ゲットウ (月桃、学名 :Alpinia zerumbet )は、ショウガ科 ハナミョウガ属 (アルピニア属)(Alpinia )の常緑性 多年草 。沖縄の地方名で、サンニン、サニンなどともよばれる。
名称
名前は台湾 での現地名で、漢名 の「月桃」の読みから。また、花の蕾が桃 のような形をしていることから「月桃」と名づけられた。荷をくくるのに使うことから大東島 や八丈島 では「ソウカ」、小笠原諸島 では「ハナソウカ」とも呼ばれる。
沖縄県 では「サンニン 」とも呼ばれる。由来は、ハナミョウガ などの種子塊で、漢方健胃薬で使用される「砂仁 (シャジン)」に基づくが、但し解釈は諸説ある。また、「サニ」「サニン」「サヌイン」「サネン」「ムチガシャ」「ムチザネン」「マームチハサー」と呼ぶ地域もある(クマタケラン も同じくこう呼ばれることがある)。
学名がAlpinia speciosa と記載されていたこともあるが、同じ学名がついていたトーチジンジャー (Etlingera elatior )との混同を防ぐためA. zerumbet が一般化した。なお現在、トーチジンジャーはEtlingera に属するため、A. speciosa は本種のみである[ 7] 。
分布
原産地は東南アジア 、インド 南部。熱帯 から亜熱帯 アジア に分布し、日本 では沖縄県 から九州 南部に分布し、沖縄に広く自生している。
特徴
地下茎 は横に這い、あちこちから地上に偽茎 を立てる。偽茎は高さ2m ほどになり、先端の方に互生するように大きな葉 をつける。葉は楕円形で緑、やや硬くて艶がある。
5 - 6月に偽茎の先端から穂 状花序 を出す。花序はやや垂れ下がり、赤い縁取りの入った白い苞 に包まれた蕾 が並び、その先が開くとそこから突き出すように大きな白い花を咲かせる。花弁 は厚みがあり、蝋細工 のような手触り。唇弁 は黄色で、中央に赤い縞模様がある。9月 - 10月に赤い実 を結ぶ。
利用
種・花・果実・葉・根茎が利用され、飲料用、食用、滋養保健、薬用に使われる。高い抗菌力と防腐作用のほか、去痰作用から気管支炎や鼻炎に効果があるといわれている。葉から取った油が甘い香を放つので、アロマオイル や香料 として使用されたり、虫よけの効果もある。特に変種のハナソウカ(Alpinia zerumbet var. excelsa Funak. &T.Y.Ito )には精油 含量が多い。
種子 は乾燥させ、主に健胃、整腸の効果を持つ薬として使用。または飲用される月桃茶 には、ポリフェノール を多く含んでいる。
奄美群島 では、よもぎ餅 をクマタケラン やゲットウの葉で包んだかしゃもち が食されている。
抽出成分に、高い植物ウイルス 防除効果があることを、岡山県 農林水産総合センター生物科学研究所と東京大学 が発見している[ 8] 。
斑入り のものを黄斑月桃(キフゲットウ / Alpinia zerumbet 'Variegata')といい、観葉植物 として栽培される。ゲットウと同じハナミョウガ属にはフイリゲットウ という和名 の植物(Alpinia sanderae )もあるが、これはゲットウとは別種である。
クラボウ が月桃 と綿との混紡糸を2003年5月に開発し、沖縄県衣類縫製品工業組合が取り組むかりゆしウェア の生地として供給されている[ 9] [ 10] [ 11] 。
沖縄と月桃
ゲットウの葉に包まれたムーチー
沖縄県では生活に密着したハーブとして浸透している。毒虫に刺されたときに、根茎を切り取って火であぶってから患部にすり込んだり、沖縄産の菓子餅ムーチー は、抗菌・防腐作用があるゲットウの葉で包んで蒸す。沖縄県ではこの用途のために需要が一定存在するが、栽培されることはあまり無く、ムーチーの季節である冬至 前になると野生のゲットウが大量に収穫される。沖縄ではこの他に香り付けを兼ねて饅頭 の包装に使用されたり、肉や魚を包んで蒸し焼きにしたりするなど幅広く利用されている。ブルーシールアイスクリーム のフレーバーの一つにもなっている。
市町村の花
出典
参考文献
ウィキメディア・コモンズには、
ゲットウ に関連するメディアがあります。