富士急行線(ふじきゅうこうせん)は、山梨県大月市の大月駅から富士吉田市の富士山駅を経て南都留郡富士河口湖町の河口湖駅までを結ぶ、富士山麓電気鉄道が運営する鉄道路線の総称である。駅ナンバリングを構成する路線記号はFJ。大月駅から富士山駅までの大月線(おおつきせん)と、富士山駅から河口湖駅までの河口湖線(かわぐちこせん)の2路線で構成されている。両線で一体的に運行されていることから本稿ではこれらを一括して解説する。
東日本旅客鉄道(JR東日本)中央本線の大月駅(標高358 m)から富士山駅でスイッチバックし、富士山麓の河口湖駅(標高857 m)まで登る。地元住民の生活路線であると同時に、首都圏から富士山・河口湖周辺への観光路線でもある。正式には、途中の富士山駅を境に大月線と河口湖線に分かれているが、列車運行上は1路線として一体的に運用され、公称でまとめて「富士急行線」と案内されている。なお、2022年4月1日に富士急行は鉄道事業を富士山麓電気鉄道として分社化したが、当路線については路線名称の変更はなく、案内上も変化はない。
大半を相模川上流の桂川、中央自動車道富士吉田線と国道139号(富士みち)が並行する。最急40 ‰勾配と半径200 m前後の急曲線が小刻みに連続する線形を持つ山岳路線である。富士急行線内で特急列車「富士山ビュー特急」が運転されているほか、特急「富士回遊」や普通列車などのJR中央本線高尾・新宿・東京方面との直通列車も設定されている。
大月線は、古くから富士登山の拠点となっていた吉田(現在の富士吉田市)と、八王子から大月まで延びて来た中央東線(中央本線)を結び、東京からの登山客らを運ぶために敷設された富士馬車鉄道と都留馬車鉄道による馬車鉄道を前身とする。両社は軌間が異なっていたため、途中で乗り換えが必要で、これを解消するため1921年に両社が合併し、大月 - 金鳥居上(後の富士吉田駅)間の軌間を統一・電化して電気運転を開始した。
しかし、馬車鉄道時代からの併用軌道では所要時間もかかり、急増する旅客をさばききれなくなっため、1926年に設立された富士山麓電気鉄道へ1928年に全線を譲渡し、1929年に新設の鉄道線に切り替えられ、馬車鉄道以来の軌道は廃止された。これにより2時間かかっていた大月 - 富士吉田間の所要時間は1時間以下にと大幅に短縮され、富士山麓は東京からの日帰り観光圏内となった。
また、都留馬車鉄道は一時籠坂峠に至るまでの路線を有しており、明治から大正期までは籠坂峠から東海道本線(今の御殿場線)御殿場駅前までを結んでいた御殿場馬車鉄道と連絡していたこともあった。
大月線・河口湖線の両線は富士山駅を経て直通運転している。旅客案内上これらの路線名は使用されておらず、車内自動放送でも「富士急行線」と表現される。以下の列車が運行されているが、いずれの列車もワンマン運転は行っておらず、必ず車掌が乗務する。
JR東日本の中央本線から直通運転される特急列車で、2019年3月16日より運行を開始した[20]。E353系で運行され、千葉駅・新宿駅 - 大月駅間は特急「あずさ」・「かいじ」と併結し、大月駅で連結・解結のうえ富士急行線内は3両編成で運行される。全車普通車指定席であるが、富士急行線内での利用の場合は座席未指定券(座席の指定をせずに空席を利用する)のみ利用可能である。
多客期の増発列車ではE257系5500番台5両編成が充当される場合があり、都留文科大学前駅・下吉田駅では後方1両のドアカットが行われる。
後述の特急「ふじやま」に代わる線内特急として、大月駅 - 河口湖駅間に運行されている。なお、「フジサン特急」は富士急行の登録商標である(第4627975号)。1号車は展望車両で指定席、2号車は普通車指定席、3号車は普通車自由席となっている。
2022年のダイヤ改正までは2号車が自由席であったが、2023年のダイヤ改正以降は指定席となっている。
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 流行の影響により、2020年4月25日より無期限で運休となり[24]、2021年3月13日改正では一旦時刻表から抹消された[25](臨時列車での運行例はあった)。2022年3月12日改正にて土休日ダイヤのみ運行が再開され[26]、2023年3月18日改正からは平日ダイヤでも再設定された[28]。
2016年4月23日より運行開始[17]。大月駅 - 河口湖駅間に運行される特急列車である。8500系(元・JR東海371系)3両編成で運行され、1号車が特別車両で全席指定、2号車が普通車指定席、3号車が自由席となっている。
車内サービスとして、特別車両ではドリンクサービスがある。土休日は、「スイーツプラン」の対象車両となり、山梨の味覚を取り入れた「富士山ビュー特急特製スイーツ」が利用客に提供される。この場合の特別車両は富士急トラベルのツアー扱いの事前予約制(大人4000円、子供3000円。運賃・特急料金込み)となり、後述の特別車両券では乗車できない。また利用区間も大月駅 - 富士山駅・富士急ハイランド駅・河口湖駅に限定され、都留文科大学前駅・下吉田駅での乗降はできない。このほか、車内限定販売の駅弁、オリジナルビール、富士山ビュー特急オリジナルグッズが存在する。
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 流行の影響により、2020年4月25日から2021年3月12日まで運休[24]。翌3月13日のダイヤ改正に合わせて運行が再開された。運行再開後もドリンクサービスとスイーツプランが中止されていたが[25]、スイーツプランについては2021年12月18日より再開された[31]。
2022年のダイヤ改正までは2号車は自由席であったが、2023年のダイヤ改正により2号車を指定席に変更した。
現行ダイヤでは定期列車は大月駅 - 河口湖駅間の全線通し運行のみである。かつては大月駅 - 都留市駅・谷村町駅・東桂駅・三つ峠駅間の区間列車も設定されていたほか、一部の列車が上大月駅を通過していた。また、禾生駅ではホーム有効長が3両分しかないため、4両編成の列車は前から3両目までの車両のみドアを開閉し、最後部の車両はドアカットを行う。
原則として6000系電車が使用されるが、富士登山電車を中心に1000形・1200形が使用されることもある。
2007年より、富士急ハイランドにあるアトラクション「トーマスランド」にちなんで、5000形電車を使用した「トーマスランド号」が運行されていたが[19]、5000形は2019年2月に運用を終了した。2018年3月からは、「トーマスランド20周年記念号」が6000系6502編成を使用して運行されている。
特別料金は不要で、指定席などの設定もない。
JR中央本線からの直通運転列車として、日中に211系を使用する高尾駅発着の普通列車(中距離電車)が1往復、朝の上りと夜の下りにE233系を使用する東京駅発着の快速列車が2往復(東京駅 - 高尾駅間は、平日朝の上り2本が快速、平日夜の下り2本が通勤快速、土・休日は2往復とも中央特快として運転。高尾駅 - 大月駅間は普通列車扱い)乗り入れてくる。いずれも富士急行線内は各駅に停車する。E233系は分割・併合に対応しているH編成のうち、下り方向に繋がれる4両編成側が入線する。211系は3両編成で運行する(高尾駅 - 大月駅間は2本繋げた6両編成で運転)。
なお、E233系投入前は201系が、211系投入前は115系がそれぞれ使用されていた。201系は2008年3月15日より分割・併合での運用がなくなったため、乗り入れからは撤退していた。
2005年9月5日より、平日朝7:30 - 9:30にJR中央線新宿駅を発着する上り2本の1号車(大月寄り1両目)にて女性専用車両が設定されていた(実施区間は全区間)。2007年3月18日に行われたJR東日本のダイヤ改正でE233系が富士急行線に乗り入れを開始した際、富士急行線に乗り入れる編成位置に1号車がなくなったため、設定は取り止められている。
元々は1200形を用いた座席定員制の特急列車で、「フジサン特急」運行開始前に運転されていた。
「フジサン特急」運行開始後も、「フジサン特急」「富士山ビュー特急」用の車両が定期検査等で運用を離脱している際に、普通列車用の1200形や6000系で代替運行する特急の名称として用いられる。全車自由席で、特急料金は通常の半額となる(定期列車時代の「ふじやま号」の料金と同等)。6000系はオールロングシート仕様であるが、「特急ふじやま号」として運行される際は特急料金が必要となる。
2022年10月以降は名称なしの臨時特急として増発列車の扱いで運行された[33]。
1200形電車を改装した観光用列車で、「青富士」車両と「赤富士」車両からなる2両編成である。2両編成の一般車両に連結して各駅に停車する4両編成の普通列車として運行される。2021年3月13日改正時点で運休中だが[25]、時刻表では土休日のみ普通列車2往復が「富士登山電車の車両を連結して運転する日あり」となっている[35]。「青富士」「赤富士」車両は予約定員制で、乗車には200円の着席券を必要とする。
また、イメージキャラクターとして客室乗務員「谷村みすず」(デザイン:宙花こより)が設定されている。
運行開始当初の2009年8月9日から2010年3月12日までの間も2両編成の一般車両を連結した4両編成の普通列車として運行されていたが、「青富士」車両には普通乗車券のみで乗車することができた。2010年3月13日からは、全車着席券車両の快速列車としての運行となり、2019年3月時点では、平日・土休日共に2往復が設定されていた[36][注釈 5]。停車駅は通常の快速と異なり、大月駅、三つ峠駅、下吉田駅、富士山駅、富士急ハイランド駅、河口湖駅であった。
2020年3月14日のダイヤ改正で快速の種別が廃止されたため、再び一般車両に連結した普通列車としての運行となった[21]。平日・土休日共に2往復が設定されていたが[37]、休日を除く木曜日は全車自由席の一般車両のみで運行した。ダイヤ改正から1か月後の2020年4月25日より、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 流行の影響により無期限で毎日運休となった(一部は一般車両のみの普通列車として運行)[24]。
2022年10月以降、該当車両は「富士山満喫号」など、特定日の臨時列車として運用されているが、この場合は全車自由席のため着席券は不要となっている。ただし特急列車として運用される場合は特急料金が必要となる。
2023年のダイヤ改正では運休が発表されている。
富士急ハイランドやコニファーフォレストでのイベント開催時や河口湖湖上祭、吉田の火祭に合わせて臨時列車が運転される場合がある。
富士急ハイランドやコニファーフォレストでのイベント開催時には、夜間に大月方面に臨時快速列車が最大4本運転される。うち、1本はE233系6両編成を使用し、JR中央本線八王子方面へ直通する。また、定期列車についても多客輸送のため車両をE233系4両編成に差し替えることもある。
河口湖湖上祭や吉田の火祭開催時には、下吉田駅 - 河口湖駅間(一部は富士山駅 - 河口湖駅間)を中心に臨時普通列車が運転される。 2009年より無観客公演の2020年を除き毎年、声優・歌手の茅原実里が河口湖ステラシアターでライブを開催する際、会場最寄り駅の河口湖駅にて茅原の等身大パネルが設置され、横断幕や広告が掲示されるほか、臨時快速「みのり号」が運行される。2010・11・14・21年には記念切符が発売されたほか、茅原本人による車内アナウンスが行われることもある。なお、茅原は2021年内をもって歌手活動を休止するため、同年8月7日及び8日の運行が最後となり、6000系に特製ヘッドマークや吊り広告を掲示したほか、富士急トラベル主催による休止中の8000系を用いた団体臨時列車を運行した[38]。2016年と2018年には、音楽ユニットangelaが河口湖ステラシアターでライブを開催した際にも同様の企画が行われており、会場最寄り駅の河口湖駅にてangelaのメンバーの等身大パネルが設置され、横断幕や広告が掲示されたほか、臨時列車「a列車」が運行され、車内アナウンスをangelaのメンバーが担当した。
観光客向けの臨時列車として新宿駅から快速「ホリデー快速富士山号」「富士山号」、千葉駅から快速「山梨富士号」(新宿駅を発着とする場合もあり)が運転されていた。富士急行線内の基本的な途中停車駅は都留市駅、都留文科大学前駅、三つ峠駅、富士山駅、富士急ハイランド駅である。なお、JR側の発着地により停車駅が異なり、一部は富士急行線内を普通列車と同じ停車駅(上大月駅は通過)で運転する列車もあったが、2015年3月14日ダイヤ改正後はなくなっている。いずれの列車もE257系500番台5両編成で運転されるため、大月駅、富士山駅、富士急ハイランド駅、河口湖駅以外はホームの有効長の関係から、前から3両目までの車両のみドアを開閉し、4両目以降の車両はドアカットを行う。特急「富士回遊」の運行開始により、2019年3月10日にて運行を終了した。
2014年(平成26年)7月26日からは土曜・休日に、成田空港駅から特急「成田エクスプレス」が運転されていた。当初は9月28日までの予定だったが[12]、利用者数が好調だったため11月30日まで期間が延長された[39]。また、2015年(平成27年)3月1日[39]から2016年(平成28年)6月26日にかけての土曜・休日と2015年8月10日から14日、2015年12月30日から2016年1月1日にも運転されることになった[40][41][42][43][44]。以降も2019年3月改正まで恒常的に土休日の延長運転が続けられていた。当初は富士急行線内のみの利用時には特急料金が不要であったが、2017年3月4日のダイヤ改正で線内特急の料金体系を統一したため、「フジサン特急」や「富士山ビュー特急」同様に特急料金が必要となった[45]。ホームの有効長の関係から、都留文科大学前駅では進行方向の後部3両、河口湖駅では進行方向の後部1両の車両でドアカットされる。特急「富士回遊」の運行開始により2019年3月10日にて延長運転を終了した。
2016年3月から2020年3月まで運行。普通乗車券のみで乗車可能であった。但し、前述の通り現在でも臨時列車として設定されることがある。
2016年3月改正において運行開始当初は下り1本のみの運転で、特急列車の運行時間変更に伴い空いた時間帯に設定されたため、「フジサン特急」と同一の停車駅であった。
2017年3月より上り列車も設定した上で、停車駅を「ホリデー快速富士山号」と統一し、大月駅、都留市駅、都留文科大学前駅、三つ峠駅、富士山駅、富士急ハイランド駅、河口湖駅とした(金曜日にこの快速に代わって運転されていた快速「富士山」も同様に停車駅が追加された)[45]。
2018年3月改正にて大月駅8:17発(土休日は8:18発)の快速が設定された。当該列車は通常の快速停車駅に加え、田野倉駅、禾生駅、谷村町駅、東桂駅、下吉田駅にも停車する。これに伴い土休日の大月駅8:13発だったフジサン特急1号は廃止となった。
2019年3月改正以降は平日8時台に下り1本のみ運行されていたが(土休日には同じ時刻に特急「富士回遊」の増発便(91号)が運行される)[36]、これも2020年3月改正での「富士回遊」の増発の影響もあり、定期列車としての設定がなくなった。
大月線・河口湖線を合わせた輸送実績を下表に記す。減少傾向にあった輸送量は2010年代に入り外国人観光客の増加などにより増加傾向へ転じたが、新型コロナウイルス感染症流行の影響により2020年以降大きく減らしている。
表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
大月線・河口湖線を合わせた営業成績を下表に記す。基本的には黒字基調で推移しているが、新型コロナウイルス感染症流行の影響により2020年度と2021年度は赤字運営となっている。 表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
大人普通旅客運賃(小児半額・ICカードの場合は1円未満切り捨て、切符購入の場合は10円未満切り上げ)。2019年10月1日改定[46][47]。運賃水準は首都圏の鉄道会社の中でも高額となっており、7 km以上では同じく運賃水準が高い北総鉄道を超える。
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