メンヘラは、何らかの精神疾患を抱えている人や、抱えていると思われる人を指す俗語。元々はネットスラングであったが、現在は一般化している。
メンヘラはもともと特定の精神疾患を指すものではなく意味合いとしては曖昧だが、境界性パーソナリティ障害のイメージが強いとも言われている[1][2]。
また特定の障害が無いのにメンヘラのように振る舞う人をファッションメンヘラ(ファッヘラ)という[3]。
なお精神疾患を抱えるには至らないものの、恋煩いなどを抱え社会性に影響を与える人々についてもメンヘラと呼ばれることがある。全ての女子はメンヘラであるという説も登場している[4][5]。
その他、似た概念に病むとデレるを組み合わせたヤンデレがあるが、ヤンデレは相手が好きすぎるあまり愛情表現が病的に歪んだ形で出ることであり、相手がいなくても成り立つメンヘラとは意味合いが異なる[6][7]。
ヘラる・病む
メンヘラからはその派生語として心が不安定になることを意味する「メンがヘラる」およびそれを省略した「ヘラる」という言葉も生まれた[8][9]。
またその類語として心が落ち込むことを意味する「病む」も使われるようになった[10][11]。
歴史
前史
もともと1990年代はノストラダムスの大予言によって終末感が漂っており、それもあってか終末感と病み感の強いヴィジュアル系バンドが人気となっていった[12]。ヴィジュアル系を好む女性はバンギャルと呼ばれていたが、当時のバンギャルはまだメンヘラとは遠い印象であったとされる[13]。
始まり
1998年、代表的なメンタルヘルス系(メンヘル系)の日記作家『南条あや』が登場したが、1999年3月に彼女が亡くなるとそれを模倣して日記を書く人が急増した[14]。
1999年11月、大規模掲示板群『2ちゃんねる』に『躁鬱板』が追加され、翌2000年に躁鬱板が『メンタルヘルス板』(略称:メンヘル板)へと改名された[要出典]が、この2000年頃より精神疾患を抱えた人のカミングアウト(自己開示)が流行した[15]。
その後、2001年頃よりはメンタルヘルスに問題を抱える人がメンヘラー、メンヘラと呼ばれるようになっていった[16]。
文化的拡大
1999年12月には携帯向けホームページサービス『魔法のiらんど』が登場し[17]、そこで当時のギャルが浜崎あゆみの歌詞を引用しながら病みを表現するようになった[18]。また2000年3月には前述の『魔法のiらんど』にケータイ小説を書くための『BOOK機能』が追加され[19]、それによって『恋空』をはじめとするケータイ小説が登場したが、そのケータイ小説でも、浜崎あゆみの影響が強く、またリストカットのような病み表現も登場していた[18][20]。
また同じ頃にはヴィジュアル系バンドを好むバンギャルからもメンヘラ文化が生まれていったと見られている[13]。少女漫画でも2000年にそれらと雰囲気の近いバンド物の『NANA』(矢沢あい)が登場し2005年に映画化され人気となっていった[21][22]が、評論家の阿部嘉昭はNANAや浜崎あゆみについて「不如意のときに、ちっちゃな幅で示される前向きな精神性が、女の子にはリアルと映るらしい」と評価していた[22]。
その後、2008年には「トラウマテクノポップバンド」の『アーバンギャルド』が登場し、翌2009年にはそのバンドより「メンヘラーに人権を!」の文字の登場する曲PV『女の子戦争』が登場した[23][24]。
一方、1990年代後半には少年漫画誌に精神的問題のあるキャラの登場する久米田康治の漫画(「かってに改蔵」→「さよなら絶望先生」)が登場しており、2008年〜2010年にはその影響を受けた琴葉とこのWeb漫画『メンヘラちゃん』が登場、2012年に商業化された[25][26]。
ポップ化
東日本大震災以降はメンヘラ表現、病み表現がポップ化されていったとされる[23]。例えばTwitter上ではネタ(ネタツイ)を呟くネタ系ツイッタラーが人気となっていた[27]が、メンヘラクラスタからもメンヘラ芸を行う「メンヘラ神」などのツイッタラーが登場して人気となっていった[18][28]。
また2013年には江崎びす子のキャラクター『メンヘラチャン』が登場し[29]、原宿系においても「ゆめかわ」ブームの派生として『病みカワ』ファッションが登場した[30]。
2016年には音楽アーティストから「メンヘラかわいい」を売りとする『ナナヲアカリ』が登場した(『ハッピーになりたい』など)[31]。
純愛化
2015年にはガンガン系漫画誌に愛が重い少女の純愛がテーマの『ハッピーシュガーライフ』が登場して2018年夏にアニメ化され[31]、その主題歌を前述のナナヲアカリが務めた[31]。
2021年には少女漫画誌『りぼん』でメンヘラ少女を主人公とした『骨の髄まで愛してね』(小林ユキ)が登場した[32]。
萌え化
2017年に動物の萌え擬人化アニメ『けものフレンズ』が登場してブームとなったが、Twitter上では2019年頃よりその萌えキャラの一人『アライグマ』(アライさん)になりきって自身の深刻な問題をカミングアウトする「アライさん界隈」(略称:ア界隈)が流行した[33]。
2019年にはアイドルゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』シリーズに弱メンタルで「やむ」が口癖のアイドル『夢見りあむ』が登場し、同ゲームのアイドル投票イベントで3位を獲得[34]、同年の『ネット流行語100』でも15位を獲得した[35][36]。
次いで2022年にはメンヘラ少女をネットアイドルに育てるゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』が登場して人気となった[37]。
2023年にはメンヘラメイド店員×ヤンデレアイドルの漫画『平良深姉妹はどっちもヤんでる』が登場した[38]。
メンヘラ製造機
恋愛相手をメンヘラにする人はメンヘラ製造機とも呼ばれている[39]。
2016年には女性漫画誌『Eleganceイブ』よりメンヘラ製造機の男をヒーローとする恋愛漫画『凪のお暇』が登場して2019年にドラマ化された[40]。
2018年には青年漫画誌『グランドジャンプ』より同様のキャラの登場する漫画『来世ではちゃんとします』が登場し、2020年よりドラマ化された[41]。
2019年12月11日にはNHKのバラエティ番組『ねほりんぱほりん』に「元メンヘラ製造機」の回が登場した[42][43]。
イベント
関連作品
- 漫画
- 前田 シェリー かりんこ『メンヘラ製造機だった私が鼻にフォークを刺された話』 2023年
- 音楽
出典
関連項目
外部リンク