ガランタミン
IUPAC命名法 による物質名
(4aS ,6R ,8aS )- 5,6,9,10,11,12- hexahydro- 3-methoxy- 11-methyl- 4aH - [1]benzofuro[3a,3,2-ef ] [2] benzazepin- 6-ol
臨床データ 販売名
レミニール Drugs.com
monograph MedlinePlus
a699058 胎児危険度分類
法的規制
薬物動態 データ生物学的利用能 80~100% 血漿タンパク結合 18% 代謝 肝臓 で一部代謝、CYP450 :CYP2D6 /3A4 半減期 7時間 排泄 尿中95%(32%は未代謝)、糞中5% データベースID CAS番号
357-70-0 ATCコード
N06DA04 (WHO ) PubChem
CID: 9651 DrugBank
APRD00206 ChemSpider
9272 UNII
0D3Q044KCA KEGG
D04292 ChEBI
CHEBI:42944 ChEMBL
CHEMBL659 化学的データ 化学式 C 17 H 21 N O 3 分子量 287.354 g/mol
O(c2c1O[C@H]4C[C@@H](O)/C=C\[C@@]43c1c(cc2)CN(C)CC3)C
InChI=1S/C17H21NO3/c1-18-8-7-17-6-5-12(19)9-14(17)21-16-13(20-2)4-3-11(10-18)15(16)17/h3-6,12,14,19H,7-10H2,1-2H3/t12-,14-,17-/m0/s1 Key:ASUTZQLVASHGKV-JDFRZJQESA-N
物理的データ 融点 126.5 °C (259.7 °F) テンプレートを表示
ガランタミン (Galantamine)は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬 のひとつであり[ 1] 、軽-中度のアルツハイマー病 や様々な記憶障害 の治療に用いられる。商品名レミニール 。特に脳血管障害 を原因とするものに有効。Galanthus 属-スノードロップ (Galanthus caucasicus 、Galanthus woronowii )や他のヒガンバナ科 植物(Narcissus 属スイセン [ 2] , Leucojum 属-スノーフレーク 、Lycoris 属-ヒガンバナ )の球根や花から得られるアルカロイド である。人工的に合成することもできる。
現代医学 での利用は1951年に始まり、ソ連 の薬学者MashkovskyとKruglikova-Lvovaによって行われた[ 3] 。この2人によってガランタミンのアセチルコリンエステラーゼ (AChE)阻害作用が証明された[ 4] 。最初の工業生産は1959年、ブルガリア のPaskov (Nivalin, Sopharma)によって、東欧 で伝統的に用いられていた植物を用いて始められた。これは民族植物学 的創薬の実例である[ 5] [ 6] 。
医療用途
認知症
軽-中度の脳血管性認知症 、アルツハイマー病 (AD)の治療に用いられる[ 7] [ 8] 。米国ではAD治療薬としてFDA に承認されている。英NICE では軽中程度のADに対して、ドネペジル 、リバスチグミン と並んでガランタミンを選択肢の一つとして推奨している[ 1] 。
臨床試験では、副作用 は他のコリンエステラーゼ阻害薬と似ており、消化器 症状が主に観察される。実際にはもっと使い易い薬剤はあるが、3か月以上かけて薬量を増加させていくことで、副作用をそれと同等程度に抑えることができる[ 9] 。
神経疾患
東欧、ソ連では長い間、重症筋無力症、ミオパチー、中枢神経疾患に関連する感覚・運動機能障害などの治療に用いられている。
他の用途
明晰夢 (LD)、体外離脱 体験(OBE)の確率を上げるために使用されることがある[ 10] [ 11] [ 12] 。
睡眠改善薬として、睡眠への導入と睡眠の質を改善すると言われている。未だ広範な研究は行われていないが、初期の研究では不眠症に対する効果は確認できなかった。
フペルジンA のような他のコリン作動薬と共にスマートドラッグ として、または脳障害患者に対する記憶増強剤としても利用される[ 13] 。
薬理
スノードロップ
精製されたガランタミンは白い粉末状物質である。可逆的なコリンエステラーゼ阻害剤 であり、競合的拮抗薬 である。つまり、AChEの活性を低下させることで脳内アセチルコリン 濃度を増加させ、アルツハイマーの症状を改善させると考えられている。
1999年、ガランタミン-アセチルコリンエステラーゼ複合体の構造がX線回折 によって決定された(PDB code: 1DX6 ; see complex )[ 14] 。ニコチン性アセチルコリン受容体 のアロステリック リガンド でもある[ 15] 。認知症を根治させるという証拠はない[ 16] 。
薬物動態
ガランタミンの吸収は急速、完全であり、体内では線形的な動態を示す。経口での絶対生物学的利用能 は80〜100%、半減期 は7時間で、健康な被験者でのテストでは、経口で8mgを投与したとき、アセチルコリンエステラーゼ 阻害のピークは1時間後だった。
血漿タンパク結合 率は約18%で、比較的低い。
代謝
約75%は肝臓で代謝を受ける。In vitro研究ではCYP2D6 、CYP3A4 が関与することが示された。
Razadyne ER(1日1回服用)を用いた実験では、CYP2D6低代謝群は高代謝群と比べ薬剤への曝露量が約50%高いことが示された。
副作用
国内治験での副作用発現率は57.9%で、その内訳は、悪心(14.9%)、嘔吐(12.4%)、食欲不振(8.3%)、下痢(6.2%)、食欲減退(5.4%)、頭痛(4.6%)等であった。
重大な副作用として添付文書に記載されているものは、失神(0.1%)、徐脈(1.1%)、心ブロック(1.3%)、QT延長(0.9%)、急性汎発性発疹性膿疱症、肝炎、横紋筋融解症である[ 17] 。(頻度未記載は頻度不明)
注意
2つの研究で、ガランタミンを用いた軽度認知障害 (MCI)患者に高い死亡率が観察されたため、FDA は警告を発した[ 18] [ 19] 。2006年4月27日、FDAは全てのガランタミン製剤に対して、徐脈 ・特に素因のある患者に対しては房室ブロック を起こす可能性があるという警告を発した。また、プラシーボと比べて失神 のリスクも増大するようである[ 20] 。
全合成
植物体からの抽出か、特許の取られた全合成 プロセスによって生産される。他にも様々な合成法があるが、工業的には用いられていない。
種類
錠剤:4mg,8mg,12mg
内用液:4mg/mL
脚注
^ a b TA77 - Donepezil, galantamine, rivastigmine and memantine for the treatment of Alzheimer's disease (Report). 英国国立医療技術評価機構 . 2006年5月.
^ NNFCC Project Factsheet: Sustainable Production of the Natural Product Galanthamine (Defra), NF0612
^ Snowdrops: the heralds of spring and a modern drug for Alzheimer’s disease
^ Mashkovsky MD, Kruglikova-Lvova RP. On the pharmacology of the new alkaloid galantamine. Farmakologia Toxicologia (Moscow) 1951;14:27-30 (in Russian).
^ Heinrich, M.; Teoh, H.L. (2004). “Galanthamine from snowdrop – the development of a modern drug against Alzheimer's disease from local Caucasian knowledge”. Journal of Ethnopharmacology 92 (2–3): 147–162. doi :10.1016/j.jep.2004.02.012 . PMID 15137996 .
^ Scott, LJ; Goa, KL (2000). “Galantamine: a review of its use in Alzheimer's disease”. Drugs 60 (5): 1095–122. PMID 11129124 .
^ Galantamine Benefits Both Alzheimer’s Disease and Vascular Dementia
^ Galantamine Improves Attention in Alzheimer's
^ Birks, J; Birks, Jacqueline (2006). Birks, Jacqueline. ed. “Cholinesterase inhibitors for Alzheimer's disease”. Cochrane database of systematic reviews (Online) (1): CD005593. doi :10.1002/14651858.CD005593 . PMID 16437532 .
^ Thomas Yuschak (2006). Advanced Lucid Dreaming (1st ed.). Lulu Enterprises. ISBN 978-1-4303-0542-2
^ Thomas Yuschak (2007). Pharmacological Induction of Lucid dreams . http://www.advancedld.com/f/Pharmacological_Induction_of_Lucid_Dreams.pdf
^ “Substances that enhance recall and lucidity during dreaming ”. Stephen LaBerge - US Patent . 2007年10月29日 閲覧。
^ Galantamine Protects Neurons and Memory Following Brain Injury
^ Greenblatt, HM; Kryger, G; Lewis, T; Silman, I; Sussman, JL (1999). “Structure of acetylcholinesterase complexed with (-)-galanthamine at 2.3Å resolution”. FEBS Lett 463 (3): 321–26. doi :10.1016/S0014-5793(99)01637-3 . PMID 10606746 .
^ Woodruff-Pak, DS; Vogel Rw, 3rd; Wenk, GL (2001). “Galantamine: Effect on nicotinic receptor binding, acetylcholinesterase inhibition, and learning” . Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 98 (4): 2089–94. doi :10.1073/pnas.031584398 . PMC 29386 . PMID 11172080 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC29386/ .
^ Ortho-McNeil Neurologics, "Razadyne ER US Product Insert", May 2006
^ “レミニール錠4mg/8mg/12mg/OD錠4mg/8mg/12mg/内用液4mg/mL 添付文書 ” (2015年10月). 2016年6月28日 閲覧。
^ “FDA ALERT: Galantamine hydrobromide (marketed as Razadyne, formerly Reminyl) - Healthcare Professional Sheet ”. Postmarket Drug Safety Information for Patients and Providers . Food and Drug Administration (May 2005). 2010年4月2日 閲覧。
^ “Safety Alerts for Human Medical Products > Reminyl (galantamine hydrobromide) ”. # MedWatch The FDA Safety Information and Adverse Event Reporting Program . Food and Drug Administration (March 2005). 2010年8月4日 閲覧。
^ “Safety Labeling Changes Approved By FDA Center for Drug Evaluation and Research (CDER) ”. MedWatch, The FDA Safety Information and Adverse Event Reporting Program . Food and Drug Administration (April 2006). 2007年10月9日時点のオリジナル よりアーカイブ。2009年7月30日 閲覧。
外部リンク