サマーラ市電 (ロシア語 : Самарский трамвай )は、ロシア連邦 の都市・サマーラ 市内に大規模な路線網を有する路面電車 。2020年 現在はトロリーバス (サマーラ・トロリーバス (ロシア語版 ) )と共に市営企業「路面電車・トロリーバス管理」(МП «Трамвайно-троллейбусное управление»、МП «ТТУ»)によって運営されている[ 2] [ 3] 。
歴史
第二次世界大戦まで
サマーラにおける最初の軌道交通は19世紀末、1895年 に開通した馬車鉄道 であったが、20世紀に入ると輸送力が大きい近代的な交通機関・路面電車 が当時のロシア帝国 内に普及し、その中でサマーラ市内にも路面電車網を建設する動きが起こり始めた。1910年 にサマーラ市議会はこの計画に関する予算案を可決した後、1914年 から発電所や送電線、街灯の整備なども含めた大規模な工事が始まり、翌1915年 2月12日 から5つの路線で営業運転を開始した。初年度だけでも乗客数は2,050万人にも及び、馬車鉄道はそれから2年後、1917年 までに廃止された[ 2] [ 5] 。
その後も路面電車の路線網は順調に拡大を続けたが、ロシア革命 下の混乱により、1919年 に発電所からの送電停止により全線の運休を余儀なくされる事態となり、その後は貨物輸送のみが行われる状態が続いた。しかし、ソビエト連邦 (ソ連)成立後はモスクワ から派遣された専門家の指示の下で復興が進み、1922年 にはほとんどの路線が運行を再開した[ 注釈 1] 。その後は廃止された馬車鉄道 の補完も含めて路線の拡張が続き、1927年 の時点で全長は45 kmに達した。また、都市の名前がクイビシェフに改められた1935年 からは夜間も30 - 40分間隔で列車が走る24時間運転が導入された。第二次世界大戦 (大祖国戦争 )中は系統の運行休止や本数減少などの影響を受けた一方で、工業団地方面など軍事的に重要な路線の建設が継続して実施された[ 5] [ 6] 。
戦後、ソ連崩壊まで
戦時中、クイビシェフに置かれていた首都機能がモスクワに戻された直後からクイビシェフ市電の復旧が始まり、運休していた路線や走行不能となっていた車両の修理が行われた。その後も車両の増備が続いたが、戦後の路線延伸工事が始まったのは1962年 からとなった。また、1969年 からは新たな車庫(現:北部車庫)が開業したが、これは1963年 から導入が開始されたチェコスロバキア (現:チェコ )製の路面電車車両・タトラT3SU の配置を念頭に置いたものであり、この形式は1986年 までに600両以上の大量導入が実施され、各地の車庫に在籍する事となった[ 5] 。
市電の車両数が最大に達したのは1966年 (計539両)で、路線網は1970年代以降も拡大を続けたが、1982年 に地下鉄 が開通した事に合わせて並行する路線の廃止が行われた。ただし新規路線の建設はそれ以降も1980年代の終わりまで続けられている[ 5] 。
ロシア連邦時代
都市名がサマーラに戻り、ソビエト連邦の崩壊 を経てロシア連邦の路面電車路線となったクイビシェフ市電改めサマーラ市電は、1992年 に運営組織がそれまでのクイビェフ路面電車・トロリーバス管理部門(Куйбышевское ТТУ )から市営企業「路面電車・トロリーバス管理」(МП «ТТУ» )に変更された。その後、ロシア連邦各地の路面電車が経済的な混乱やモータリーゼーション により廃止や規模の縮小を余儀なくされる中、サマーラ市電も一部区間の廃止が検討されたものの、その後この案は否決されている。一方で市電では更なる路線の拡大が計画されており、そのうちサマーラ・アリーナ へ向かう全長2.2 kmの区間については2018年 に開催されたFIFAワールドカップ の観客輸送での臨時運転を経て、同年11月1日 から定期運転を開始している[ 7] [ 8] 。
2020年 現在もサマーラ市電はサマーラ市における重要な輸送手段の地位を維持しており、同市の公共交通機関の乗客のうち42 %以上が路面電車を利用している[ 2] 。
運行
2020年 現在、サマーラ市電は運行日を限定したものを含めて25の系統が設定されている。下記の系統以外にも2018年 にはサマーラ・アリーナ 方面への延伸に合わせて14号線(Барбошина Поляна - Стадион «Самара-Арена»)が設定されたが、翌2019年 までの短期間で運行を停止し、以降は曜日によって異なる系統がサマーラ・アリーナ方面へ向けて運行している[ 1] [ 7] [ 9] 。
運賃はサマーラ市内で公営企業が運営する公共交通機関(路線バス 、トロリーバス 、地下鉄 )および郊外へ向かう近郊列車 (エレクトリーチカ )と共通化されており、現金使用時は32ルーブル 、非接触式ICカード の"トランスポート・カード"(транспортной карте)使用時は29ルーブルである[ 注釈 2] [ 10] [ 11] [ 12] 。
車両
2020年 現在、サマーラ市電には以下の営業用車両が在籍し、「都市車庫(Городское депо)」「キーロフ車庫(Кировское депо)」「北部車庫(Северное депо)」の3箇所の車庫に配置されている。1両(単行)での運行に加え、2009年 3月31日 以降ボギー車 については2両編成の列車も設定されている[ 41] [ 42] [ 43] [ 44] 。
タトラT3SU(2扉車)
タトラT3SU(3扉車)
タトラT6B5SU
タトラT3RF
71-405
AKSM-62103
71-623 (動画)
脚注
注釈
^ ただし、運休前に存在した環状線など一部区間は復旧しないまま廃止されている。
^ 民間企業が運営するミニバス などの公共交通機関の運賃は35ルーブルとなっている他、カードの使用は不可能である。
出典
外部リンク
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