ʻ
オキナ。ʻ Ōleo Hawaiʻ i (ハワイ語で「ハワイ語」)に2つのオキナが使われている。比較のため、全体をシングルクォーテーションマーク で囲んでいる。
ウズベキスタン の切手 。国名表示 Oʻ ZBEKISTON に Oʻ が使われている。
ʻ は、いくつかの言語の表記体系 で使われるラテン文字 または記号である。Unicode コードポイント と名称は U+02BB modifier letter turned comma 。
このほか、セム語派 のいくつかの言語(アラビア語 ・ヘブライ語 など)のラテン文字転記 で、有声咽頭摩擦音 [ʕ] を表す、すなわち文字アイン の転記に使うことがある。しかしこの用途にはこの文字ではなく「U+02BF ʿ modifier letter left half ring 」が好ましい[ 2] [ 3] 。なお、この文字は(ポリネシア諸語のように)声門閉鎖音ではなく、声門閉鎖音のための文字は左右反転 (あるいは180°回転 )した「U+02BE ʾ modifier letter right half ring 」である。
ポリネシア諸語
名称
音韻
ポリネシア諸語の「ʻ」は声門閉鎖音 [ʔ] を表す。
ポリネシア諸語ではこの音は原則として母音 の前にのみ現れる。ただしこれは声門閉鎖音の特徴というより、ポリネシア諸語の子音 全般の特徴である。特別な子音ではなく語頭にも立ちうるので、「ʻ」で始まる語もある。
日本語への音写では、促音 「ッ 」が使われる。ただし、音韻としてはほぼ正しいが、1拍 充てるのは長すぎで、他の子音と同様に拍の頭で短く発音すべきである。
ポリネシア諸語の多くの言語が声門閉鎖音を有する(例外はマオリ語 ・ニウエ語 など)が、その由来は同じではない。声門閉鎖音はポリネシア祖語 (英語版 ) にすでに存在し、トンガ語 やラパヌイ語 にはその音が残っている。しかし、ポリネシア諸語の大半ではその音は消滅した。それらの言語のうち、ハワイ語 ・タヒチ語 ・サモア語 などでは、別のさまざまな子音が変化して声門閉鎖音になった。したがって、「ʻ」で表される各国語の音は、同じ声門閉鎖音であっても同源ではない。
対応[ * 1]
*ʔ [ * 2]
*k
*k *ŋ
*f *s
*l *r (*t )
祖語
トンガ語
ラパヌイ語
サモア語
ハワイ語
タヒチ語
ラロトンガ語
マルケサス語
女
*fafine
fefine
fafine
wahine
vahine
vaʔine
vehine
家
*fale
fale
haɾe
fale
hale
faɾe
ʔaɾe
haʔe
星
*fetuʔu
fetuʔu
hetuʔu
fetuː
hoːkuː
fetuː
ʔeːtuː
fetuː /hetuː
空
*laŋi
laŋi
ɾaŋi
laŋi
lani
ɾaʔi
ɾaŋi
ʔaki
親
*matuʔa
maːtuʔa
matuʔa
metua
makua
metua
matua
motua
2
*rua
ua
ɾua
lua
lua
ɾua
ɾua
ʔua
故郷
*sawaiki
savaiʔi
hawaiʔi
havaiʔi
ʔavaiki
havaiki
タンガロア [ * 3]
*taŋaloa
taŋaloa
taŋaɾoa
taŋaloa
kanaloa
taʔaɾoa
taŋaɾoa
tanaʔoa /takaʔoa
男
*taŋata
taŋata
taŋata
taŋata
kanaka
taʔata
taŋata
ʔenata
北風
tokelau
tokeɾau
toʔelau
koʔolau
toʔeɾau
tokeɾau
tokoʔau
^ その言語の /ʔ/ に対応する祖語の音素 。語彙の対応からの逆算であり、全てではないかもしれない。
^ 「*」は音の一部ではなく、史料で確認できていない推定形であることを示す。
^ ポリネシア神話 の神の名。
字形
垂直アポストロフィ。
「ʻ」の字形は、ローマン体 では、アポストロフィ 「'」やコンマ 「,」のような数字 の「9 」字形ではなく、「6 」字形である。
すなわち、左シングルクォーテーションマーク 「‘」と同形である。ただしレンダラー によっては、クォーテーションマークとは大きさや位置が少し異なる(右上図参照)。
ASCII 文字しか使えないときは、(半角 )アポストロフィ U+0027 ' apostrophe を使う。この場合、アポストロフィの字形に伴い、様々な字形になる。
タヒチ語 のエタ(ʻeta ッエタ )の字形は、標準化が進んでおらず一定しない。タヒチアカデミー (l' Académie tahitienne ) はウェブサイトで、文字コードではアポストロフィ、画像では垂直アポストロフィを用いている[ 4] 。
大文字
オキナに大文字・小文字 の区別はない。
オキナで始まる単語をタイトルケース (頭文字 だけ大文字)で書く場合は、オキナの次の字が大文字になる(例: ʻOkina )。
ソート順
オキナは文字としてはアルファベット順 で最後だが、語をアルファベット順に並べるとき、オキナは無視される(例: aa → ae → aʻe )。
ラーポト式
タヒチ語には複数の正書法 があるが、非標準なものの中で比較的普及しているラーポト式 (Raapoto ) では、エタを使わず、直後の母音字にグレーヴ・アクセント をつける。ただし、タヒチ語には(ポリネシア語共通の特徴として)母音の長短の区別があり長母音 はマクロン (カハコー)で表すが、「声門閉鎖音+長母音」はアクセント記号を重ねずにサーカムフレックス を使う。
タヒチ語の声門閉鎖音の表記
母音
a
e
i
o
u
ā
ē
ī
ō
ū
声門閉鎖音 + 母音
エタ[ * 1]
U+0027
'a
'e
'i
'o
'u
'ā
'ē
'ī
'ō
'ū
U+02BB
ʻa
ʻe
ʻi
ʻo
ʻu
ʻā
ʻē
ʻī
ʻō
ʻū
ラーポト式
à
è
ì
ò
ù
â
ê
î
ô
û
^ ここで表示されるアポストロフィの字形はレンダラー によるが、垂直に書かれるのがタヒチ語では標準的である。
ウズベク語
ウズベク語 の「ʻ」は独立した文字ではなく、直前のラテン文字と合わせて1文字をなす。
音韻
「ʻ」をつけた文字は、元の文字と少し異なる音を表す。これらには、1929年 に最初に導入されたラテン文字表記(ヤンガリフ式 Yañalif )や1940年 に導入されたキリル文字 表記では、明確に異なる文字が割り当てられていた。
Oʻ oʻ は O o より少し狭い母音である。カナで無理に区別するなら O o は「ア っぽいオ 」、Oʻ oʻ は「ウ っぽいオ」であり、たとえば国名の Oʻzbekiston は「ウズベキスタン」である。
Gʻ gʻ は、大まかに言えば閉鎖音 G g /ɡ/ に対する摩擦音 /ɣ/ であるが、厳密に言えば、調音位置 が後にずれた後部軟口蓋音 (post-velar )[ 5] 、あるいは言い換えると、[ɣ] と [ʁ] の中間的な音である。同源の類似音を持つトルコ語族 の言語として、アゼルバイジャン語 の Ğ ğ /ɣ/ やウイグル語 の GH Gh gh /ʁ/ がある。
字形
ウズベキスタンの切手。垂直な「ʻ 」が使われている。
「6」字形のほか、垂直な字形も使われる。
符号位置
記号
Unicode
JIS X 0213
文字参照
名称
'
U+0027
'
'
アポストロフィ
ʻ
U+02BB
ʻ
ʻ
modifier letter turned comma
出典