「オウバク 」はこの項目へ転送 されています。生薬となる多年草である「オオバコ 」とは異なります。
キハダ (黄蘗[ 8] 、学名 : Phellodendron amurense )はミカン科 キハダ属 の落葉高木 。山地に生える。外樹皮 を剥がすと見える内樹皮が黄色いのが特徴で、和名の由来となっている。この内樹皮は薬用にされ、オウバクという生薬になる。
名称
和名 は、樹皮 の表皮と内部の木質部との間にある内皮 が、鮮やかな黄色であることから、「黄色い肌」の意に由来する。別名は、シコロ、シコロベ、オウバク(黄檗)、キハダが転訛してキワダのほか、内皮に苦味があることからニガキともよばれている。米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)によれば、ヒロハノキハダ、エゾキハダ、アムールキハダ、ミヤマキハダはキハダの別名とされる[ 1] 。
中国植物名(漢名 )は、黃蘗[ 1] /黄柏(おうばく)という。
分布・生育地
オウバク(生薬)
アジア 東北部の台湾 、朝鮮半島 、中国 の河北省 から雲南省 にかけて、またヒマラヤ の山地 に自生しており、日本 では北海道 (渡島半島 ・後志 ・胆振 ・日高 ・石狩 )・本州 ・四国 ・九州 ・琉球 に分布する。山地に生え、沢沿いに多い[ 8] 。
形態・生態
落葉高木で雌雄異株 。樹高は10 - 25メートル (m)、目通り直径30センチメートル (cm) 程度になる。樹皮 はコルク 質で、成木の外樹皮は淡褐灰色から暗褐色で、縦に深い溝ができ、内樹皮は濃鮮黄色で厚い[ 8] 。若い樹皮はサクラ に似ていて、赤褐色で滑らか、無毛である[ 8] 。
葉 は、対生葉序 で奇数羽状複葉 、長さは20 - 45 cmある。小葉 は5 - 13枚で、長さ5 - 10 cmの長楕円形、裏は白っぽく、葉縁は波状になる。春に冬芽 から芽吹き、展開した後から花序 も出てくる[ 8] 。
花期は5 - 7月[ 8] 。雌雄異株 [ 8] 。本年生の枝先に円錐花序 を出して、黄緑色の小さな花を多数つける。果期は10月。果実 は核果 で、直径10ミリメートル (mm) ほどの球形で緑色から黒く熟する。核は、柿 の種のような形をしている。冬でも黒く熟した果実が雌株によく残っている[ 8] 。
冬芽は半球形の鱗芽 で褐色をしており、落葉するまで葉柄基部に包まれている葉柄内芽 である。芽鱗 は2枚で、毛が密生する[ 8] 。枝先には仮頂芽 を2個つけ、側芽 は枝に対生する[ 8] 。冬芽を囲む大きな馬蹄形やU字形の葉痕が目立ち、維管束 痕が3個つく[ 8] 。
カラスアゲハ 、ミヤマカラスアゲハ の幼虫が好む食草である。
利用
樹皮からコルク質を取り除いて乾燥させたものは、生薬 の黄檗 (おうばく、黄柏)として知られ、薬用のほか染料 の材料としても用いられる。蜜源植物 としても利用される。
生薬
樹皮からコルク質・外樹皮を取り除いて乾燥させると生薬 の黄柏 (おうばく)となり、12 - 20年で採取できるようになる。樹皮が厚いほど良品とされる。夏のころ(6 - 7月)、樹液 流動の盛んな時期に根際から切り倒して枝を払い、幹や枝の太い部分を1メートル間隔に輪状と縦傷をつけて切れ目を入れ、傷口にくさび を差し込んで樹皮をはぎ取り、外皮を除いて内皮の鮮黄色の部分を日干しして採取したものである。
黄柏にはアルカロイド のベルベリン 、パルマチン 、マグノフィリン をはじめ、オバクノン 、タンニン 、粘液 質などの薬用成分が含まれており、特にベルベリンは苦味成分と抗菌作用 を持つといわれる。主に苦味健胃、整腸剤として、製薬原料として用いられ、陀羅尼助 、百草 などの薬に配合されている。また、黄連解毒湯 や加味解毒湯 などの漢方方剤 に含まれる。粘液質やタンニンには収斂 や消炎作用があり、打ち身 や捻挫 に外用される。日本薬局方 においては、黄柏を粉末にしたものを「オウバク末」として薬局などで取り扱われており、本種と同属植物を黄柏の基原植物としている。
民間療法 では、胃炎 、口内炎 、急性腸炎 、腹痛 、下痢 に、黄柏の粉末(オウバク末)1回量1グラム を1日3回服用する用法が知られている。強い苦味のため、眠気覚ましとしても用いられたといわれている。妊婦 や胃腸が冷える人への服用は禁忌 とされる。
このほか、打撲 や捻挫 、腰痛 、関節リウマチ などに、中皮を粉末にして同量の小麦粉と合わせて酢 でドロドロに練り、布やガーゼ に塗って冷湿布 にして患部に貼り、乾いたら張り替える[ 18] 。
アイヌ は、熟した果実を香辛料 として用いている。
サプリメント
海外では、シナホオノキ (英語版 ) の抽出物とキハダからの抽出物を合わせたサプリメント 製品(リローラ、Relora®)が販売され、コルチゾール を低下させるとの報告がある[ 19] 。
染料
キハダは、黄蘗色 (きはだいろ)ともよばれる鮮やかな黄色の染料で[ 20] 、黄色に染め上げる以外に赤や緑色の下染めにも利用される。なかでも、紅花 を用いた染物の下染めに用いられるのが代表的で、紅花特有の鮮紅色を一層引き立てるのに役立っている。なお、キハダは珍しい塩基性の染料で、酸性でないとうまく染め上がらない。このため、キハダで下染めをした後は洗浄を十分にする必要がある。
虫食い を防ぐ効果を期待し、仏教 経典 用紙 の染色にも使われた時代もある。現存する正倉院文書 や薬師寺 伝来の『魚養経 』などは経年によって茶色く変色しているが、染めた直後は墨 書された文字を映えさせる効果もある[ 21] 。
木材
キハダの心材 も黄色がかっており、木目 が明確であるため、家具材などに使用される。ただし、軽量で軟らかいため、あまりにも強い荷重がかかる場所には向いていない。一部では桑 の代用材として使用されるが、その場合には桑との区別として「女桑」と表記される。
脚注
参考文献
外部リンク
(日中医薬研究会の新URLの http://nittyuuiyaku-kennkyuukai.com/ 下には該当URL無し)