人』」と非難されていたランドルフ・ハースト英語版は貧困層に食料を配給する組織であるピープル・イン・ニード(PIN)を設立し[8]、ムーアはそのPINで簿記係のボランティアをしていた。また暗殺未遂事件当時はFBIへの情報提供者も務めていた[5][8][9]

フォード大統領暗殺未遂事件

暗殺未遂事件直後の様子

ムーアは1975年初頭にシークレットサービスによって調査されていたが、当局は彼女が大統領に危険をもたらさないと結論づけていた[10]。また彼女は暗殺未遂事件の前日に違法な拳銃所持の罪で逮捕されていたが釈放された。警察は44口径リボルバーと113発の弾薬を没取していた。

ムーアは1975年9月22日にサンフランシスコで事件を起こした。それはリネット・"スクィーキー"・フロム英語版によるフォード大統領暗殺未遂事件英語版から17日後であった。セント・フランシス・ホテル英語版前の群衆に混じっていた彼女はフォードから40フィート (12 m)離れた位置[11]から38口径のリボルバーで1発撃った[2]。彼女はその朝急いで購入した銃を使ったために着弾点が狂ったため、わずかに狙いを逸らしてしまった[12]

狙いを外したことに気付いた彼女はすぐに2発目のために構えようとしたが、元海兵隊員であるオリヴァー・シップル英語版が飛び込み、腕をつかまれたためにフォードの命は救われた[13][14]。当時のシップルは「(彼女の銃が)そこに向けられるのを見たのでそれをつかんだ。(中略)女性の腕に突っ込んでつかんで、銃が消えた」と述べた[15]。2発目の弾丸は跳ね返り、当時42歳だったタクシー運転手のジョン・ルートヴィヒに当たったが一命を取り留めた[16]。ムーアに判決を下した地方裁判所判事のサミュエル・コンティ英語版は彼女が自分の銃を持っていたならばフォードは死んでおり、失敗したのは「彼女の銃に欠陥があったから」という見解を述べた[12]

裁判と投獄

ムーアは暗殺未遂を認め[17]終身刑が言い渡された[18][19]。彼女はダブリンの連邦女性刑務所英語版に収監され、UNICOR英語版刑務作業プログラムで時給1.25ドルで被収容者主任業務会計士を務めた[11][20]連邦刑務所局の登録番号は04851-180であった[21]

仮釈放

終身刑が宣告されて32年後の2007年12月31日、77歳のムーアは仮釈放となった。フォードは彼女の仮釈放の1年と5日前の2006年12月26日に自然死していた。ムーアは暗殺未遂事件を「過激な政治的見解に盲目だった」[22][23]、「成功しなかったことを非常に嬉しく思っている。今の私は実行したのが間違いだったとわかっている」と振り返った[24]

2019年2月、ムーアは保護観察官への連絡無しで国外に旅行したために仮釈放違反で逮捕された[25]

ポップカルチャーでの描写

スティーヴン・ソンドハイムジョン・ウェイドマン英語版のミュージカル劇『アサシンズ』では9人の主人公の暗殺者の1人としてムーアの物語が取り上げられた。

2009年、28年にわたってムーアと連絡を取っていた作家のジェリ・シュピーラーによる伝記『Taking Aim at the President』が出版された[26][27]

参考文献

  1. ^ CBS Evening News for Thursday, September 25, 1975”. Vanderbilt Television News Archive. Vanderbilt University. 2007年1月3日閲覧。
  2. ^ a b President Ford survives second assassination attempt”. This Day In History. The History Channel. 2013年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年1月3日閲覧。
  3. ^ Kentucky New Era - Google News Archive Search”. news.google.com. 2015年7月23日閲覧。
  4. ^ a b Spieler, G. (2008). Taking Aim at the President: The Remarkable Story of the Woman Who Shot at Gerald Ford. St. Martin's Press. p. 20. ISBN 9780230621848. https://books.google.com/books?id=eg2Ed3efhEMC&pg=PA20 2015年7月23日閲覧。 
  5. ^ a b Making of a Misfit”. Time Magazine (1975年10月6日). 2020年4月27日閲覧。
  6. ^ Hernandez, Ernio (2004年4月5日). “Assassins Shooting Gallery, Part III: Garrison as Fromme and Baker as Moore”. Playbill. Playbill. 2007年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年1月3日閲覧。
  7. ^ Sara Jane Moore”. nndb.com. 2015年7月23日閲覧。
  8. ^ a b c Timeline: Guerrilla: The Taking of Patty Hearst”. American Experience. Public Broadcasting Service (2005年2月16日). 2007年1月3日閲覧。
  9. ^ United States Secret Service. “Public Report of the White House Security Review”. United States Department of the Treasury. 2007年1月3日閲覧。 “Just seventeen days after the Fromme incident, Sara Jane Moore fired a bullet at President Ford in San Francisco. As President Ford exited a downtown hotel, Moore, standing in a crowd of onlookers across the street, pointed her pistol at him. Just before she fired, a civilian grabbed at the gun and deflected the shot. The bullet missed Ford but slightly injured a bystander. Moore was a known radical and a former FBI informant.”
  10. ^ Carney, James (1998年8月3日). “How To Make The Secret Service's "Unwanted" List”. Time Magazine (Time Warner). http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,988864,00.html 2007年1月3日閲覧。 
  11. ^ a b Tucker, Jill (2006年10月29日). “Kenneth Iacovoni -- special agent”. San Francisco Chronicle: p. B-7. http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2006/10/29/BAG9LM27J51.DTL 2007年1月3日閲覧。 
  12. ^ a b 'Taking Aim at the President', by Geri Spieler
  13. ^ Evans, Harold (1998年). “The Imperial Presidency: 1972-1980”. The American Century. Random House. 2007年1月3日閲覧。
  14. ^ Remember... Oliver Sipple (1941-1989)”. 2006年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年1月3日閲覧。
  15. ^ Seattle Times. "Ford 'won't cower' after shooting." September 23, 1975.
  16. ^ Caught in Fate's Trajectory, Along With Gerald Ford, Lynne Duke, The Washington Post, December 30, 2006, p. D01.
  17. ^ December 12, 1975 in History”. BrainyHistory. 2007年1月3日閲覧。
  18. ^ Nevas, Steve (news anchor) (1976). Ten O'Clock News broadcast (Television news). Boston, MA: WGBH.
  19. ^ January 15, 1976 in History”. BrainyHistory. 2007年1月3日閲覧。
  20. ^ “Ford Assailant Blocks Prison Key Crackdown”. San Francisco Chronicle: p. A-21. (2000年8月12日). http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?file=/chronicle/archive/2000/08/12/MNR6BA1.DTL 2007年1月3日閲覧。 
  21. ^ "Sara Jane Moore." Federal Bureau of Prisons. Retrieved on January 9, 2010.
  22. ^ “Would-be Ford assassin freed from prison on parole”. CNN.com. (2007年12月31日). https://edition.cnn.com/2007/US/12/31/moore.release/index.html 
  23. ^ “Woman Who Tried to Assassinate President Ford Released From Prison”. FOX News. (2007年12月31日). http://www.foxnews.com/story/0,2933,319278,00.html 
  24. ^ Taylor, Michael (2008年1月1日). “Sara Jane Moore, who tried to kill Ford in '75, freed on parole”. San Francisco Chronicle. オリジナルの2008年2月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080202063357/http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=%2Fc%2Fa%2F2008%2F01%2F01%2FMN2UU7JA4.DTL 2008年10月1日閲覧。 
  25. ^ Would-be President Ford assassin back in jail for violating her parole, official says”. Fox News. 26 September 2019閲覧。
  26. ^ Spieler, Geri (2009). Taking Aim at the President: The Remarkable Story of the Woman Who Shot at Gerald Ford. New York: Palgrave Macmillan. ISBN 9780230610231. OCLC 226357171. https://archive.org/details/takingaimatpresi00spierich 
  27. ^ Taking Aim at the President”. gerispieler.com. 2015年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ2015年7月23日閲覧。

外部リンク