ナンバー・ナイン・ビジュアル・テクノロジー (英語 : Number Nine Visual Technology )はかつて存在したグラフィックチップ およびビデオカード の開発・製造メーカー。1982年 に設立、1999年 に営業活動を停止。同社は最初の128ビットグラフィックプロセッサ(Imagine 128)、また最初の256色および1680万色のビデオカードを開発した[ 1] 。
社名と同じく、同社の多くの製品名がロックバンド「ビートルズ 」の楽曲に由来したものになっている(Revolution 、Imagine 、Pepper 、Ticket to Ride など)。システムブート時に、ナンバーナイン社製カードのビデオBIOSはカードのモデル名に関連したビートルズの楽曲の歌詞の一部を画面に表示する。カードの型名は通常「#9」が先頭に付されていた。
日本ではダイヤセミコンシステムズ(現・アヴネット )が同社の日本総代理店として製品のローカライズや販売活動を行った[ 2] 。
歴史
ナンバーナインは1982年にAndrew NajdaとStan BialekによってNumber Nine Computer Corporationとして設立された。企業名は1990年代初めにNumber Nine Visual Technology Corporationに変更された。ナンバーナインはほとんどの間、レキシントン (マサチューセッツ州) に拠点を置いた。同社はまずApple II アクセラレータボードを開発し、1983年にハイエンドPCグラフィックカードの設計・製造を手がけるようになった。同社は1990年代前期にかけて高級・ハイエンドグラフィックカードメーカーの一つであった。1990年代中期から後期にかけて、競合企業と価格や性能の両方の競争にさらされて市場シェアを失い始め、3Dグラフィック ブームや高品質化の流れに後れを取るようになった。1999年 12月20日、ナンバーナインはS3(現・S3 Graphics )に対して同社の全ての資産および知的財産権を買収するよう意思を表明。2000年 中頃までに、S3はナンバーナインの資産の取得を完了し、ナンバーナインは廃業した。2002年に2人のナンバーナイン出身の技術者、James MacleodとFrancis Brunoはシリコン・スペクトラム (英語版 ) を設立し、FPGA デバイスに実装するためにS3からナンバーナインのグラフィック技術のライセンスを取得した。[ 3] [ 4] [ 5] [ 6]
製品
ナンバーナインの最初のグラフィックカードはグラフィックアクセラレータチップを持たず、VGA が一般化する前のISA バスであった。1980年代後期から1990年代前期に、テキサス・インスツルメンツ のTIGA (英語版 ) コプロセッサ をベースにISAおよびMCA バスのグラフィックカードを製作した。
1990年に入ると、独自開発のグラフィックアクセラレータを搭載したAGP およびPCI グラフィックカード(Imagine系GPU )を製作した。同時に、S3 Graphics 製アクセラレータチップを使ってAGP、PCI、VLBus およびISAグラフィックカードを製作した。それらの最後のAGPカードはNVIDIA GPUを使用していた。
VGAより前の初期のビデオカード
#9 Model
画面解像度
カラーパレット[ 7]
PCバス
備考
Number Nine Graphics System
CGA
CGA
ISA
Revolution 512x8
512×480
1670万色パレットから256色を選択
ISA
NEC μPD7220 を使用
Revolution 512x32
512×480
1670万色パレットから245,760色を選択
ISA
NEC µPD7220を使用
Revolution 1024x8
1024×1024から1024×768
1670万色パレットから256色を選択
ISA
Revolution 2048x4[ 8]
2048×1024から1280×960
4096色パレットから16色を選択
ISA
日立 HD63484
Revolutionシリーズは大きなフルサイズのカードで、発表時点の価格は1995ドルから2995ドルであった。
TIGAカード
ナンバーナインのグラフィックカードは1986年から1992年頃までテキサス・インスツルメンツのTIGA (英語版 ) コプロセッサを搭載して製造されていた。テキサス・インスツルメンツTMS340x0コプロセッサとナンバーナイン設計のカスタムチップの組み合わせは、クリッピングといった原始的なグラフィック機能しか扱うことができなかった。しかしながら、これは当時としては大きな成果であった。GXi Liteを例外として、全てのTIGAグラフィックカードは大きく、フルサイズのカードであった。
#9 モデル
TIGAコプロセッサ
メモリ
PCバスアーキテクチャ
Pepper
TMS34010 (英語版 )
??
ISA
Pepper SGT
TMS34010 + Intel 82786
1M, 4M?
ISA
Pepper Pro 1024[ 9]
TMS34010
1.5M, 2M
MCA , ISA
Pepper Pro 1280
TMS34010
??
MCA?, ISA
Pepper Pro 1600
TMS34010
??
MCA?, ISA
GX
TMS34010?
?? 1M DRAM? + 2M VRAM?
MCA?, ISA
GXi Lite
TMS34020
1M DRAM + 1M VRAM
MCA?, ISA
GXi
TMS34020
1M DRAM + 2M VRAM
MCA?, ISA
GXiTC
TMS34020
1M? DRAM + 4M VRAM
MCA?, ISA
この頃、TIGAを使用したカードは非常に高価で、発表時の価格は995ドルから2495ドルであった。
ナンバーナイン自社製GPU搭載ビデオカード
Imagine 128 (初期のオリジナル版、旧社名)
Imagine 128 Series II
Revolution 3D (Ticket to Ride)
Revolution IV (Ticket to Ride 4)
ImagineシリーズGPU はナンバーナイン独自の設計であった。Imagineシリーズは4つの世代からなった。
Imagine 128 (Imagine)
Imagine 128-II (Imagine2)
T2R ("Ticket to Ride"、しばしば"Imagine-3"と刻印された)
T2R4("Ticket to Ride IV"と刻印された)
Imagine 128 GPUは完全な128ビットグラフィックプロセッサで、内部プロセッサバスおよびメモリバスは全て128ビットであった。しかしながら、3Dグラフィック処理をサポートするハードウェアが皆無あるいはごく少数しかなかった。[ 10]
Imagine 128-IIはグーローシェーディング 、32ビットZバッファ 、二重ディスプレイバッファおよび256ビットビデオレンダリングエンジンを追加した。[ 11]
Ticket to Ride(Imagine-3)はWRAMおよびAGPとPCIバスの両方をサポートし、3D浮動小数点 セットアップエンジン、バイリニアフィルタおよびパースペクティブ コレクト、グーローシェーディング、アルファブレンド 、距離フォグ補完、鏡面ハイライト 、二重・三重ディスプレイバッファ、16/24/32ビットZバッファ、MPEG-1 /MPEG-2 およびハードウェアミップマップ を備えた。[ 12]
Ticket to Ride IVは250MHz RAMDAC を統合し、最大32MBのSDRAM 、全シーンアンチエイリアシング 、パーピクセルフォグ、鏡面反射、アルファエフェクト、10階層ディティールパーピクセルミップマップ、バイリニア・トリリニアフィルタリング、8ビットパーテクセル、8KBオンチップテクスチャ キャッシュ、ハードウェアMPEG-1/MPEG-2、完全なIEEE 754 浮動小数点パイプライン3Dレンダリングセットアップエンジンをサポートした。[ 13] [ 14]
#9 モデル
#9 GPU
メモリ
PCバスアーキテクチャ
Imagine 128
Imagine 128
4M, 8M VRAM
PCI
Imagine 128 Series 2
Imagine 128-II
4M, 8M H-VRAM
PCI
Imagine 128 Series 2e
Imagine 128-II
4M EDO DRAM
PCI
Revolution 3D
T2R
4M or 8M (base), 12M, 16M WRAM
PCI, AGP
Revolution IV
T2R4
16M, 32M SDRAM
PCI, AGP
Revolution IV-FP
T2R4
32M SDRAM
PCI, AGP
これら1990年代のビデオカードはナンバーナインのフラグシップカードであった。(Imagine 128および128 Series 2は非常に高価。)GPU上にはヒートシンクは不要。オリジナルのImagine 128は1994年に発表された。Revoliution IVは1998年に発表された。
標準のアナログVGA端子 に加えて、Revolution IV-FP(Revolution IV-1600SWとも呼ばれる)はシリコングラフィックス 製1600SWデジタルフラットパネルモニター用のOpenLDI デジタルインターフェースコネクターを備えていた。Revolution IV-FPはシリコングラフィックス製1600SWデジタルフラットパネルモニター用のOpenLDIデジタルインターフェースコネクターを備えた数少ないビデオアダプターの一つであった。(その他に3Dlabs Oxygen VX1-1600SW、I-O DATA GA-NF30/PCI、シーメンス Nixdorf S26361-D964カードやいくつかのシーメンス製Nixdorfコンピューターなど)SGIの1600SWビデオアダプターは同社のO2、320、540グラフィックワークステーションの専用品であった。FormacはApple Mac 用にOpenLDI付きのPCIカードを少数製造した。
OpenLDI インターフェースは現在のDVI-D インターフェースと物理的にも電気的にも互換性がない。これは初期のデジタルビデオコネクターであり、いくつかの競合、標準規格との非互換性が存在した。スタンドアロンのOpenLDIディスプレイは消滅したが、いくつかの後発メーカーがOpenLDIをDVI-Dに変換するアダプターを製作したため、より新しいビデオカードでも1600SWモニターに対応できるようになった。
S3 Graphicsプロセッサ搭載ビデオカード
GXE64Pro (S3 Vision964) PCI
Motion771 (S3 Vision968) PCI
ナンバーナインは1990年代にかけてS3 Graphics と親密な事業関係にあった。ImagineシリーズGPUとカードはナンバーナインのフラグシップ製品に位置づけると同時に、同社はS3のGPUを使ってリーズナブルなビデオグラフィックカードを開発した。S3ベースのカードは通常3つの価格帯で製品が発表された。それらは同じモデル名を持っていたが、モデル番号とGPUが異なっていた。GXE などには、Windows ディスプレイ・コントロール・ユーティリティプログラムである #9 HawkEye が同梱され、2,048x1,920までの仮想デスクトップ 領域から、画面解像度 1,280x1,024 まで設定可能となっている[ 15] 。
#9 モデル
S3 GPU
メモリ
PCバスアーキテクチャ
GXE
928
1M, 2M, 4M VRAM
ISA, VLB, PCI
GXE 64
864 (Vision864)
1M, 2M DRAM
ISA?, VLB, PCI
GXE 64 Pro
964 (Vision964)
2M, 4M VRAM
ISA?, VLB, PCI
GXE 64 Trio
764 (Trio64)
1M, 2M DRAM
ISA?, VLB, PCI
Vision 330
764 (Trio64)
1M, 2M DRAM
VLB, PCI
Motion 331
765 (Trio64V+)
1M, 2M DRAM
VLB, PCI
Motion 531
868 (Vision868)
1M, 2M DRAM
VLB, PCI
Motion 771
968 (Vision968)
2M, 4M VRAM
VLB, PCI
Reality 332
325 (ViRGE)
2M EDO DRAM
PCI
Reality 772
988 (ViRGE VX)
2M, 4M VRAM
PCI
Reality 334
357 (ViRGE GX2)
4M SGRAM
PCI, AGP
SR9 (SDRAM)
394 (Savage4 LT、GPU上に小型のヒートシンク)
8M SDRAM
AGP
SR9 (SDRAM)
397 (Savage4 Pro、GPU上に小型のヒートシンク)
16M, 32M SDRAM
AGP
SR9 (SGRAM)
398 (Savage4 Xtreme、GPU上に小型のヒートシンク)
8M?, 16M SGRAM
AGP
関連項目
脚注
^ “Number Nine Visual Technology and S3 Inc. -- Business to Continue as Usual ”. PR Newswire (23 June 1999). Jan 8, 2011 閲覧。
^ Number Nine Visual Technology (ウェイバックマシン )
^ “Number Nine Visual Technology Company History ”. Number Nine Visual Technology (1999年). 1999年1月17日時点のオリジナル よりアーカイブ。2013年10月15日 閲覧。
^ “Number Nine - Computer Dictionary Definition ”. Jan 8, 2011 閲覧。
^ “Number Nine Visual Technology, Inc. Announces Merger Agreement ”. Reuters (1999年12月20日). 2011年1月8日 閲覧。
^ “Silicon Spectrum, Inc. - Overview ”. 2011年1月8日 閲覧。
^ Manufacturers of Higher Resolution Graphics Boards . InfoWorld - Google Books. (20 Oct 1986). https://books.google.no/books?id=mzwEAAAAMBAJ&pg=PA41&lpg=PA41&dq=Revolution+512x32&source=bl&ots=rHeJzunB9k&sig=Noj3R8o0RwmERV6XfSsYVvIiXJM&hl=en&ei=noB-TdGIGYvwsgb0gf32Bg&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=4&ved=0CCcQ6AEwAw#v=onepage&q=Revolution%20512x32&f=false Mar 14, 2011 閲覧。
^ Machover, Carl; Dill, John (1985). “PC color graphics board runs noninterlaced at 1280 X 1024 resolution” . ComputerGraphics (IEEE) 5 (10): 71. doi :10.1109/MCG.1985.276240 . http://www.computer.org/portal/web/csdl/doi/10.1109/MCG.1985.276240 .
^ Number Nine Announces Series of Graphics Cards . InfoWorld - Google Books. (20 Nov 1989). https://books.google.co.jp/books?id=qDAEAAAAMBAJ&pg=PT25&lpg=PT25&dq=number+nine+computer+corporation+pepper&source=bl&ots=D7S0Ie2mG6&sig=AL_dgYhJCV_Ri04wqLVsT-gbr24&hl=en&ei=kgAvTeqxG4G-sQPz9tHxCA&sa=X&oi=book_result&ct=result&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false Jan 13, 2011 閲覧。
^ Notes on Imagine 128 retail box.
^ Notes on Imagine 128 Series 2 retail box.
^ Notes on Revolution 3D retail box
^ Notes on Revolution IV retail box.
^ “Number Nine Launches 'Ticket To Ride(TM) IV,' Its Fourth and Most Powerful 128-bit 3D/2D/Video Graphics Chip ”. PR Newswire (26 May 1998). Jan 13, 2011 閲覧。
^ #9 GXE User Guide . pp. 4-4. LTSGXEXX01
外部リンク