回折レンズを利用した望遠ズームレンズ (70-300 mm F4.5-5.6)
回折レンズ (かいせつレンズ、英語 : diffractive lens )は、微視的に光 の回折 現象を利用して、巨視的には光線の屈曲を実現しているレンズ である。
回折 現象を利用することと、光線の屈曲という一般的な(屈折 を利用した)レンズと同様の作用をもたらすものであることからその名がある。また写真レンズ などのレンズシステムにおいて、この作用をもたらす光学的エレメントをdiffractive optical element 、略してDOEなどと呼ぶこともある。樹脂 やガラス などの光学 材料 の表面に、深さが光の波長 程度の微細なレリーフ 形状(起伏形状)を、光軸 を中心とする同心円 状に周期 的に形成した、レリーフ型回折レンズ が一般に多く用いられている。他に、光の透過率 を、光軸を中心として同心円状に、ある規則に従い変化させた、振幅型回折レンズ もある(後述の「ゾーンプレート」)。
一般的な屈折レンズとは、入射光の波長変化に対する焦点距離 の変化等の光学特性が異なる。そういった違いを利用して、屈折レンズ光学系の一部に回折レンズを組み合わせることで、光学系の色収差 等を補正することなどにも利用されている。さらには多焦点レンズ(en:Multifocal diffractive lens )といったような応用もある。
なお、フレネルレンズ とはその形状が類似しているが、一般にフレネルレンズの加工は回折現象を起こすような微細加工ではなく、原理的に全く異なるものである。
超短波長 の光学系や、X線 の屈曲は屈折を用いて行うことが困難であるため、これらの屈曲にも回折を利用したものがある。
利用
コンパクトディスク (CD)やDVD 、Blu-ray Disc 、HD DVD などの光ディスク の光ピックアップ 光学系において、異なる規格 のメディア 間での互換 記録 ・再生 を、一つの対物レンズ で達成するための技術 の1つとして用いられている。複数枚を組み合わせたものがカメラ のレンズにも用いられるようになっており、特に超望遠レンズ では重量 と全長の低減に寄与するが、量産 が難しいため価格も高めとなっている。
ゾーンプレート
ゾーンプレート (英語 : zone plate ) は、レリーフ形状ではなく、微細なモノクロの濃淡ないし不透明・透明とした同心円状のパターンにより、同様の効果を得るものである。原理を遡ると(フレネルレンズの考案でも知られる)オーギュスタン・ジャン・フレネル による研究に由来することから、Fresnel zone platesと呼ばれることもある。ピンホールカメラ と同様な、レンズを使わないカメラへの応用もあるが、ピンホールのようには自作が容易ではないこと、普通に実験できるものでは像がピンホールカメラのそれよりもさらにぼやけることから、愛好家による作例といったものを目にする機会等はあまり多くない傾向にある。
参考文献
関連項目