おうし座17番星 (17 Tauri)は、おうし座 の恒星 でプレアデス星団 に属する、青色巨星 である。
概要
プレアデス星団の輝星の中でも明るいものの一つ。この星は、月 により周期的に掩蔽 され、また太陽系の他の惑星によっても掩蔽されることがある。直近の惑星による掩蔽は、1841年5月9日に起きた金星 によるものである。
この恒星の射影自転速度は181km/sと高速で自転している[ 6] 。これは、恒星から地球の視線に沿った自転速度の赤道方向の成分である。恒星の推定軌道傾斜角 は46.8° ± 1.6であり、真の赤道自転速度は320 ± 18 km/sと推定される[ 6] 。高速の自転のため、極付近は平たくなり、赤道は膨張している。そのため、この恒星の表面重力は一様ではなく、温度の多様性を生み出している。緯度によって放射量が変わり、この効果は、重力減光 として知られている。高速の自転は、核の密度を増し、放射量を減らすことによって、恒星の寿命を伸ばしている[ 6] 。
スペクトル線 中に水素 の明るい放出線を持つB型星であるBe星 に分類される[ 9] 。Be星は、通常のB型星よりも自転速度が1.5倍から2倍速いため、小さなプロミネンス でも質量が失われる[ 10] 。視線速度 の測定値の変化は、この恒星が伴星を伴っており、分光連星 を形成していることを示唆している[ 11] [ 12] 。
赤外線による観測で、約0.5等級に相当する赤外超過 が観測された。この放出はおそらく、放射による質量喪失と恒星の高速自転とによって形成されたガスの円盤に由来するものである。およそ10年毎に放出され、恒星の赤道面に定着する物質によって、この円盤は形成される。しかし、恒星を取り巻く明るい星雲状の物質が観測を不確かなものとしている[ 13] 。
名称
固有名のエレクトラ [ 4] (Electra [ 2] [ 3] ) は、ギリシャ神話 に登場するプレイアデス の一人、エーレクトラー の名前に因んでいる[ 2] 。2016年8月21日、国際天文学連合 の恒星の固有名に関するワーキンググループは、Electra をおうし座17番星の固有名として正式に承認した[ 3] 。
脚注
注釈
^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
出典
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r “Results for 17 Tau ”. SIMBAD Astronomical Database . 2018年9月10日 閲覧。
^ a b c Paul Kunitzsch ; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations . Sky Publishing. p. 55. ISBN 978-1-931559-44-7
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^ a b 原恵 『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣 、2007年2月28日、222頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 。
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