カキラン属

カキラン属
分類クロンキスト体系
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
亜綱 : ユリ亜綱 Liliidae
: ラン目 Orchidales
: ラン科 Orchidaceae
: カキラン属 Epipactis
学名
Epipactis Zinn[1]
タイプ種
E. helleborine (L.) Crantz. [1]
和名
カキラン属
  • 本文参照

カキラン属(カキランぞく、学名:Epipactis、和名漢字表記:柿蘭属)はラン科の一つ[2]

特徴

地生の多年草。匍匐する根茎がある。は単一で直立し、は互生して、披針形または卵形で、葉脈がしわ状になる。は中型で穂状花序につき、ややまばらに、または多少密につく。は狭く、ときに花より長くなり葉状になる。萼片は離生し、卵状披針形で3片はやや同形、いちじるしい稜がある。側花弁は萼片と同じ大きさで、卵形となり先端は鋭頭となる。唇弁は上唇と下唇に分かれ、その間に明瞭な関節があり、基部は顕著な顎とならない[2]

分布

アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、アフリカに分布し、交雑種を含めて72種ある[3]。日本には2種が分布する[2]

日本に分布する種

和名および学名の記載はYList[4]による。

  • エゾスズラン Epipactis papillosa Franch. et Sav. - 日本では、北海道、本州、四国、九州に分布し、高地の林下に生育する[2]。国外では、中国大陸東北部、朝鮮半島、ロシア極東部(沿海地方ハバロフスク地方カムチャツカ樺太千島列島)に分布する[5]。緑色の花を20-30個つける[2]
    • ハマカキラン Epipactis papillosa Franch. et Sav. var. sayekiana (Makino) T.Koyama et Asai - 本州の青森県から愛知県にいたる太平洋側に分布し、海岸のクロマツ林下に生育する。エゾスズランの変種で、唇弁の色が白色から黄緑色で赤紫色の斑紋があり、萼片が黄色を帯びる[2]。絶滅危惧II類(VU)。
    • マルバハマカキラン Epipactis papillosa Franch. et Sav. var. sayekiana T.Koyama et Asai f. rotundifolia Asai - 神奈川県にまれに産し、ハマカキランの葉が円形に近いもの[2]
  • カキラン Epipactis thunbergii A.Gray - 日本では、北海道、本州、四国、九州に分布し、日当たりのよい湿地に生育する[2]。国外では、中国大陸(南東部・東北部)、朝鮮半島、ロシア極東部(沿海地方、ハバロフスク地方)に分布する[6]。茎の基部が紫色を帯びる。黄色の花を10個ほどつけ、唇弁の内面に紅紫色の斑紋がある[2]
    • キバナカキラン Epipactis thunbergii A.Gray f. flava Ohwi - 東北地方に分布し、茎の基部は紫色を帯びない。黄色の花に紫色の斑紋がない[2]
    • イソマカキラン Epipactis thunbergii A.Gray f. subconformis Sakata - 九州南部に分布し、唇弁が側花弁と同型のもの[2]

国外に分布する種

学名および分布域[3]

  • Epipactis africana Rendle - ケニア、タンザニア、ウガンダ、エチオピア、マラウイ、モザンビーク、ブルンジ、カメルーン、ルワンダ、ザイール
  • Epipactis alata Aver. & Efimov - 中国大陸(中央部・南部)、ベトナム
  • Epipactis albensis Nováková & Rydlo - フランス、ドイツ、オーストリア、チェコ、スロバキア、ルーマニア
  • Epipactis atrorubens (Hoffm.) Besser - ヨーロッパ大陸
  • Epipactis atromarginata Seidenf. - ベトナム
  • Epipactis autumnalis Doro - イタリア
  • Epipactis bugacensis Robatsch - オーストリア、ドイツ、ハンガリー、スイス、フランス、スペイン
  • Epipactis condensata Boiss. ex D.P.Young - 南コーカサス地方、トルコ、キプロス、レバノン、シリア
  • Epipactis dunensis (T.Stephenson & T.A.Stephenson) Godfery - イギリス
  • Epipactis exilis P.Delforge - ブルガリア、ギリシャ、イタリア、サルデーニャ島
  • Epipactis fageticola (C.E.Hermos.) Devillers-Tersch. & Devillers - スイス、フランス、スペイン、ポルトガル
  • Epipactis flaminia P.R.Savelli & Aless. - チェコ、スロバキア、オーストリア、ドイツ、イタリア、旧ユーゴスラビア
  • Epipactis flava Seidenf. - タイ
  • Epipactis gigantea Douglas ex Hook. - メキシコ北西部、アメリカ西部、カナダ西部
  • Epipactis greuteri H.Baumann & Künkele - ドイツ、チェコ、スロバキア、オーストリア、イタリア、旧ユーゴスラビア、ルーマニア、ハンガリー、ギリシャ
  • Epipactis guegelii Robatsch - ルーマニア
  • Epipactis helleborine (L.) Crantz - アジア、ヨーロッパ、アフリカ北西部
  • Epipactis heraclea P.Delforge & Kreutz - ギリシャ
  • Epipactis humilior (Tang & F.T.Wang) S.C.Chen & G.H.Zhu - 中国大陸(中央部・南部、チベット
  • Epipactis ioessa Bongiorni, De Vivo, Fori & Romolini - イタリア
  • Epipactis kleinii M.B.Crespo & M.R.Lowe & Piera - フランス、スペイン
  • Epipactis leptochila (Godfery) Godfery - ヨーロッパ
  • Epipactis lusitanica D.Tyteca - スペイン、ポルトガル、モロッコ
  • Epipactis mairei Schltr. - 中国大陸、チベット、ネパール、ミャンマー
  • Epipactis meridionalis H.Baumann & R.Lorenz - イタリア
  • Epipactis microphylla (Ehrh.) Sw. - ヨーロッパ、トルコ、キプロス、コーカサス地方、イラン
  • Epipactis muelleri Godfery - ヨーロッパ
  • Epipactis nordeniorum Robatsch - ドイツ、チェコ、スロバキア、オーストリア、ハンガリー、イタリア
  • Epipactis olympica Robatsch - ギリシャ
  • Epipactis palustris (L.) Crantz - ヨーロッパ、アジア中部・西部
  • Epipactis persica (Soó) Hausskn. ex Nannf. - 東エーゲ海諸島、トルコ、南コーカサス地方、イラン、アフガニスタン、パキスタン、西ヒマラヤ
  • Epipactis phyllanthes G.E.Sm. - スウェーデン、デンマーク、イギリス、アイルランド、ドイツ、オーストリア、ベルギー、フランス、スペイン
  • Epipactis placentina Bongiorni & P.Grünanger - チェコ、スロバキア、フランス、スイス、イタリア、コルシカ島
  • Epipactis pontica Taubenheim - 南コーカサス地方、トルコ、ギリシャ、旧ユーゴスラビア、イタリア、オーストリア、ハンガリー、チェコ、スロバキア
  • Epipactis purpurata Sm. - ヨーロッパ
  • Epipactis rechingeri Renz - イラン
  • Epipactis rivularis Kranjcev & Cicmir - 旧ユーゴスラビア、イタリア
  • Epipactis royleana Lindl. - チベット、ヒマラヤ、ネパール、パキスタン、アフガニスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン
  • Epipactis savelliana Bongiorni, De Vivo & Fori - イタリア
  • Epipactis stellifera Di Antonio & Veya - スイス
  • Epipactis tallosii A.Molnár & Robatsch - チェコ、スロバキア、ハンガリー、イタリア
  • Epipactis taurica Fateryga & Kreutz - クリミア
  • Epipactis troodi H.Lindb. - トルコ、キプロス、クレタ島
  • Epipactis turcica Kreutz - 東エーゲ海諸島、トルコ
  • Epipactis turcomanica K.P.Popov & Neshat. - トルクメニスタン
  • Epipactis ulugurica Mansf. - タンザニア
  • Epipactis veratrifolia Boiss. & Hohen. - エチオピア、ソマリアア、アラビア半島、コーカサス地方、中国大陸(南部・チベット)、トルクメニスタン、アフガニスタン、キプロス、イラン、イラク、レバノン、シリア、パレスチナ、シナイ半島、トルコ、アッサム、ヒマラヤ、インド、ネパール、パキスタン、ミャンマー
  • Epipactis xanthophaea Schltr. - 中国大陸(中北部・内モンゴル・東北部)

交雑種

学名および分布域[3]

  • Epipactis × barlae A.Camus - スイス
  • Epipactis × barreana B.Baumann & H.Baumann - イタリア
  • Epipactis × breinerorum Batouše - チェコ、スロバキア、オーストリア
  • Epipactis × bruxellensis P.Delforge - ベルギー、スウェーデン
  • Epipactis × cardonneae J.M.Lewin - フランス
  • Epipactis × conquensis Benito & C.E.Hermos. - フランス、スペイン
  • Epipactis × gerbaudiorum P.Delforge - フランス
  • Epipactis × gevaudanii P.Delforge - オーストリア、フランス、スペイン
  • Epipactis × graberi A.Camus - オーストリア、スイス、フランス
  • Epipactis × hanseniorum Batoušek - チェコ、スロバキア
  • Epipactis × heterogama M.Bayer - ドイツ、チェコ、スロバキア、オーストリア
  • Epipactis × liestalensis A.Camus - スイス
  • Epipactis × nicolosii M.P.Grasso & Grillo - シチリア島
  • Epipactis × pupplingensis K.P.Bell - スウェーデン、ドイツ、オーストリア、フランス
  • Epipactis × reinekei M.Bayer - ドイツ、チェコ、スロバキア、オーストリア、フランス
  • Epipactis × robatschii Gévaudan & P.Delforge - ハンガリー
  • Epipactis × schmalhausenii K.Richt. - ヨーロッパ
  • Epipactis × schulzei P.Fourn. - ドイツ、オーストリア、スイス、フランス、ギリシャ
  • Epipactis × soguksuensis Kreutz - トルコ
  • Epipactis × stephensonii Godfery - イギリス、ドイツ、オーストリア、フランス
  • Epipactis × vermionensis B.Baumann & H.Baumann - イタリア、ギリシャ

ギャラリー

脚注

  1. ^ a b Epipactis Zinn Tropicos
  2. ^ a b c d e f g h i j k 『日本の野生植物 草本I 単子葉類』p.208
  3. ^ a b c Epipactis Zinn eMonocot
  4. ^ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ Epipactis papillosa Franch. & Sav. eMonocot
  6. ^ Epipactis thunbergii A.Gray eMonocot

参考文献