Free-to-play(フリー・トゥ・プレイ、略:F2PまたはFtP)は、コンテンツの重要な部分へのアクセスを無料でプレイヤーに提供するコンピュータゲームを指す。F2Pゲームは数種類存在するが、最も一般的なのはフリーミアムソフトウェアモデルをベースとしたものであり、したがってF2Pゲームは完全無料ではないことが多い。フリーミアムゲームではユーザーはゲームの全機能にアクセスすることができるが、追加コンテンツにアクセスするためにはマイクロトランザクション(アイテム課金)を支払わなければならない。F2Pは初めてサービスを利用する前に支払いが必要な「Pay to play(英語版)」とは対照的である。日本では「基本プレイ無料」または「基本無料」が一般的である。
2011年にはAppleのApp Storeのトップ100ゲームの中で、F2Pゲームの収益が有料ゲームの収益を上回った[24]。これらのゲームのゲーム内アイテムに金を使う人の数はゲームの質とメカニズムによって0.5%〜6%と幅がある。これは大多数の人々はゲームに金を費やさないということを意味するが、ゲームが無料で提供されているという事実から金を費やす人数はかなりの数に達する可能性があることも意味していた[24]。実際にはモバイル広告代理店企業SWRVはプレイヤーの1.5%のみがゲーム内アイテムを購入しており、そのようなゲームの収益の50%はプレイヤーの10%からきていることが多いと述べた[25]。それにもかかわらず、ワシントン・ポストはスーパーセル(『クラッシュ・オブ・クラン』)とMachine Zone(『Game of War: Fire Age』)の2つのゲームのデベロッパーは2015年のスーパーボウルで大物有名人(それぞれリーアム・ニーソンとケイト・アプトン)を起用したスポットCMを流すほどの余裕があったと指摘した[26][27]。後者のGame of Warは実際にはアプトンが出演する約4000万ドル規模のキャンペーンの一環であった。
2015年の間に、Slice Intelligenceはモバイルゲームの製品を購入した人々を追跡調査し、それらのプレイヤーはF2Pのゲームに平均87ドルを費やしていた[31]。2015年のプレイヤー当たりで最も高い支出があったのは『Game of War: Fire Age』で、プレイヤーは製品の購入に平均550ドルを費やしていた。
F2Pはpay to playモデルよりも新しく、ゲーム業界は自社のゲームの収益を最大化する最適な方法を模索していた。ゲーマーの間では、プレイヤーが入手したい新規コンテンツの大半に金を払うことを要求されるF2Pに比べて、何を得られるかを正確に知っているため定価でゲームを購入することは未だに本質的に満足するものという事実が挙げられている。「Free-to-Play」の用語自体はネガティブな意味を持つものとして表現されており、あるゲームデベロッパーは「私達の希望は…『無料』という言葉がすぐに『浅い』『汚い』という言葉と結びつかなくなることだ」と語りこのことを指摘した。しかし、別の人物は特にゲームパブリッシャーにより提示された基準に従ったゲームであることが求められる家庭用ゲームの開発に比べて、フリーウェアゲームの開発はデベロッパーに創造的自由を最も多く与えていると指摘している[7]。多くの種類の収益が実験されており、例えば、子供やカジュアルゲーマ向けゲーム『Free Realms』で、ソニーはロード画面での広告、ベスト・バイなどの企業がスポンサーとなっている無料の仮想アイテム、追加コンテンツをアンロックするためのサブスクリプションオプション、トレーディングカードゲーム、コミック本、キャラクターカスタマイズオプションを含むマイクロペイメントアイテムで製品から収益を上げた[7]。
Pay-to-Win
ゲームによっては、特別アイテムまたはダウンロードコンテンツ、クールダウンタイマーのスキップに対して金を支払うプレイヤーは、そのようなアイテムを入手できない無料プレイヤーより優位性を得ることができる。一般的には、FIFAのようなゲームで示されているように、他の方法では得られない無料プレイヤーに対してのゲームプレイ上の優位性をプレイヤーが得られる場合、そのようなゲームは批評家などから「Pay to win(ペイ・トゥ・ウィン)」(支払って勝つ、P2W)と呼ばれている。市場調査によると、中国では欧米諸国に比べてP2Wの仕組みはプレイヤーに受け入れられていると考えられており、中国のプレイヤーはゲームカフェ料金などゲームに関連する経常的なコストに慣れ親しんでいるためかと考えられている。
P2Wを避ける一般的な提案は支払いはゲームプレイに影響を与えずにゲーム体験を広げることのみに用いられるべきというものである[34] 。例えば『Dota 2』、『League of Legends』(LoL)及び『メイプルストーリー』などのゲームは化粧(スキン)アイテムの購入だけできるようになっており、「無料プレイヤー」がゲームに金を費やしたプレイヤーとゲームプレイで差がつかないことを意味する。無料版と比較して制限を感じさせずにゲーム性を高める追加コンテンツに金を使うことをプレイヤーに奨励するゲームのバランスを見つけることを提案している[35]。この理論はアイテムに金を払わないプレイヤーが口コミマーケティングによって製品の認知度を高め、それが最終的には間接的にゲームに利益をもたらすというものである。
珍しい例として、『World of Tanks』(WoT)ではサービス開始当初は金を払ったプレイヤーが金を使わないプレイヤーよりも有利になるP2Wを採用していたが、欧州のユーザーのニーズに合わせて有利になる砲弾と消耗品をリアルマネーを使わなくても購入できるように変更され、前述のDota 2やLoLのように課金の有無がゲームプレイに影響しない「Free to Win」を標榜していた[36]。この時点でも課金キャラクターや課金武器に相当する課金車両といった要素や、100%のクルーの訓練レベル、プレミアムアカウント、経験値を無料経験値に変換するなどの勝率とゲームプレイに影響を与える機能は依然として金を支払うユーザーのみが利用可能であったが[37][38]、公式のeスポーツ世界大会を開催するなどある程度公平的なゲームプレイを推進していた[39]。しかし、2017年に公式のeスポーツ大会が崩壊して開発者が入れ替わって[40]以降は公平性の宣伝はされておらず、強力な課金車両を次々実装するP2Wに戻っていった。
更に、F2Pゲーム内の至るところに存在ししばしば侵入的に使用されるマイクロトランザクションは時々子供達の不注意または故意による仮想グッズの大量購入を引き起こすことで、支払金額が高額になることがある。2013年2月には、Eurogamerはイギリスの家族の息子がF2Pゲーム『Zombies vs. Ninjas』をプレイ中に多額のマイクロトランザクションを支払った後、Appleが家族に1700.41ポンドを返金することで合意したと報じた[42]。
概観
現行モデルへのF2Pの破壊的な影響を指摘しているIGN編集者のCharles Onyettは「高価で一回限りの購入は絶滅の危機に直面している」と語った。彼は大半のゲームにおける一度限りの料金を支払う現行の手法はいずれ完全に消え去るだろうと考えている[6]。BioWareのGreg Zeschukは、F2Pがゲームの支配的な価格プランになる蓋然性が高いが、F2Pがサブスクリプション型のゲームに完全に取って代わる蓋然性はとても低いと考えていた[15]。エレクトロニク・アーツなどのデベロッパーはフリーミアムの成功を指摘し、マイクロトランザクションは必然的に全てのゲームの一部分となるだろうと語った[43]。一部のデベロッパーのこのモデルでの成功を認める一方で、任天堂などの企業はF2Pに懐疑的であり、ゲーム開発・販売の従来モデルに固執することを好んでいた[44]。2015年2月、AppleはApple Storeで非フリーミアムの人気ソフトウェアを「Pay Once & Play」として取り上げ始め、それらを「アプリ内購入がないすばらしいゲーム…何時間も途切れることなく楽しめる完全な体験」と表現した[45][46]。