クリストファー・ロイド(Christopher Lloyd, 1938年10月22日 - )は、アメリカ合衆国コネチカット州スタンフォード生まれの俳優。"ドク"ことエメット・ブラウン博士を演じた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の大ヒットで世界的に有名になった。
来歴
生い立ち
1938年、歌手の母親と弁護士の父親の下、コネチカット州スタンフォードに生まれ、高校卒業まではそこで過ごす。
役者としてのキャリアは14歳のころからで、19歳になるとニューヨークへ移り、ネバーフッド・プレイハウスにてサンフォード・マイズナーに師事。しばらくしてからブロードウェイデビューを果たすと、『真夏の夜の夢』や『ハッピーエンド』などのミュージカルや戯曲に出演し、キャリアを積んでいく。
映画デビュー
最初にメジャー・スクリーンに登場したのは、ジャック・ニコルソン主演、ミロス・フォアマン監督の『カッコーの巣の上で』[1]。同作品では、もともと舞台において同じ役柄を演じており、それが高い評価を得たことにより映画にも出演することになった。
その後も人気シリーズ『スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!』でクリンゴン人艦長クルーグを演じる等着々とキャリアを重ねたが、特に"ドク"ことエメット・ブラウン博士を演じた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の大ヒットで、日本を含め世界的に有名になった。この役柄ではサターン賞にもノミネートされた。また、マイケル・J・フォックスとは多数のイベントなどで携わることが多くなった[2]。同作は当初エリック・ストルツ主演で6週間の撮影が進んでおり、フォックスに交代した後、ロイドは同じ演技をもう一度やり直すことになった[3]。
アメリカ本国ではドク役以外にもジャド・ハーシュ主演の人気シットコム『タクシー (原題:Taxi)』に登場する元ヒッピーのジム・イグナトウスキー役でも有名。同役では二度のエミー賞に輝き、番組内では若き日のトム・ハンクスとも共演している。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』以来、しばらくロバート・ゼメキス監督作品の常連として『バック・トゥ~』の3部作すべてに加え、『ロジャー・ラビット』や『世にも不思議なアメージング・ストーリー (「真夜中の呪文」:ゼメキス監督の一編)』などに登場した。
90年代初期に出演したバリー・ソネンフェルド監督の『アダムス・ファミリー』シリーズのフェスター・アダムス役も当たり役となり、ラウル・ジュリア演じるゴメズ・アダムスの奇怪で不気味な風貌の兄をユーモラスに演じた。日本でも同作品は大ヒットを記録。『バック・トゥ~』で共演した盟友のマイケル・J・フォックスやリー・トンプソンらとは同作以外の映画やテレビでも共演している。
1994年に出演した『風と共に去る20ドル!?』ではインディペンデント・スピリット賞を受賞。
2000年代
2007年にアメリカのマイクロソフトのCMで再び、“ドク”ことエメット・ブラウンを演じた。
2008年には舞台でハリウッドのコダック・シアターにおいて『クリスマス・キャロル』のスクルージ役を演じ、ジョン・グッドマンと息の合ったコンビを見せた。
2010-2011年にかけてTelltale Gamesから発売されたアドベンチャーゲーム『Back to the Future: The Game』に声の出演をし、声優として再び“ドク”役を演じた。
2010年代
2011年にGarbarino、アルゼンチン社のCMにエメット・ブラウンとして出演。同時にCM撮影のためだけにデロリアンを一晩だけアルゼンチンに空輸する。内容はドクが1985年からタイムトラベルをしてアルゼンチンのAv. CabildoにあるGarbarinoに電化製品を買いに来るというもの。前後の演出などBGMがリアル[4]。また同年、ナイキが『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で使用されたモデルのシューズを限定販売したことに伴い、その宣伝用映像でもエメット・ブラウンを演じた[5]。
2015年10月21日(劇中でマーティとドクがタイムトラベルをした日)、『ジミー・キンメル・ライブ!』のコーナーにマイケル・J・フォックスとともにデロリアンに乗って登場。ドクを演じ、映画と実際の2015年の様々な違いに驚くというショーを行った。
私生活
カリフォルニア州の高級住宅地であり、ハリウッドの著名人が多く居を構えていることで知られるモンテシトに邸宅を構えていたが、2008年11月13日(現地時間)に発生した山火事の延焼により、同11月14日(現地時間)に自宅が全焼してしまう被害を受けた。
1959年に最初の結婚をするが、1971年に離婚。その後も結婚と離婚を2度繰り返し、1992年に現在の妻と再婚している。非常にシャイで公の場にはめったに姿を見せず、またインタビューなども一切受けない俳優として知られる。ただ1990年に来日した際には、日本のワイドショーに出演し林家こぶ平(現・正蔵)らと共演。通訳を介してアナウンサーらによる質疑に答えた。アメリカのテレビ作家の「Christopher Lloyd」とは同姓同名で別人である。
来日
前述にもあるが1990年に『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』のプロモーションで来日し『銭形平次』の撮影現場を見学しに京都・太秦を訪れている。主役の北大路欣也に十手の使い方をさかんにたずねたり、役者と記念撮影を行うなどの交流が行われた。役者として同作に参加していた三波豊和はロイドを「知的で穏やか」な人物だったと評している[6]。2012年、ハリウッド・コレクターズ・コンベンションへ出席するため再来日した[7]。更に2022年11月25日(金)~2022年11月27日(日)の東京コミコン2022では、ステージ出演の他にファンとの撮影会やサイン会も行った。普段は映画やドラマなどの作品出演以外では公の場に姿を見せないため、撮影会やサイン会の実施は日本のファンにとっては極めて貴重な機会となる。
フィルモグラフィ
映画
テレビシリーズ
テレビアニメ
ゲーム
CM
インターネット
日本語吹き替え
主に担当しているのは、以下の二人である。
- 青野武
- 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(ソフト版)のドク役で初めて担当し、同シリーズのソフト版のほか、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン内のアトラクション『バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド』でも同役を続投し、『メタルギアソリッド3』『アベノ橋魔法☆商店街』などではドクのパロディが組み込まれた。それに加えて『アダムス・ファミリー』シリーズ(日本テレビ版)なども担当し、ロイドの声優として定着した[10]。
- その個性の強さから、ロイドのフィックス(専属)と評されることもあり[11]、青野の没後に制作された『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(BSジャパン版)、「全米捜索!バック・トゥ・ザ・フューチャー」では山寺宏一[注 1]がロイドを務めたが、「青野さんがあくまでもお手本で、(中略)少しでも近づきたいイメージで演じました」と青野を踏襲して演じた旨のコメントをしている[12]。
- 穂積隆信
- 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(テレビ朝日『日曜洋画劇場』版)のドク役で初めて担当し、同シリーズのテレビ朝日版を全作吹き替えた。繰り返し再放送されたこともあり、本バージョンでマーティを演じた三ツ矢雄二(同じくマーティ役のマイケル・J・フォックスの吹き替えを多く担当)と共に「名演技」と評された[13]。その後も青野と並んで多く吹き替えたことで(担当本数に関しては前述の青野よりも多く吹き替えていることもあり)、ロイドのもう一人の担当声優として定着している。
- 前述の青野が死去した後は、亡くなるまで大半の作品で担当した。『ピラニア3D』の吹き替えでは再びロイドの声を当てた際、ファンからは数多くのファンレターが送られた逸話がある(詳しくは穂積の記事を参照)。『ジーサンズ はじめての強盗』が最後の担当となった。
このほかにも、三宅裕司、内海賢二、水野龍司、大木民夫、千田光男、麦人、若本規夫、側見民雄なども声を当てている。
脚注
注釈
- ^ 2023年の東京コミコンでロイドと対面を果たしている(詳細は山寺のページを参照)。
外部リンク